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「21世紀はアジアとの時代」 (Jtiro🔴Jpn) SDGs.Webサイト(Editor: K.Yamada)

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●サッカーの奥義

2022-04-18 | ●松本語録(サッカー)

■■■■■■■■■■■■極める■■■■■■■■■■■

松本光弘
筑波大学名誉教授・元 日本サッカー協会理事・元 筑波大学蹴球部監督

■■[革新の偉業]
残り1分右サイドポケット(攻撃方向相手ゴールポスト右外
近)に入ったDF山根選手の折り返したボールを 左から中
央に走り込んだFW三笘薫選手が、右足インサイド踵付近でゴ
ールキーパーを左に避けるように角度を変えて流し込んだシュ
ートが、ネットを揺らせた。待ちに待った日本代表の得点であ
った。

この時間帯での先取点はほぼこのゲームの勝利を意味する。
7大会連続FIFA・W杯カタール大会日本代表チーム出場決定を
確実にした瞬間であった。

日本ベンチの喜びようが中継の映像で爆発していた。
おめでとう
森保ジャパン
後半39分に交代出場した三笘は、この決勝点とも言える 得点
加えロスタイムに 左サイドでボールを受けると得意のソロ(単身)
ドリブルで 縦方向からいきなりゴール前に角度を変え2人の間を
すり
抜け、強烈なシュートを放った。

相手ゴールキーパーの脇の下をすり抜け日本チームに決定的な
追加点
が入った。やったァァァ・・
信じられないような見事なドリブルシュート

これまでの試合で活躍してきた右サイドFWの伊東選手の4試合
連続
得点は、充分高く評価しながらも この大事な試合での 三笘
薫選手の見事
な活躍を,
歓喜をもって喜ばないではいられなかっ
た。


その理由は
三笘薫選手が 川崎フロンターレ育成部門から筑波
大学に進学して来て間のない一年生の春から注目してきた期待の
選手であった
らである。
当時は背がすらりとしていて,ドリブルに独特のものを持って

た。この最終予選は苦しい苦しい出だしであった。

2021月9月2日, ホームの大阪市立吹田サッカースタジアムでは、
まさかの0-1の対オマーンの敗戦
・第2戦は、ドーハで対中国に1-0で勝利したものの
第3戦のサウジアラビヤ、ジッダでは0-1で敗れた
この時点で1勝2敗でもう敗戦は許されない状態であった。

次のオーストラリア戦から4試合、日本代表は 伊東選手の4
試合連続得点
などで  何とか踏ん張ってここまで来た。
危ない試合もあり、幸運とも思える
得点あるいは失点しそうな
場面もあった。この試合は勝てばW杯本大会出場決定、引き分
けの場合は最終戦対ベトナム戦に出場をかけなければ
ならない。
このような状況の中で、これまで一度も勝ったことがないオー
ストラリアとの
敵地でのアウェー戦で、追加点となった三笘 薫
選手の2点目のドリブルシュ
ートは、W杯本大会出場決定の祝砲
ともいえる見事なものであった。

最終戦の3月29日, 埼玉スタジアムで行われた日本対ベトナム戦
はテレビで
放映されたが試合の内容は今一であった。

何はともあれ今回のFIFAW杯アジア最終予選で7大会連続出
場権を獲得
したことは何にも代え難い貴重な成果である。

現在の世界のサッカーは加速度的に進歩を遂げている。
試合展開はますますハイテンポになっている。それに11人全員
のチーム
ワークは,
ますます統一性を高めてきている。特に
・ハイプレッシャー
・ハイスピード
・レススペース
は、ますます高度化されて
いる。

このW杯本大会に出場することは,その高度化の世界サッカーの
潮流
に乗ることであり、不出場はその流れから取り残される事
を意味する。

国際化が最も顕著なスポーツ中のサッカーで世界の流れから取
り残されると
いう事は、まさしく致命的である。反面、世界に
挑戦するという事の素晴らしさと期待と希望は絶大である。
この
ようなグローバルな視野に立って今回活躍してくれた三笘
薫選手のプレイに
ついて、これまで身近に公式戦やトレーニン
グを観てきた私の立場で、彼のるプレイ
の特徴を私なりに分析
しておくのも意義あるとの判断で以下を記述する。


■■[チームプレィの奥儀
サッカーという競技は、チームスポーツである
当然,味方同士の協働作業(チームワーク)が求められる。その 基
本はチームプレイ
であり,グループのコンビネーションンプレイ
である。
その中にあって即興性、意外性、臨機応変なプレイの代表とし
て ソロ(個人)での
ドリブルが特別なものとして存在する。

このソロのドリブルは, 多くのサッカープレイヤーの憧れと
して少年期から練習に
次ぐ練習を繰り返し ゲームでのドリブル
突破を夢見ている。
このような中で今回
のFIFAW杯カタール大会アジア最終予選本
大会出場決定の2人のキープレイ
ヤーとなった代表選手は,大会
前半では何といっても右サイドでプレイした伊東
純也選手であ
り、彼のスピードと得点力が各試合で重要な勝利の要因となっ
た。

これに対して後半戦の最後の勝因は、三笘の卓越したドリブ
ルが日本
代表サポーターを魅了し、感激の境地に連れ込んだ。
対オ―ストラリア戦でのタイムアップ寸前の得点と アディッシ
ョナルタイムでの
意表を突いた華麗なドリブルからの2得点目
は,私たちに全てを忘れさせてくれ、
歓喜の渦の中に引き込んで
くれた。
この瞬間に誰がサッカー以外のことを考えたか。
日本中の配信観戦していた人々
を一つの渦の中に引き込んでく
れ、“無“の境地に入った瞬間であった。
                
■■[究極のソロドリブラー
私が三笘選手を観たのは, 彼が筑波大学に進学した1年生の春
であった。
最初の印象は, これまでの日本選手にないものを持っ
ている、これが私が感じた
彼のプレイの第一印象であった。

具体的には「ボールを動かしながらプレイの判断ができる逸材」
が印象の中心で
あった。
この「ながら」がなかなかできないのが 物事には多い。
例えば自動車の
運転免許を取得するために教習所に行くと,エン
ジンの始動から始まり、ハンドル
の握り方,走行時のハンドルの
回し方や回数、それに戻し方、方向指示器の取
扱い、ブレーキ
とアクセルの使い分け等々いろいろ意識して覚えなければなら
ない。

またそれを何回となく繰り返し練習してやっと習得できる

この段階ではすべてを意識して行わなければならない。それが
運転免許証を取得
して半年もしない時期に運転しながらラジオ
を操作したり、会話をしたりしながら
自由に自動車を運転して
いる。教習所でのあの時の真剣な自動車運転への集中
力はどこ
に行ったのかと思うくらいである。

この「ながら」英語で言うと「~ing」これは, 人間にとって途
轍もない重要な習性である。
この習性を高度なレベルでサッカ
ーのプレイ中にできることを備えているのが三笘選手
である。

 
サッカーは相手を出し抜いて背後を取り、相手ゴールを陥れ
合うスポーツである。
相手を出し抜く方法に味方との協働作業
パスワーク)とソロのドリブル突破がある。これらは
個別に
独立するものではなく その組み合わせ、連携、結合などによっ
て多彩に変化する。
またソロドリブルの中にも 多彩な要素があ
る。
ボールを保持した攻撃者とその突破を阻止
しようとする守備者
の1対1の駆け引きはサッカーの中でも特に魅力的,芸術的,意外
の極地である。

この三笘選手の「ながら」のプレイの中で特に感じるのは,重心
の低さである。彼の手足は
身長に比べ比較的長い様に見える。
その長い脚部を深く折り,さらに低くし大きな蜘蛛か
タコのよう
に関節がもう一つ多くあるのではないかと思えるような幅広い
柔軟なボール
動かしをする。
これは守備者にとってプレイの予測が困難で対応が非常に難し
い。良く言
うフトコロが深いプレイヤーということができる。


             (三笘選手の映像出典:高校サッカ―ドットコム)

三笘選手の特徴は、静止した時のプレイの特徴である。
ボール保持で静止した時の三笘選手は上体を大きく移動させ,ボ
ールを持たない足を踏
み出す。そして相手の動きを観察する。

相手が三笘選手の上体の動きを先取りして動い
たら,彼は逆方向
にドリブルする。この一瞬の間が三笘選手の生命である。
上体
で相手に見せかけのフェイントを掛けているのである. もちろん
相手守備者が反応して
来なければ, その方向に一気に加速して相
手を置き去りにする。

もう一つの三笘選手のドリブルの特徴は、Jリーグ神戸のイニエ
スタ選手などが多く狙う 2人
の守備者の間を突破するドリブルで
ある。
守備者は2人で協働して相手攻撃者のドリブル突破を阻止
する。
しかし往々に味方守備者
同士の連係ミスで 中間を突破される事
がある。この2人の守備者の間隙を突くのが  彼の
ドリブルの特
徴である。

パサーとしての三笘選手の特徴を分析する。
他の選手と大きく異なるのは「半抜きパス」と私が呼ぶパス
が出せるプレイヤーであることで
ある。
これはドリブルしながら、対
応する相手守備者と並走しながら
味方プレイヤーに決定的
パスが送れることである。

誰しも ドリブルで相手を完全に置き去りにすれば、周りは良く
見えプレイの選択も容易である。
しかしその時は守備側も対応
が充分となる。それがドリブルで半分置き去り(抜く)状態で
パスされると多くの守備者は動作途中で対応が困難になる。
このドリブル途中でも、周囲の
状況を把握しているところに彼
の特徴が見て取れる。

これは、これから起こるであろう局面の変化を予知してプレイ
しているということができる。

■■「揺るぎない技能とセンス
良くサッカー仲間で特定のプレイヤーに対して彼はサッカー
ンスがある、あるいは良い、という表現をすることがある。

それではサッカーセンスとは何か。
三笘選手に備わっている「これから起こるであろう事象をいち
早く読み取る能力
」と表現している。普通のプレイヤーはその
事象が起こってから対応するのが常である。
センスのあるプレイヤーは それ以前にその事象が出現すること
を感じ取るのである。

サッカーのタレントとはサッカーセンスを備えた
・テクニック
タクティック
フットネス と、
ファイティングスピリット
これらを具備したプレイヤーといえる。

もう一つ専門的な内容について記しておきたい。
それは 心理学で取り上げられる心理的不応期と生理的
応期」だが、その変化に即時に対応が困難である。
例えばサッカーの試合で攻撃が失敗し、直ちに守側になると
き心理面でその変換を即時に
行うことはたいへん難しい。

その攻守の変換時のほんのわずかな間を突きあうのもサッカー
の勝敗では重要な部分である。このチーム全員の心の切り替え、
これもサッカーのトレーニ
ングでは大きな課題である。
三笘選手のドリブルの仕掛けを幾度となく観察していると、実
興味深い。
相手守備者との心の駆け引きが見て取れる。
もちろん、彼がボールを保持した時の味方や 相手
守備者の配置、
中でも試合進行が進み、彼自身の身体的疲労度と 相手のそれと
の駆け引き
などは実に面白い。

何の仕掛けもせずに簡単に味方にパスをする時も再三ある。
これにして生理的不応期とは、
先手と 後出しジャンケンの使い
分けである。
人は一度相手動作に反応してしまうと, その動作
遂行の後でない
と新たな動作をすることができない。

その典型がバレーボールのブロックジャンプである
相手の攻撃スパイクをブロックするために 一度ジャンプしてし
まうとそれが相手攻撃側の
フェイント動作、あるいは ダミーで
あった時は、床に着地するまでは何もできない。
筋肉は一度
神経刺激が送られるとそれに従って収縮する。

この神経刺激は,リニアで時間的に先に送られた刺激を後の刺激
が追いこすことはできない。
その結果,生理的不応期ができてし
まう。
先手のプレイは, 相手守備者がまだ十分な心の準備が
できていな
いときに相手を出し抜くので, 心理的不応期を狙ったもの「
心理
的不応期の応用」とも言う
ことができる。

もちろん卓越した経験豊かな守備者は一度送られた神経刺激
を途中で止める「フィードバック
機能」というものも備え
ている。相手攻撃者のプレイの洞察である。

ここまで来ると,先のサッカーセンスの論議のさらなる深い局面
に入る。このような追跡、洞察、想像
などは 語り合える仲間と
出逢えるとスポーツの楽しさは何倍にも膨らむ。
それはプレイする本人, あるいは観る側のスポーツ愛好家ばかり
でなくすべての人々にとって,
スポーツを通した人間の不思議さ、
習性の奥深さを私たちに示しているといえる。

何はともあれ、頑張れ三笘薫選手。
そして森保一監督率いる代表チームのFIFAW杯カタール大会
での大活躍を期待している。

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