COVID-19は相変わらず
マスク、自粛等々コロナ禍仕様の生活は続いております
そこでフォーカスされているのが「ゆっくり」であります
(私だけですかね、フォーカスしてるのは)
今回のお題は「ゆっくり」
前回の土井善晴さんと中島岳志さんの対談本から
そして
過去のこのEHAGAKIから「ゆっくり」を検索して
20年前の"はがき"も含め、いくつか拾ってみました
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
◆「ゆっくり」もええもの
私の場合は「ゆっくり」いうのはなかった
調理は時間に間に合わなあかん
気ぃの長い料理人いうのはいない
料理をするとき、いつも時計を意識する
ゆっくりという価値観はない
ゆっくりを、悪いことと考えてきた
なんでも時間というものが中心に
たとえば二キロの鱚を水洗いするなら
昨日の自分の経験では一箱四十分かかる
というふうに計算する
昨日の自分と勝負して、いかに速くするかということを目標にする
精度に加えて時間というものを常に意識しながら仕事をしていた
でも
たくさん時間があると
ゆっくり歩くこと、ゆっくり食べること、ゆっくり書くこと
「ゆっくり」という時間に豊かなものがある
ということにあらためて気づく
そんなん初めてかもしれない
僕も、近所を散歩して
草花を見るということはなかった
本当にせっかちにというか、急ぎながら通り過ぎてきた
そこに小さな花が咲いている
ということに目がとまるようになった
そこに小さな宇宙が見える
そういう世界を発見するよい機会になった
味付けよりも火加減
見るからに気持ちよさそうな湯加減
うどんのつゆをつくるときに、あまり火を強くしてはいけない
それは削り節を傷つけて火傷みたいにしてしまう
強火にすると水だって傷つく
だから
薄手の鍋で茹でるよりも、厚手の鍋のほうが傷つかない
近代的な火よりも、自然の火は柔らかい
薪で蒸したもち米はものすごくおいしい
火も薪や炭とガスや電気で違うように
沸かすお湯でも自然の熱源( 薪や炭) で沸かしたら
気持ちがよいというか、豊かな味わいになる
火加減と心もつながっている
「いったん火を止めてもいいんです」
料理は焦るとよろしくない
「僕たちはどっちかというと焦ってばかりいる」
非常に穏やかな優しい世界がある
怒って料理をしているとなにか味が傷ついてくると思う
穏やかにつくったものは、なめらかなものにできあがる
「料理と利他」
土井善晴、中島岳志:著(MSLive!Books)
https://amzn.to/3Ok82B8
◆SLOWHAND
SLOW云々とよく言われています
そう「ゆっくり」です
「ゆっくり」は時間ではなく「志」です
力を抜いて、周りを良く見る
丁寧に、そして動き、事にあたる
頭で考えるのではなく、手で感じる
これからはSLOWHANDでありたい、と
ギターでGのコードを鳴らすには2弦の開放(シ)よりも
3フレット(レ)を押さえた方が、少しだけ陽気に響く気がします
ゆっくりと明るく行きたいものです
LS HAGAKI Vol.41≪SLOWHAND≫2002.1.1より
当時“葉書”で出していたモノのデータ発見、復刻掲載しました
◆永六輔
人間、ヒマになると悪口を言うようになります
悪口を言わない程度の忙しさは大事です
政治家の常識は、国民の非常識
同じことです
医者の常識は、患者の非常識なんです
資本主義といえば、経済の弱肉強食を認めることですよね
それなら政治には、せめて弱者救済をしてもらわなければいけない
民主主義というのはゆっくり機能するものなのです
テキパキやりたいなら独裁主義にしないとねェ
知識がありゃいいってもんじゃない
その知識を生かす智恵がなきゃ
EHAGAKI #334≪献杯≫2016.7.27から
◆生き物が見る私たち(中村桂子・和田誠)
中村
豹やチーターは早く走るとか、勘が鋭いとか、
それがないと生きていけないからそこに集中した
ヒトの場合、むしろ様々な能力を持つところが特徴でしょうね
和田
初期のヒトはそんなに能力の差はなくて、、、
中村
もちろんそれぞれ得意はありますが
むしろヒトは、こういうのもいい、そういうのもいい
全体の能力の中でどれがあれば生きていける、というのがヒトなん
だいたい、進化する可能性を持つのは
特化せずに様々な能力を秘めているものなので
ヒトにはそれがあるかもしれない
和田
それが今
中村
今の時代に合わないとか、さっさと答えを出せない人はだめ
ってされるけど
ゆっくり考えて、ゆっくりやる人も認められる時代があったから
ヒトはヒトとしてある
今の時代の価値観だけで選択すると
イエスかノーになっちゃう
そうではなくて
人間はいろんなことができるから生き残ってきたんだ
と考えればトータルとして差がないんだと
EHAGAKI #299≪私たちという生き物≫2015.2.23から
◆ことばの起源
◇最初は150人という集団のゴシップだったはずだ、と
「あの男には気をつけるのよ」
「ちょっかいだしてくるからアイツ、嫌いよ!」
そういう仲間たちに伝える集団共有の掟、出来事の報告等々
そして
下世話な話題、そういうものがコミュニケーションに使われ
言葉はゆっくり膨らんでいった
◇人間は生後18ヶ月で言葉を話す
2歳で語彙数がゆっくり増えるが、50あまり
3歳で千、そして単語を繋げて文にし、話し始める
6歳で1万3千語
18歳では普段使う言葉6万語以上
以後の人生で毎日平均で10個
90分に1つのスピードで新しい単語を覚えていく
「こんな言葉知らない」ということが何歳になってもある人間は
言葉というものを、死ぬまで覚えていく
EHAGAKI#343≪ことばの起源≫2016.10.24か
◆生物を呼びつけた生き物
陸ができた後に一番最初に地球上に適応した生き物は植物
まず植物たちがゆっくり占領し、その準備ができて
酸素だらけにし酸素で呼び寄せたのが植物だから
「準備ができたよ」って呼んだんでしょうね
海の中の生き物を
そして仕事を与えた
「これからはアンタ、二酸化炭素を吐きな、俺は酸素吐くから」
っていう交換条件で地球っていう環境を整えた
EHAGAKI#340≪植物のお話≫2016.10.3から
◆ゆっくり滅んでいくんだ?
東京と同じくらいの人口が「過疎」と言われる所に住んでる
総人口の約10%
「過疎」と指定された市町村が797ある
全体の市町村の46.4%、約半分が過疎
今までは行政にすがり補助金にすがりついていた過疎
いくらお金を注いでも、さっぱりうまくいかない、これが現状
で
どん底まで落ちる所まで落ちて
志のある者が立ち上がり、この多業務をこなすような
とにかく色んな事を一人で頑張ってやっていく
そうすると不思議とうまくいきだした
多角経営で企業全体のコストが圧縮
規模の小ささの苦しさを越えて、範囲の経済を実らせている
巨大な範囲ではとても通用しないが
この範囲だったら十分生きていける
だから
お爺ちゃんお婆ちゃんの買い物の手伝いをする
お爺ちゃんとお婆ちゃんを何処どこまで運ぶタクシーの代わりをす
荷物を運ぶ業務もする
農家さんがこういう物を出荷なさった時は
この出荷物をココへ運ぶ業務もやる
その出荷物の中から
名物を作る会社を立ち上げ
味噌を作った醤油を作った、その会社もやる
6つ位を兼務すると、食っていけるようになる
そういう所にゆっくり若者が今、流入しつつある
地方の小さな村・町の出来事
EHAGAKI#338≪人口減が地方を強くする≫2016.9
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ということでした
「ゆっくり」という話題になると(以前も紹介しましたが)
有名な小咄を思い出します
メキシコの田舎町
漁師が小さな網で魚をとってきた
なんとも生きがいい魚
それを見たアメリカ人
すばらしい魚だね
どれくらいの時間、漁をしていたの
漁師
そんなに長い時間じゃないよ
アメリカ人
もっと漁をしていたら、もっと獲れた、おしいなぁ
漁師
自分の家族が食べるにはこれで十分だ
アメリカ人
それじゃあ、あまった時間に何をするの?
漁師
日が高くなるまで「ゆっくり」寝て、それから漁に出る
戻ってきたら子どもと遊んで、女房とシエスタして
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて
歌をうたって、ああ、これでもう一日終わりだね
アメリカ人
ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した人間として
きみにアドバイスしよう、いいかい
もっと長い時間、漁をするべきだ、それであまった魚は売る
大きな漁船を買う、漁獲高は上がり、儲けも増える
その儲けで漁船を2隻、3隻と増やしていく
やがて大漁船団ができるまでね
そうしたら自前の水産品加工工場を建てる
その頃にはきみはこのちっぽけな村を出て
メキソコシティに引っ越し、LA、NYへと進出していく
きみはマンハッタンのオフィスビルから企業の指揮をとるんだ
漁師
そうなるまでにどれくらいかかるのかね
アメリカ人
20年、いやおそらく25年でそこまでいくね
漁師
それからどうなる?
アメリカ人
それから?
そのときは本当にすごいことになるよ
今度は株を売却して、きみは億万長者になるのさ
漁師
それで?
アメリカ人
そうしたら引退して、海岸近くの小さな村に住んで
日が高くなるまで「ゆっくり」寝て、 日中は釣りをしたり
子どもと遊んだり、奥さんとシエスタして過ごして
夜になったら友達と一杯やって、ギターを弾いて
歌をうたって過ごすんだ
どうだい、すばらしいだろう
ということで、シンプルに考えるべきなんでしょうか
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様ご自愛下さい
ではまた