橋長戯言

Bluegrass Music lover, sometimes fly-fishing addict.
橋長です。

EHAGAKI#414≪五輪を終えて≫

2021年08月11日 | EHAGAKI

先が見えないCOVID-19、くれぐれもご用心下さい

さて、宮本武蔵の五輪書を読み終えました
とは言え、集中して読んだのは「地の巻」ぐらいではありますが

本の「はじめに」に
こんな風に書いてます

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

俺は勝ち続けてきたよ
30を過ぎて、振り返ると
それは兵法を極めたからでは無い

才能溢れる俺は、それを活かす器があった
モノの道理にも背かなかったからね
また
俺以外の兵法は未熟だよ

道理を極めようと日夜励み
兵法の真髄を会得した
50歳の頃にね

その後は、目指すモノが無く
ただ日々を送っているよ

兵法で得た道理を活かせば、何でも出来る
どんな分野も、俺に師匠は必要ないよ
学ぶことはない

だから
この本を書くのに、古い言葉や古い出来事は使わない
俺自身の考えのみで書くよ

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

と言う具合で
友達にはなりたくない奴ですね
私には

五輪書
地、水、火、風、空と5つのパートで構成されています
と、言うことで今回のお題は「五輪書 地の巻」であります


◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

◆地の巻

兵法の道の概要、私の流派の見立て
剣術だけでは真の道が得られない事を記した

大きい所から小さい所を知り
浅い所から深い所に至る

真っ直ぐな道を引きならす事を模して
地の巻と名付ける


◇「工」に学ぶ

宮本武蔵自身の考えのみをまとめたという本
士農工商の工「大工さん」から多くを学んでいます

兵法の道を学ぼうと思うなら
ここに書いた事を一つずつ心に刻み
良く吟味しなければならない


◆棟梁

天下を治める法をわきまえ、その国の法を正し
その家の法を知る事が棟梁の道

棟梁は堂塔伽藍の長さを覚え、宮殿楼閣の設計を知り
人々を使い、家々を建てる

家を建てる時には「木配り」をする
真っ直ぐで節がなく、見かけの良い材木は表の柱にする
少し節があっても真っ直ぐで強い材木は裏の柱にする

多少弱くても節が無く見た目の良い材木は
敷居、鴨居、戸障子に使う

節があって歪んでいる強い材木は
吟味して適所に使えば長く家を支えてくれる
また
節が多く、歪んで弱いものは足場にして、後で薪にする

大工を使う為には、それぞれの技量を知り
床まわり、戸障子、敷居、鴨居、天井など
それぞれの大工にも適材適所がある

腕の悪い者には根太を張らせ
更に悪い者には楔を削らせるなど
人を見分けて使えば手際は良くなる

決断力が良く、手際良く、物事に気を緩めず
使いどころを知り、気の上中下を知り、勢いをつけ、無理を知る
この事が棟梁の心になければいけない

大工は
自ら道具を研ぎ、色々な責金、責木を作り
大工の箱に入れて持つ

棟梁の言いつけを聞き、柱や梁を手斧で削り
床と棚を鉋で削り、透かし物と彫り物をする

良く寸法を正し
馬道をすみずみまで手際良く作るのが大工の法である

大工の技を実践して良く覚え
目標を立てれば後に棟梁になれる

大工のたしなみは、良く切れる道具を持ち
時間があれば研ぐ事である

この道具を使って御厨子棚、書棚、机、行灯、まな板、鍋の蓋を
上手に作るのは大工ならではである

兵士である者はこの例の通りにするべきだ
良く吟味しなくてはならない

大工のたしなみは歪まない事
継ぎ目を合わせる事
鉋で良く削る事、擦り磨かない事
後でねじれない事が肝要である


◆水の巻

水を手本として心を水のようにさせる
水はどんな形の器にも形を変えて入る
一滴にも大海原にもなる

水は青々として、その清らかさを用いて
私の流派の事をこの巻に書き表す

剣術の道を確かに見分けられれば
一人の敵に自由に勝つ事が出来て
世界の全ての人に勝つ事が出来る

人に勝つという心は千万の敵にも勝てるという事だ

将である者の兵法は
小さい事を大きくする事であり
小さな原型を使って大仏を建立する事と同じである

これらは細かく書き分けが難しい
一を知って万を知る事が兵法の利である
私の流派の事をこの水の巻に書き記す


◆火の巻

この巻では戦いの事を書き記す

火は大きくなったり小さくなったり
際立って異様な変化をする為、合戦の事を書く

合戦の道は一人と一人の戦いも
万と万との戦いも同じである

心を大きくしたり小さくして吟味すべきである

大きな所は見えやすいが、小さな所は見えにくい
その子細は、大人数だと直ちに戦術に転換させる事が出来ない

一人の事は心一つですぐ変わるので小さい所は理解しにくい
良く吟味しないといけない

この火の巻の事は一瞬で決まるので
日々手に馴染ませ、日常のように思い
心が変わらないようにする

これが兵法の肝要である
だから戦、勝負の所を火の巻に書き記す


◆風の巻

この巻で記す事は私の流派の事ではない
世の中の兵法、流派の事を書き表す

風というのは昔風とか今風、その家々の風などがあり
世間の兵法、流派の内容を定かに書き記す

これが風である

他の事を知らないのでは、己をわきまえる事は難しい
何を行うにも外道という心がある

日々、その道に勤めても心が背けば
良い道と思っても、俯瞰すれば実の道ではない
実の道を極めなければ、少しの心の歪みが
後の大きな歪みの原因となる
吟味すべきだ

他の兵法は剣術が全てだと思っているが
それは間違いである

私の兵法の理合と業においても格別の意義がある
世間の兵法を知る為に風の巻として他流の事を書き表す

 


◆空の巻

この巻は空と書き表すので、奥とか入り口とかは無い
道理を得たと思えば道理を離れる

兵法の道に己と自由があって
己と人並み優れた力量を得て
時に応じて拍子を知り、自然と打ち、自然と当たる

これは皆、空の道である
自然と実の道に入る事を空の巻として書き留める

以上の私の流派の兵法の道は
朝夕勤めて行えば、自ずと広い心になる


◇9つの理

1.邪な事を思わない
2.道を鍛錬する
3.諸芸に触れる
4.諸職の道を知る
5.物事の損得をわきまえる
6.諸事の真実を見極める
7.目に見えない所を悟って知る
8.わずかな事にも気をつける
9.役に立たない事をしない

大抵、この理を心にかけて
兵法の道を鍛錬するべきである
見識を広く持たないと兵法の達者にはなれない


◇勝負への効能

この法を学び得たら
一人でも二十、三十人の敵にも負ける事はない

まず、気を兵法から絶やさず
真実を見極めれば、手で打ち勝ち、目に見える事も人に勝つ

また、鍛錬をして身体を自由に動かせられれば身でも人に勝つ
更にこの道に心が慣れれば、心でも人に勝つ

ここまで至る事が出来れば
どうして人に負ける事があろうか


◇組織への効能

また組織として
良い部下を持ち、多くの部下をうまく使い
身も行いも正しくし
国を良く治め、民を良く養い、世を法で保つ事が出来る


◇つまり

いずれの道においても
人に負けない事を知り
身を助け、名を助ける事が、すなわち兵法の道である

正保2年(1645)5月12日
新免武蔵

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


と言うことでした

「戦い」を切り口にするより
「棟梁のモノづくり、人づくり」を
切り口にしている点が腑に落ちました

8月のこの時期
平和のことを考えつつ体を休めたい
と愚考する次第です

厳しい時は続きます
皆様におかれましても
心の栄養補給は怠らない様、ご自愛下さい

ではまた