植物の根は、日常の暮らしのなかでは余り話に出てこないようですが、言
葉の世界ではかなり 「根を張って」 います。
『ことわざ大辞典』(小学館)によってみると、「根」のことわざ等は70言葉、
他の草木に関連した言葉では、なんといっても「花」、300余を数えます。
「枝」が54、「葉」は51、「幹」「茎」は各々1で、「種」を含むことわざ等は92
ありました。
「根」で言いあらわされることわざ等には抽象的な用法が多いことです。
「息の根を止める」「根もない話」など、具体的な根の話としては「薔薇の根
からは藁は生えぬ」が「瓜の蔓に茄子は生らぬ」と同じ意味として出ていま
す。
それとは違い「花」は90余りが具体的な草木の花です。「梅が香を桜の花
に匂わせて柳の枝に咲かせたい」などという贅沢な願い?もあります。実際
にそんな木があったら、根は梅か桜か柳か、その合体?か。花を見ていると
そんな瞑想にふける気分になりますが、根に対しては瞑想の余地は無いよ
うです。
直接には目に触れることは少ないが、草木のもっとも大切な部分である「根」
は、人びとの生活の場で、大切な言葉として活きています。この「根」の大切さ
を生活の奥深くから掘り起こして、易しい言葉で面白くいい表わせたらどんなに
素晴らしいことでしょう。
作家・井上ひさしさんの言葉 「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを
面白く。」 はそのことを言っているのでしょうか。