笑福亭仁鶴さんが亡くなられました
テレビをつければ必ず見る人気者
ラジオでも大爆笑、いわゆる「大阪の笑い」の立役者でありました
1970年代が終わろうかという頃
「仁鶴の落語」という本を買いました
高校の修学旅行だったか、スキーだったか
泊まりの行事でクラス皆の前で「お初天神」を演りました
1人ではなく、3人で演じ分けたのですが
その時の写真に写っている、皆の笑顔が印象に残っています
さて、今回のお題は、落語であります
参考図書)「落語に学ぶ、粗忽者の思考」
立川談慶著 WAVE出版2021/6/18
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
◆◆後生鰻◆◆
自分だけが正しい、と信じていることを突き詰めたり
周りを意識せずに信仰してしまうとろくなことはない
原理主義に陥ると
誰もが幸せを失うという皮肉な真理
◇ ◇ ◇
大変な信心家で、蚊も殺さないほど殺生嫌いのご隠居
ある日、日課の観音詣りのあと鰻屋の前を通ると
親方がまな板の上に鰻をのせ、キリで刺そうとしている
義憤を感じたご隠居
鰻1 匹を2 円で買い取り、川にポチャーンと放す
「いい功徳をした」
それからご隠居は毎日のように
1 日2 円で鰻を買い取り続ける
おかげで鰻屋は左うちわ
鰻屋仲間でも噂は広まり
「あのご隠居つきで、お前の店を買おうじゃねえか」
という輩まで出る始末
ところがご隠居がばったりと来なくなる
ご隠居に頼っていた鰻屋は開店休業状態に
そんなある日
ご隠居がまた現れる
しかし
鰻屋は仕入れにも行っていなかったため素材が何もない
そこで
先日生まれたばかりの赤ん坊を裸にして
割き台の上に乗っける
驚いたご隠居は、赤ん坊を100 円で買い取り
前の川にポチャーンー
「あんな恐ろしい家に、ニ度と生まれてくるのではないぞ」
◆◆金玉医者◆◆
文字にすると下劣極まりない噺
落語家が工夫を凝らして、サラッと聞ける話になっている
「あんまり小難しく考えなさんな」という教えかも
◇ ◇ ◇
病で長く床に伏せてる娘がいた
原因不明、今まで多くの医者が匙を投げてきた
あるとき
「甘井ようかん」という医者が娘を診ることに
なんとも胡散臭い男で、その治療法も怪しい
なんと
病人の部屋で
「世の中は広大である」
「愛こそが全てである」
などと説法めいたことを説いているだけ
しかし
娘は次第に元気を取り戻す
訝しく思った旦那が医者に真相を尋ねると
「小難しい話をしながら、着物の裾をはだけさせ
娘が普段見慣れない金玉をチラチラ覗かせていた」と
つまり
その説教の文言の真面目さと
ブラブラ揺れる金玉の間抜けさのギャップがおかしくて
娘は笑い続け、その心がほぐれ、調子を取り戻しているらしい
とはいえ「金玉に治療代を払っていた」としか思えない旦那は激怒
金をケチり、医者のかわりに
自分の金玉を娘に見せたところ彼女は目を回し倒れてしまった
旦那は件の「甘井ようかん」に泣きつく
「旦那は、どういう風に見せたんですか?」
「丸ごとポロンと」
「そりゃあ薬が効きすぎた」
◆◆町内の若い衆◆◆
気持ちが楽になる、いい意味でくだらない噺
◇ ◇ ◇
熊が建増しの祝いに兄員分の家を訪れたところ、本人は留守
そてこで、おかみさんに
「こんな立派な建増しをする兄貴は偉い」
「うちの人の働きだけではございません
言ってみれば、町内の若い衆さんが
寄ってたかってこさえてくれたようなものですから」
奥ゆかしさに感心した熊
おかみさんに報告をすると
「ふん、それくらい私もそう言ってやるから
お前さんも建増ししてみろ」
形勢不利になって熊は湯屋へ
そして
道すがら出会った辰に
「俺か湯に行っているうちに俺んちに行って
俺のことを何かしらほめて
かかあがどんな受け答えをするか、聞いてくれ」
言われた通り、熊の家を訪れる辰
しかし
ほめるものが見当たらない
おかみさんの腹がせり出しているのに気づいた辰
「物価が高いのに赤ん坊をこさりえるとは熊の兄貴はさすがです」
「うちの人の働きだけではございません
町内の若い衆さんが
寄ってたかってこさえてくれたようなものですから」
◆◆疝気(せんき)の虫◆◆
なぜ医学は、病気と対話をしないのか
たとえば癌になったら、制圧しようとする前に
まずは向こうの言い分を聞くべきだろう(立川談志)
◇ ◇ ◇
ある医者が、奇妙な虫と話す夢を見る
自分は疝気の虫といい、人の腹の中で暴れ苦しめるのが仕事だ
そばが大好物で、食べないと力が出ない
苦手はトウガラシ
触れると体が腐ってしまうので
トウガラシを見ると別荘、つまり男の陰嚢に隠れる
そこで、目を覚ます医者
すると折よく
「疝気」の患者から往診の依頼が
ここぞとばかり医者は夢の中の治療法を試す
まず
そばをあつらえさせ、亭主にその匂いをかかせながら
おかみさんに食べてもらう
すると
疝気の虫はそばの匂いで、大喜び
亭主からおかみさんの体へと移り
腹の中で大暴れする
と
今度は、おかみさんが苦しみでのたうちまわる
そこで用意していたトウガラシを
おかみさんになめさせると
虫はびっくり仰天
陰嚢に逃げ込もうと一目散に腹を下るが
あるべきはずのものが見つからない
「別荘はどこだ? 別荘はどこだ?」
◆◆がまの油◆◆
酒が人間をダメにするのではなく
人間はもともとダメだという事実を
酒が教てくれるだけ(立川談志)
酒の前ではみんな平等
◇ ◇ ◇
昔の縁日は、さまざまな物売りでにぎやかだった
なかでも人気は、がまの油売り
干からびたがま蛙を台にのせ
怪しげな口上で見物客を引き付けていた
「さぁさ、お立会い
御用とお急ぎでない方は、ゆっくりと聞いておいで
遠目山越し笠のうち、物の文色(あいろ)と道理がわからぬ、、、
「がまの油が刃物の切れ味を鈍らせたり、出血を止めたりする」
という効能を( インチキながら) 実演する
けっこうな売り上げになる
そこで気をよくした油売り
販売をいったん終え、酒を飲み、再び商いを始める
ところが酔いすぎて
「自分の腕を切り傷のあるように見せるトリック」に失敗
腕を刀で実際に傷つけてしまう
「驚くこたぁない、この通り
がまの油をひと付け付ければ
痛みが去って、血も、血も、止まらねぇ
お立会いの中に、血止めはないか?」
◆◆花色木綿◆◆
噺の冒頭「お前は泥棒に向いていない」と自分を突き放す親方に
「心を入れ替えて悪事に励みます」と懇願する新米泥棒
「泥棒も大変だな」という他人目線を教えてくれます
◇ ◇ ◇
ある粗忽な新米泥棒
親方から、もし見つかったら
「失業中で80歳のおふくろが長患い
13歳を頭に5 人の子がいます 貧の出来心でございます」
と泣き落とすよう助言される
さっそくある留守宅に忍び込む
が
主の八五郎が運悪く帰宅し、新米泥棒は隠れる羽目に
八五郎は、足跡から泥棒に気づき
それを家賃延滞の言い訳にしようと大家を連れてくる
大家は、盗品届のために盗られたものを尋ねる
「まず、布団です」
「どんな」
「大家さんとこと同じです」
「表は唐草、裏は花色木綿だ」
「うちもそれです」
羽ニ重も帯も蚊帳も南部鉄瓶もお札も
盜品はみな「裏が花色木綿」と答え続ける八五郎
隠れていた新米泥棒は、我慢できずに姿を現し
「何でもみ花色木綿とつけりゃ、いいってもんじゃないだろう」
「おっ、泥棒はてめえか」
親分の教えを思い出しながら必死に謝る新米泥棒
「失業しておりまして
13歳のおふくろが長患し
80歳を頭に5人の子どもたちがいます。
これも貧の出来心で、、」
大家は八五郎を叱り
「なぜ盗られたって嘘をつく」
「ほんの出来心でございます」
※上方落語とはオチが違いますね
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
と言うことでした
仁鶴さんの落語はテレビで見てました
まくらが面白く
“おち”はカット「わ~わ~言うとります、おなじみの・・・・」
というのが毎度のパターンでした
その後大学生になってから、一気に桂枝雀にのめり込んだ次第です
厳しい時は続きます
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様、ご自愛下さい
ではまた