落語の三題噺とは、寄席でその場のお客さんから適当に題目・言葉を出
してもらい、それを折り込んで即興で演じることなのだそうです。 俳句では
季語がありますがそのほかに詠み込まなければならないことがあるわけで
はないでしょう。
ところで、ある俳人が夜長という 「季題」 と 「偽物」 という 「お題」 を受け
て詠むことになったらなかなか難しいことになる、と。
木下夕爾の
にせものときまりし壺の夜長かな
という句はそんな風にして詠まれた句と思っていもいいのかな、と。
壺はもともと偽物だったのだが、本物と思い込み手元に置いて人にも見せ
てきた、あらためて偽物と知った壺を前にし秋の夜長の感はひとしおである、
という句意、苦笑いをしつつ見つめている。
言葉は時にして偽物を本物化する道具に使われる、 「神話」 などと称され
る、 「原発安全神話」 もそのひとつ。 ただ原子炉という 「壺」 は苦笑いでは
すまされない。 この秋は 「本物の思考」 が求められる。