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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

秘密の本棚

2021-08-29 19:02:26 | 読んだ本

いしかわじゅん 2009年 小学館
サブタイトルは、「漫画と、漫画の周辺」。
こないだ5月になったくらいのころだったか、ふと見つけた古本。
前に読んだ『漫画の時間』同様、「ディープな漫画読み」の書くものだから、なんかおもしろいもの発見するヒントになるんぢゃないかと思って手にとった。
>ぼくは、活字マニアでもあるのだが、漫画好きでもある。自分では気づくのがかなり遅かったのだが、どうやら誰よりも大量の漫画を読んできたらしい。(p.228)
と言っているとおり、いろんなものを知っている、特にいわゆるメジャー誌ぢゃないところへもアンテナを張ってたりするからすごい。
ただ、ときどき、なんか自分だけが絶対に正しいみたいな姿勢が垣間見えるような気がするときがあって、しかも、そういうとき他人とケンカすんのは一向にかまわないみたいな好戦的な感じがするんで、そのへんはシラーっと読むことにしている。
文章を書くことについては、あるときある編集者から依頼があって始めたんだけど、
>「でも、文章なんて書いたことないんですけど……」
>「そんなの、漫画といっしょですよ」
>そうだろうか。漫画と文章は同じなんだろうか。(p.302)
って、そのときのことを回想してるが、もちろんこれは、漫画と文章は違うだろって言いたいんぢゃないかと思う。
>漫画は、作品を完成させるためには何度も同じ工程を繰り返さなくてはいけない。シナリオを書き、下描きをし、ペン入れをして仕上げをする。何度も何度も繰り返し同じものを、頭から最後までなぞらなくてはいけないのだ。(略)気持ちを維持するのも、漫画の才能の一部なのだ。(p.339)
って具合にその苦労を語っているが、ちなみにこれは、山田詠美は漫画家ぢゃなくて小説家になってよかった、ってエピソードの一端でもある。
あと、日本の漫画ってのは、編集者が漫画家を育てて、だれになにを描かせるか決めてく重要な役目を担ってるってことは、繰り返し説かれている。
2001年に「コミックバンチ」って週刊誌が創刊イベントとして新人漫画家を募集し、優勝賞金5000万円という破格の賞をつくったんだけど、その大賞の決め方が読者人気投票に委ねてるってのはおかしい、って話はその顕著な例。
たとえば「ジャンプ」は、その時点でそれほどうまくなくても、将来おもしろいものを描くやつを抜擢したのに、読者だけに選ばせると完成度は高くても将来上積みあるかは不明だとして、
>誰が五千万円の元を取らせてくれるかを判断するのは、本来編集者の仕事であるべきではないのか。『ジャンプ』は、そうやって新しい才能を見つけてきたはずだ。(p.41)
って業界のプロデュースの重要性を指摘してる。
全体としては、マンガ評論って感じでもなくて、「あとがき」には、
>作品のことだけでなく、漫画家のこともたくさん書いた。アシスタントのことも書いた。大学時代の漫画研究会のことも書いた。(p.387)
ってあるように、漫画をテーマにしたエッセイっていうほうに近いかもしれない。
『フロムK』を読んでた私としては、アシスタントの話とかなつかしくておもしろかった。


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