橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #429≪樹木の時間、人間の時間≫

2022年11月15日 | EHAGAKI

植物は会話をしている
樹木は根~菌類を通じて他の樹木とネットワークをつくり共生している
という本

前回の娘から借りた本に続いて、今回は嫁さんから借りました
これを読んで、これはなかなか面白い、と
次のEHAGAKIのネタはこれだな、とニンマリしまししたが
それが
そんなお話をNHKスペシャルでやっているではありませんか

大きなテーマです、別に気にするコトは無いのですが
天邪鬼的思考回路で考えると面白くない
しかし
本は面白い
読み進めるとこんなセクションが「謎めいた水輸送」
なんなんだ

ということで、今回のお題は「樹木の時間、人間の時間」であります。

参考図書)
「樹木たちの知られざる生活」
森林管理官が聴いた森の声/ハヤカワ・ノンフィクション文庫2018/11/6
◆ペーター・ヴォールレーベン:著、長谷川圭:訳
https://amzn.to/3ThFj1d

「樹木の中の水の流れをどうとらえるか」
▲黒田慶子
神戸大学201602学術動向 水の流れ.pdf
特集 1 農学の新展開に向けて―物理学・数理学の視点を取り入れた分野横断型農学
https://tinyurl.com/2a5vs9a9

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆


 

◆謎めいた水輸送

木々はどうやって、水を根から葉まで届けている?
痛みなどの感覚やコミュニケーションといったテーマに比べて
水分の輸送は比較的簡単に研究できる現象のはず
であるが

あまりに基本的な問いで
これまで、大学の研究においても単純な説明が繰り返されてきた

学生たちに
樹木における水の輸送について質問すると、いつも同し答えが返ってくる
毛管力(毛管現象)と蒸散が働いているからだ、と

◇検索してみました(橋長)
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「浸透圧」
水はイオン濃度が薄い方から濃い方へ流れる、人間の細胞も同じ
植物の根も、この浸透圧を利用して水分や養分を吸収
しかし
そのままでは上部へ上がらない
いくつかの要因で、水は植物体の上部へ運ぶと考えられる

「根圧」
根の細胞は吸収された水で圧力が高まる=根圧
これにより根は導管内の水を上に押し上げようとする力が生じる

「毛細力」
毛細管現象のことだが、これだけで数十メートルの水上昇は無理

「凝集力」
水分子はお互いに近くに引き寄せようとする=凝集力
根から吸い上げられた水は導管内の水に引っ張られる

「蒸散」
さらに葉で水が蒸散されて失われるので
それを埋めようとして水が下から引き寄せらる

これらが繰り返されることで
水は根から上部まで到達すると考えられている
==========
このあたりが定説となっているようです


▲毛管力ではそこまで高く押し上げることは出来ない
「毛管の中を水が上がる」という単純な仕組みではないだろう
と昔から推測されてきたが
説得力のある解説にはたどりついていない

◆蒸散と凝集力が働き、水分が上昇する
アメリカ北東部では、雪解けのころにサトウカエデに
聴診器をあててメープルシロップの収穫時期を決めている
しかし
この時期にはまだ枝には葉がないので、蒸散は起こらない
したがって、蒸散が水を汲み上げる力になっている
という考えは正しくない

◆浸透
葉や根であれば細胞があるのでこの説が正しいかもしれないが
幹には細胞はなく長い管が並んでいるだけなのだ
※細胞はなく?

◆それを否定する観察結果
最近の研究で、もう一度よく、文字どおり聞き耳を立ててみた
夜間に木の内部に静かな音があることが観察された

夜間は光合成をしないので水が蒸発することはない
つまり、水分のほとんどは幹のなかにとどまっている

では
音はどこからきているのか?

◆泡?
研究者は、水で満たされた導管の内部で
二酸化炭素の小さな泡が発生しているのではないかと推測している

この仮定が正しければ、水路はたくさんの気泡で分断されていることになる
水がつながっていないなら、蒸散や凝集力、あるいは毛管力も作用しない

▲樹木は、樹液流回復のための仕組みを備えている
気泡により水流が遮断されることは健全木の内部でも常に起こっている
その回復システムが樹液流の長期維持には重要である

▲樹高が100mに達する セコイアメスギのてっぺんの葉は
極度の水不足であると考えられてきたが
実際に葉を採取して調べると、細胞は強度の水ストレス状態ではない

水分を貯めることがわかってきた
幹にも水を滞りなく運ぶための「安全策」があるものと推測できる

▲導管は中空の筒状構造であることから
樹幹内の水流は、基本は物理現象ととらえるべ きである
しかし
樹体内では回復現象が現実に起こっていることから
導管に接する放射柔細胞や軸方向柔細胞などの
生細胞の役割にも注目する必要がある

◆正直なところ
木がどうやって水を吸い上げているのかはわかっていない

▲生細胞
生細胞が、補助ポンプのよう な役目を担っていて
水分を補給したり気泡の影響を緩和する仕組みになっているのかも知れない

生細胞の機能を解明するには、樹木生理および解剖学に加えて
MRIなど非破壊的観察手法や
他分野の技術を用いた、多角的な研究が不可欠である

◆すべての基本は根にある

そのトウヒは9,550歳と診断された
一本一本の幹はもっと若かったが
これら数百年前に生えた芽はそれそれが独立した木ではなく
すべてが集まって一本の樹木であると研究者は結論づけた

地上の姿がどうであろうと、やはりすべての基本は根にある
この根が気候変動に耐え、繰り返し芽を生やし
個体としての命を守りつづけてきた
一万年近くの経験を蓄えてきたからこそ、現在まで生き延びられた

◆樹木の脳

長寿トウヒの例からもわかるように
地中にある根は、樹木のなかでもいちばん長生きする部分
根ほど情報を長期間蓄えるのに適した場一所ははかにない

根が、物質を吸収して輸送したり、光合成でできた産物を
パートナーの菌類に渡したり
まわりの木に警報を送ったりしている
しかし
脳ともなると伝達物質だけでは説明がつかない
脳の神経活動には電気信号も関係する

◆電気信号
研究では行動の変化を引き起こす電気信号も計測された

毒のある物質や硬い石や水に濡れた場所に触れたとき
根は状況を判断して、成長組織( 成長帯) に変化の指示を与える

それを受けた成長帯はめざす方向を変えて
危険な場所に進まないように遠まわりする

◆縄張り意識
植物学者の大半は、これを知性や記憶、
あるいは感情の蓄積とみなすことに消極的だ
彼らは同じ状況におかれた動物との比較を嫌い
植物と動物の境界があいまいになることを恐れているようだ

そもそも植物と動物の違いは

私たち人間がたまたま選んだ基準
栄養を得るために「光合成をする」か「ほかの命を食す」か
といった基準だけで区別されている

それ以外の大きな違いといえば
情報を得てからそれを行動に生かすまでの
時間の長さぐらいだ

◆時間の長さ

時間がかかるからといって生き物として価値が低いということにはならない
植物と動物にたくさんの共通点があることが証明されれば
私たち人間の、植物に対する態度が
より思いやりのあるものになるのではないかと、期待する

◆樹木はまったくもって不思議な存在だ
確かだと思われていたことが否定され、また一つ謎が増えてしまった
でも、だからこそ樹木はすばらしい

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇◆


ということでした

最近見る機会が増えたはタイムラプス動画で、“樹木の動き”を見ると
“動物的”に見えます

昔「ゾウの時間、ネズミの時間」という本に書いてあった


“動物のサイズが違うと機敏さが違い、寿命が違い
総じて時間の流れる速さが違う”

“一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量は
サイズによらず同じである”

という理屈は、樹木にも通じるのか
樹木の「脳や血管・心臓」的なモノの発見が楽しみです

COVID-19はまだまだ油断出来ません
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様ご自愛下さい

ではまた