橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI #377 ≪ GHIBLI ≫

2019年08月23日 | EHAGAKI

朝ドラや痛ましい事件の影響か、アニメについての本を読みました

 ◆ ◆ ◆

千万単位の人間がまるで儀式のように、何ゆえなのか?
これほどの大衆を動員する、これはもうAの大計画だった

間違いなく、Aはそれ以外テーマがない
彼の生涯のテー マのひとつが大衆動員

AとB、そしてCの3人は恫喝を得意技としていて
3人による恐怖政治が始まったのがここから
Aはさしずめ秘密警察の元締めのような存在

怖い

優れた頭脳がすべてを支配するという考えなので
何事も彼ら3人で決められていた

Aの名言
「テーマのない人間が、テーマのある人間に使われるのは当たり前だ」

世界を救うという大義名分が必要だった
まぁ、実際にやりたかったのはただの戦争

みんな自分のやりたい戦争を正当化するために世界を救う
というテーマにしがみついた

 ◆ ◆ ◆

なんとも物騒な独裁者たちの話の様ですが
これ、スタジオジブリの話であります

一部省略すると、戦争がしたい政治家の話に見えてしまいます
フェイクニュース?、切り取り報道?
迂闊に鵜呑みしない様に気をつけたいものです

ちなみに上の文章
Aさんは、鈴木敏夫氏
Bさん、Cさんは、高畑勲氏と宮崎駿氏
語っているのは、押井守氏であります

今回のお題は「 GHIBLI 」であります

◆「誰も語らなかったジブリを語ろう」 押井守著
東京ニュース通信社 2017.10.31
◇「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」鈴木敏夫著
文春新書 2019.5.20


 ◇ ◇ ◇

スタジオの名前をめぐってはいろいろな案があったのですが
宮崎駿が決めました
「イタリアの軍用偵察機にジブリっていうのがある
スタジオジブリがいい」 と
みんなにアルファベットで書いて見せたんです

外国語に強い高畑さんが
「宮さん、これ、正確にはギブリって発音するんじゃないか」
と抗議したんですが、 宮崎さんは
「いや、 俺のイタリア人の友達がジブリだと言ってる」と言い張り、
世にも珍しい名前のスタジオが誕生するんです

後にギブリが正しいと判明し、世界の人たちは皆
「スタジオギブリ」と呼ぶのですが、後の祭りでした

ネット検索より)
ジブリの綴りは「GHIBLI」
サハラ砂漠に吹く熱風を意味するイタリア語
第2次世界大戦中に使用されたイタリアの軍用偵察機の名前
飛行機マニアの宮崎監督が命名
「日本のアニメーション界に熱風を起こそう」という思いを込めた

 ◇ ◇ ◇

みんなで集まった時、宮さんは
「こうして十年ぶりに原さんに再会して、一緒に作れるのも何かの縁だ」
と言いました そうしたら高畑さんが
「宮さん、関係ないことを言うべきじゃないよ
縁で作品が作れるわけじゃない、関係ないだろう」と遮った

この人たちは半端な人たちじゃないと思い知らされた瞬間です

 ◇ ◇ ◇

鈴木
ジブリ美術館で上映するアニメでいろいろ実験して

宮崎
美術館で流す作品はお金を儲けることを考えなくていいでしょう
だから気楽なんですよね(笑)

たとえば、効果音をどんどん抜いたらどうなるか
すると、足音もいらない、草をかき分ける音もいらないと
抜けば抜くほど観やすくなるんです
これは発見でした

 ◇ ◇ ◇

鈴木
そういえば映画の中で、どうやって空を飛ぶのかと聞かれたキキが
「血で飛ぶの」と答える場面がありますよね

それに絵描きの女性が
「魔女の血、 絵描きの血、パン職人の血、神様か誰かがくれた力なんだよ」
と返す
それについて高畑さんと宮さんが言い合っていたことがありましたね

高畑
「血」で説明するのはずるいと思ったんです

宮崎
ほかに説明しようがなかったんです
でも、ありとあらゆる職業が血で決まっているはずはないもんね(笑)

高畑
ハッハッハ そうですよ(笑)

宮崎
でも仕事という形で、社会とつながって精神的な安定を得る
ということは確かにあるんですよ
仕事という自分の役割を失うということが
人間にとってどれだけ辛いことなのか

高畑
今の話はよくわかる
キキが飛べなくなった理由に繋がる話ですね

 ◆ ◆ ◆

千万単位の人間が、まるで儀式のようにジブリ作品を劇場に
観に行ったのは何ゆえなのか?

僕はそこにも非常に興味がある
最終的に、これほどの大衆を動員する
これはもう鈴木敏夫の大計画だったわけだけどさ

鈴木さんの計画だったんですか?

間違いなくね
あいつにはそれ以外、 テーマがないから
彼の生涯のテー マのひとつが大衆動員
実質的にスタジオジブリを立ち上げたのも鈴木敏夫だから

鈴木さんと宮崎さん、そして高畑さんの3人は
恫喝を得意技としていて
3人による恐怖政治が始まったのがここから

鈴木さんはさしずめ秘密警察の元締めのような存在になる
それ、すっごく怖くないですか?
そう、怖い
優れた頭脳がすべてを支配するという考えなので
何事も彼ら3人で決められていたのがジブリだから

鈴木敏夫の名言が
「テーマのない人間が、テーマのある人間に使われるのは当たり前だ」
だしね

あの頃のアニメーショ ンには、世界を救うという大義名分が
必要だったんだ

まあ、 実際にやりたかったのはただの戦争なんですけどね(笑)

『ガンダム』も『ヤマト』も世界を救うという大義名分を
振りかざした戦争映画

みんな自分のやりたい戦争を正当化するために世界を救う
というテーマにしがみついたわけ
僕も戦争ものをやりたかったから、そういう心理はよく判ります

押井さんはよく、宮崎さんはロジックがないとおっしゃってます

宮崎さんは没論理的な人ですから
彼は本能的な人間で、鋭い勘が大きな武器

高畑さんは理詰めですべて考える
「こうあるべきだ」「なぜならば」が常にあるのが高畑さん

ふたりが企画会議をしている場面を何度か目撃したことがあるけど
ディスカッションじゃなくケンカだったから

宮さんはディテールから入る人で「こういうシーンを描きたいな」
等がどんどん頭のなかで膨らんで行く
全体を見渡せる人じゃないんですよ (押井 守)

 ◆ ◆ ◆


ということでした

お金をかけて、作り込んでいく魅力
つきつめて省略しシンプルに表現する魅力

ラジオドラマの魅力なども語られています

高畑氏、宮崎氏がそれぞれにお互いの作品で何が好きか?
を答えているところで本は終わります

ぜひ、読んでみて下さい

ではまた


EHAGAKI #376≪酷暑御見舞申上候≫

2019年08月08日 | EHAGAKI

お世話になります

暑中見舞、残暑見舞は時期により作法がある様ですが
実感ベースでは「酷暑御見舞申し上げ候」と思う8月前半であります

くれぐれもご自愛下さい

さて、この通信は1995年9月9日に「葉書」でスタートしました
その後、パソコン通信~メールと併用
徐々にメールの比率が増え、葉書は止めました

続けることがすべてではありませんが
大切なことだと、愚考しております

毎年この時期は、ゆるいネタ(いつもゆるいですが)を
配信しております

今回は、ネタ資源保護の為、
1.最近の世相に思うこと、ここ数日Facebookにアップしたこと
2.過去のメールの転記をお届けいたします

夏休み前ののんびりモードの小ネタであります

◆Facebookネタ(2019.8.6~98)
◆ことわざ(1997.7.29)
◆逸話 (2006.5.22)

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

2019.8.8
国や文化や歴史、違いはたくさんあるけれど、大切なもの、
大切な人を思う気持ちは同じです。

みんなの「大切」を守りたい。
「ありがとう」 や 「ごめんね」 の言葉で認め合い許し合うこと
寄り添い、助け合うこと、相手を知り、違いを理解しようと
努力すること、自分の周りを平和にすることは
私たち子どもにもできることです。

大好きな広島に学ぶ私たちは、互いに思いを伝え合い、
相手の立場に立って考えます。意志をもって学び続けます。

被爆者の思いに、私たちの思いを重て、平和への思いを世界に
つなげます。 (中國新聞より)

これは8/6 広島の平和記念式典における小学生代表の
「平和への誓い」の一節です。
全文:中國新聞

大した了見です。
大人の了見は?

日本人は◯◯だ、なんて話す人が居ますが、皆様それぞれ様々
主語を大きく語るのは慎みたい、と私は思っています。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

2019.8.7
正義と正義のすれ違い?

一方が左に曲がれば、砂町銀座。
もう一方が右に曲がれば、砂町銀座。

行きたいところはたいして違わん。
路地をどう曲がる ?
たいして違わん、北砂や。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

2019.8.6
一見してもわからない。
だけどいろいろあるんだろうなぁ、とはわかる。
だからこそ想像し、聞き、自分で判断する。

「相手が目の前にいる。割り勘で呑んでいる。
 という体で発信する。」
言葉を発するに当たっての私の考えです。

思考は矢のように放たれたら的を射る。
注意しないと自分の放った矢で倒れることになる。(ナバホ族)

「やさしさを失わないでくれ。弱いものをいたわり、
互いに助け合い、どこの国の人たちとも
友だちになろうとする気持ちを失わないでくれ。

たとえ、その気持ちが何百回裏切られようと。
それがわたしの最後の願いだ」ウルトラマンA最後の言葉

まっすぐにしゃべれば光線のように心に届く。(アパッチ族)

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

2019.8.5
30年以上前の仮面ライダー。
ショッカーは、人工太陽灼熱地獄作戦で東京の気温を38度に上げた
、とか。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

◆逸話(2006.5.22)

アフリカのジャングルでサファリが野営していた

遠くの闇の中から太皷の響きが聞こえた
それは夜明けまで続きサファリに参加した人々は
不安な気持になったが、現地ガイドは涼しい顔をしていた

「ドラム、心配ない、ドラム止むと、すごくまずい」

毎晩、毎晩ドラムの音が続いた
毎晩ガイドは繰り返した
「ドラム、心配ない、ドラム止むとすごくまずい」

そしてある夜、ドラムの音が突然止んだ
ガイドの顔が真っ青になった

「ドラム止むとすごくまずい」

「何がまずいんだ?」
とサファリのメンバーが聞いた

「ドラムが終わったら ベース・ソロが始まる!」

バディー・リッチが入院した時、受付の看護婦が彼に
「何かアレルギーみたいなものはありますか?」と尋ねた
バディーは答えた

「カントリー・アンド・ウエスタン!」

ディジーがなぜそんなにも懸命に客の笑いをとろうとするのか
バードにはよく理解できなかった

ステージでのディジーのおふざけは芸術的な尊厳を
妨げるものだと彼は考えていた

ある夜バードは「バートランド」のバーに立って
ディジーが「おちゃらけコンテスト」をやって
客を喜ばせているのを眺めていた

その時バートはしみじみこう言った
「まったく、どうしてあいつはあんなことが出来るんだろう?」

ジョン・コルトレーンはディジーのバンドに入っていたが
後年こんなことを言った

私は自分に無いものを持っている誰かを羨ましいと思うことは
まず無いのだけれど、もう少し軽い性格だったらよかったな
と思うことはある
ディジーはそういう天性の資質を持っていた

私には「さあ、みんな楽しんでくれよ」なんてことは言えない
そういうことは私には向いてないんだ

でもね、結局のところ、人は自分の性格に忠実に
やっていくしかないんだね!

「どうやったらジャズ・ミュージシャンが
百万ドルを手にすることができるんだろうか?」

「二百万ドルを元手に始めればいいんだ!」

レスター・ヤングはシカゴに住むあるピアニストに電話をかけて
自分と一緒にニューヨークの仕事をしないかともちかけた

彼が安い給料を口にすると、ピアニストは言った

「なあプレス、あんたと仕事がしたいのはやまやまだ
でもそのギャラじゃとてもニューヨークでは生活出来ない」

レスターはたしなめるように言った

「ベイビー、お前さんは貯金しておくべきだったんだ
そういうとっておきの仕事をするためにな!」

「ベースとチェロの違いはなんだろう?」

「ベースの方が焼けるのに時間がかかる!」

「どれくらい遅くまでバンドは演奏したの?」

「だいたいハーフビートくらいはドラマーより遅かったかな!」

シェリー・マンはあるインタビューでジャズ・ミュージシャン
の定義を求められこう言った

「我々は同じ演奏を二度出来ない人種だ!」

ニューヨークの路上で老婦人がミュージシャンに尋ねる

すみません、
カーネギーホールにはどうやったら行けるのでしょうか?

ミュージシャンは答える

練習あるのみ!

「ジャズ・アネクドーツ」ブル・クロウ著 村上春樹訳
LS EHAGAKI #203≪NO MUSIC,NO LIFE ≫2009.6.8
LS EHAGAKI #133≪逸話≫2006.5.22

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

◆ことわざ (1997.7.29)
子供たちも夏休みに入り通勤時の坂道は
蝉の声だけでなんとも静かな気がします

「暑い→静か→充実」と感じるのは私だけでしょうか
中国のことわざが頭に浮かびます

一時間、幸せになりたかったら、酒を飲みなさい
三日間、幸せになりたかったら、結婚しなさい
八日間、幸せになりたかったら、豚を殺して食べなさい
永遠に、幸せになりたかったら、「釣り」を覚えなさい

幸せになりたいと「釣り」に凝っていますが
仕事のことも忘れてはいけない
と思っている今日この頃です

LSHAGAKIVol.15(1997.7.29)

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ということでした

私の本格始動は、8/19からとなります
酷暑の折、くれぐれもご自愛ください

ではまた


EHAGAKI #375≪地域をまわって考えた≫

2019年08月01日 | EHAGAKI

「田舎暮らし」

どんなイメージを抱くでしょうか
なんとなく「夢の・・・」というぼんやりしたイメージが

私の場合、1980年代の終わりから興味があり、お遊びも
しておりますが、逆に今は東京に住んでおります

さて、今回のお題は「地域をまわって考えたこと」です

最近よくあるパターン
「ラジオで聞いて、その話題の本をチェック、面白そうなら読む」

今回は、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ」で
小熊英二氏がゲストで、日本の現状を淡々と述べておられるのが
印象に残ったので取り上げます

その放送時のメモ
(ラジコで聞き直して)

そしてその著書
「地域をまわって考えたこと」 の「あとがき」を
拾ってみました

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

今の日本社会について
◆文化放送 大竹まこと ゴールデンラジオ
7/23 ゲスト:小熊英二氏

メモ)
80年代以降、正社員の数は変わっていない
非正規雇用が増えている

どこが減っているのか
自営業、農林自営や自営個人商店が非正規雇用にシフトしている

地方の風景は大きく変わっている
大型ショッピングモール、パチンコ店、物流倉庫
デイケアセンターと、どこに行っても同じ風景

むしろ都会の方が変化が少ない

社会は変わったか → 立場により見え方が違う

正社員の約半分が年功賃金で、上がっていく
この人達の比率は全有業者の27%で30年間変化無し

変化のない人は、そこが不満であるものの
どちらかと言えば現状維持思考

立場によって世の中の見え方が違う

元々、老後は年金だけでは成り立っていなかった
農林自営業で定年が無い
持家があり、長男夫婦が同居、子供も働く
家族として総合的に維持していた
そして、5〜6万の年金はお小遣い的なモノであった

家族がバラバラになり、農林自営業から非正規雇用にシフトし
場合によっては家賃も払わなくてはならない

とても保たない
昔の形では保たない

元々、一人の賃金だけでやっていける所帯は
上の三割ぐらいしか居なかった

ただ農林自営業や商店で地域の繋がりがあり
現金収入が少なくてもやっていけた

一家総出で働く
家長:農林自営業
奥さん:パート
長男:会社員
娘さん:公務員
一人一人は低くても合計でやっていた
元々ギリギリであった

地域の繋がりが薄れて、家長が非正規雇用にシフトし
バラバラになったら成り立たなくなった
個々人の収入では成り立たなくなった

橋長)
参議院選挙、得票の内訳をみると
安定的に強いと思っていたところが減っていたり等
マスコミの発する言葉ではなく
数字に基づいた分析の大切さを実感します

理解していない、と思われるコメンテーターが語るテレビ

実際に数字にあたって調べている「識者」が語るラジオ

情報源はラジオがいい、と愚考します

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

地域を回って考えたこと
小熊英二著 東京書籍

◆「地域をまわって考えたこと」小熊英二著

あとがき

「地方」それは暗黙のうちに
「中央」と対極にあることを前提とした言葉である

こういう意味での「地方」を英語に翻訳するのはむずかしい
ローカル:local は、「地元」というニュアンスが大きい

他国の日本研究者から、日本語の「地方」に適した訳は
周辺:periphery ではないかという意見もあった

そのような「地方」は、中央からみて一律に語られるにすぎない
当然実際は、それぞれの地域は事情がちがう

中央とみなされがちな東京都にも、高齢化に悩む地域は多い
当然だが、往々にして、中央/地方という固定観念
色メガネは根強い

ありがちな「田舎暮らし」の夢
地方は一律に自然にあふれ、 人情に満ちているように描かれる

逆に、一律に貧しかったり、所得が低かったりするように
描かれることもある

そういう「地方」のイメージには懐疑的であるべき

ただし「地方」という言葉が必要とされた経緯がある
戦争のために、産業が壊滅し、人口配置と産業構成が
変わらざるをえなかった

都市部のその経緯が大都市以外の諸地域に
一定の傾向性をもたらした

つまり「地方」という言葉は便利であった

とはいえ、それぞれの地域は
それぞれの地形、気候、土質、水質を持っている
産業構造、 交通事情、 周辺環境、 政治構造なども異なる
「地方」という一律の言葉のもとでは、みえない

人間が経済や政治などの営み、その営みの積み重ねを歴史とよび
できたものを慣習や文化とよぶ

複雑な多元方程式をどう理解すべきか

フランスや台湾の過疎化や一極集中は
日本より深刻ではないかと思われる
そんな中、それぞれの地域は歴史による秩序を持っている

人びとは、そこでさまざまな試みを行っていた
たとえばある旧東ドイツの農村は
周辺の村が過疎に苦しむ状況のなかで
再生可能エネル ギーで村おこしをしていた

あるメキシコの村は、観光客の誘致に努める一方
教会と広場と墓地の配置に地理的秩序を保っていた

タイの地方都市では、バンコクからUターンした青年が
古い民家をカフェに改造していた

こんな試みは、 世界の各地で行われている
人間は国や言語がちがっても、 それほど違わない
もちろん、 気候、地形、積み重ねられてきた歴史から
慣習や文化も違う

しかし、どれも人間が与えられた条件のなかで作ってきたもの
何が条件だったのか、理解できる部分は多い

日本の地域社会を訪れると、自治会や町内会、消防団
商店会などが大きな役割を果たしていた

災害があったとき、 必要な支援物資の数量を申請し
届いた物 資を配布するのは自治会長の仕事

再開発や公共施設整備などの合意をまとめたりするうえでも
地方自治体は、自治会長や商店会長を頼りにしていた

彼らは地域社会のネットワークによって
行政職員の仕事をカバーしてきた

日本は公務員が少ない
人口千人あたりの公務員数は
ざっとフランスの3分の1
アメリカの4割
イギリスの半分ほど

日本は、他の先進国では有給公務員がやっている仕事を
自治会長や民生委員などにまかせてきた

つまり日本は、 地域社会の安定性に依存しながら
安上がりな国家を築いてきた

政府支出の面からみた費用対効果からいえば
効率のよい国家である

しかしその前提は、維持が難しくなった
地域を訪れてみれば、それは一目瞭然

自治会長は高齢化し
状況を把握できる住民も高齢者に限られつつある

近年の災害被災地では、高齢の自治会長が
届いた避難物資を配りきることができず
過労で倒 れたという話も耳にする

本来、自治体職員がそれをカバーすべきだが
町村合併で職員は減少している

地域社会の安定に安住してきた日本社会は
これから質的な転換を迫られる

新しい担い手が育ってこないかぎり
地域社会の持続、日本社会全体の持続も危ぶまれる

橋長)
筆者はこうした転換せざるを得ない時期にあって
6つの地域への移住者への取材で本文をまとめています

・福井県鯖江市
 800を超える町工場が新しい風を育む
・東京都檜原村
 「夢」や「理想」がなければ人は変化に耐えられない
・群馬県南牧村
 夢物語から現実へ
・静岡県熱海市
 原点と経験
・宮城県石巻市
 「災害ユートピア」のあとで、災害が開いた扉
・東京都板橋区高島平団地
 移住者が作り続ける町

大洗 那珂湊おさかな市場

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ということでした

日本の現状・課題
まず知ることが大切
ということは言うまでもありません

この本の中にも出てくるのが
「都市の仕事も、田舎の仕事も同じ」ということ
創意工夫の積み重ね、ということです

世の中の課題にどう関わっていくか
60オーバーの課題だなぁ
と、愚考する今日この頃です

ではまた

砂町銀座