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■タイの鉄道

2018-06-15 | ●タイの国際観光

■■■■■■■■■■■■タイの鉄道■■■■■■■■■■■■
■「タイ新幹線事業構想の行方
●中進国とはいえ,世界の最先端を往く高速鉄道、日本の新幹線を
導入する事は、タイ国にとって、
国の威信をかけての大事業である。

●去る5月、タイの新幹線導入構想に対して、衝撃的なニュースがと
びかつた。
「日本が出した高速鉄道の総事業費4200憶バーツ(約1兆3千憶円)
が、あまりにも巨額すぎると、タイ政府とまどう」 という中国環境日報
の記事だった。
中国は今、「一帯一路構想」や 「汎アジア鉄道構想」で、タイをはじめ
世界で、何かと日本と競合する立場にある。

●先日日本は、国土交通省の牧野副大臣が、タイのアーコムの運輸
大臣を訪ねて、総額4200憶バーツンにのぼる新幹線事業化構想の
報告書をてわたした。しかしタイ政府の当事者側からは、財政上の理
由から、慎重な意見が相次いだという。

●折も折 「日本は、タイ新幹線事業から手を引き始めた」 という新しい
情報が、日本側から漏れてきた。
それによると日本とタイ政府は、バンコクとチェンマイを結ぶタイ新幹線
構想について、昨年来、日本の投資計画について検討してきたが、日
本は収益性の見地から、タイ政府が希望する両国による合弁事業計画
を拒否して
、全ての建設費用を、タイ側が出すという案を提示した。

●タイ政府は、総事業費を低減
するために、最高速度を200キロに落と
すよう提案してきたが、日本側は、
世界的な日本の高速鉄道のイメージ
に傷がつくため、決して妥協できないという事だった。 
しかし後にタイ側は、日本の300キロ案に、同意してきたという。

 
(タイの鉄道路線)

●タイの事情に詳しい京都大学東南アジア研究所のパウイン・チャチャ
ワーンポンパン準教授は、「日本が及び腰になる更なる理由は、タイの
内政問題にある」と次のように指摘する。

「タイは、2014年の軍部クーデター後、軍事暫定政権の民政移管が遅れ
ている。来年春というのも定かでない。
しかも、その後の暫定軍事政権の中国寄りの姿勢に対して、一般市民が、
政府を支持しなくなりつつ
ある。 
加えて日本の産業界も、タイ暫定政権の中国寄りの政治姿勢に対して、
相当の懸念を抱き始めたという。」

●そして日本は、タイ以外の周辺アジア市場、特にインドや、ベトナムや
ミヤンマーにも、既に新幹線事業など多くの新規投資を始めており、タイ
暫定政権への投資に対し、妙味が持てなくなってきたのではと観測する。

■「タイの近代化と鉄道
●地政学的に見てタイは、アジア6億人市場ASEANのハブ(中核)を標榜
する国である。
・国の広さは、日本の約1,4倍、
・総人口は、日本の約半分の6600万人、
国土は「北部」「東北部」「中部」「南部」の4地域に分かれる。



しかし首都バンコクに人口が一極集中し、それ以外の地域は、殆ど農村
地帯のため、産業や都市の集積が進んでいない。

■「タイの主要都市のランキング
(順位)(都市名)              (人口)人    (地域名)
1位   バンコク            5,658,953   中部 ● 
2位   ノンタブリー                     260,555   中部
3位   パーク・クレット                 168,763   中部
4位   ハートヤイ              157,682   南部
5位   ウドーンターニー               141,953      東北部
6位    チェンマイ                       141,361   北部 ●
7位    ナコーンラーチャシーマー   131,333     東北部  
8位   スフ―タ―二―          127,495     南部
9位   コーンケーン           112,751      東北部
10位   ナコーンシークマラート       100,353   南部 

●上の「タイの主要都市ランキング」を見ると、首都バンコクを除き、す
べての都市が20万人以下の小都市ばかりで、いかに人口の集積が進
んでいないかがよくわかる。
そして、600万人が集積する世界的な商業都市バンコクの中央集権化
によって、経済や政治面での中央と地方との格差が広がり、それがタイ
の発展を大きく阻害しているように思えてならない。
国が広い割には、国の動脈と言われる鉄道網の整備が遅れている。

●近年のタイは、農業国から産業国への急速な転換によって、近代化
が大きく進みつつある。
確かに産業化の取り組みに際し、海路の港湾と結んだ南北、東西回廊
という高速道路の建設が先行したことは、確かだ
自動車の生産工業国としては、いまやアジアの先進国の地位を占める
が、そのために製品や素材を運ぶための高速道路網は 早くからJICA
や海外の投資資金を活用して、企業の工業団地や港湾を対象に、タイ
南部を中心にインフラ整備が進められてきた。

しかし、北部タイや東北部タイが、中部の首都バンコクに比べて、人口
集積が
遅れ、経済的に大きく低迷していると、多くの識者は指摘する。


メコン全域を網羅する産業用の高速道路網

  

●通常、日本からタイ北部の古都チェンマイに行くには、空路バンコク
経由で行くしか無い。
バンコクとチェンマイ間は、約600キロの距離がある。
・空路(国内航空)で約1時間10分、
・高速バスで約8時間、
・鉄道列車で約13時間、

いま構想中のタイ新幹線なら、約2時間でバンコクとチェンマイを結ぶ。
北部タイの人たちが、タイ新幹線に期待を寄せるのは、まさにその時間と
快適な乗り心地と利便性にある。

●公共交、事業の運営の難しさは、国を問わず人件費、車両費、加えて
車庫や線路の保線費用が、極めて莫大なことである。
そのため交通事業者は、老朽車両を大事に継続して使用せざるを得ない
ともいわれる。

日本では、古く明治後期にビジネスとしての公共交通事業に着目した
阪急電鉄の小林一三が、鉄道と、沿線の都市や百貨店や住宅開発や
宝塚歌劇などをパッケージして、収益を挙げる画期的なビジネスモデル
を発想し 事業の大成功に繋げた。これに多くの日本の交通事業者が
追随して、 日本の公共鉄道事業のビジネスモデルが定着する事になつた。
実は日本の新しい新幹線事業にもるこのビジネスモデルが、存分に
生かされているという。

●因みに日本では、明治維新からすぐの明治5年に、官営鉄道の品川と
横浜が開業し。続いて明治7年には大阪~神戸間が開業した。
そして明治22年(1889)には、東京~神戸間の本州幹線が開通する。
世紀の大偉業となつた。
この日本の幹線鉄道の開通によって、都市の形成と産業の集積など、日本
の近代化が進む事になる。まさに鉄道は、国家の近代化を象徴するシンボ
ル的な存在だった

(参考データ)
■「世界の鉄道網・ランキング」  タイ30位
(順位)(国名)(鉄道路線キロ数)
1位 米国       228,2
2位 ロシア       85,3
3位 中国          67,2
4位 インド          66,0     
5位 カナダ         52,1
6位 ドイツ          33,3
7位 豪州            32,8
8位 フランス        30,0
9位 ブラジル      29,8
10位 メキシコ        26,7
11位 アルゼンチン   25,0
12位 ウクライナ        21,0
13位 南アフリカ    20,5
14位 日本           19,2
15位 ポーランド       18,5
16位 イタリア           16,7
17位 英国           16,1
18位 スペイン        15,7
19位 カザフスタン   14,8
20位 ルーマニア     10,8

30位 タイ            5,3 ●
  

■「世界で鉄道利用が最も多い国調査最新年)日本2位
(順位)(国名) (1年当り1人当たりのキロm)
1位  スイス      2,311 
2位  日本           1,633
3位  ロシア       1,439
4位  豪州           1,359
5位  フランス      1,315
6位  デンマーク     1,054
7位  オランダ      1,051
8位  ドイツ         982
9位  カザフスタン       971
10位 英国               963
(出所;世界統計年鑑2018)Discover

   


■「
世界遺産スコータイから見た実証
●去る5月、私は、予てから待望の世界遺産スコータイを、初めて訪れる機会
に恵まれた。 交通手段は、チェンマイを起点に、鉄道、高速バスなど いくつ
か検討したが、いずれも時間的に難しい事がわかり、知り合いの旅行社に頼
み, ワゴン乗用車(ガイド付き)を調達することにした。

●日曜日の早朝9時、チェンマイ発、
バンコク方向に、高速道路を約250キロ南下、目指すは世界遺跡公園の
スコ
ータイである。途中、タイ北部の代表的な田園地帯が延々と続く。

約4時間後に、やっとの思いで世界遺産の公園都市スコータイに到着した。
東西南北2キロに及ぶ世界遺産公園は、仏教寺院などクメール王朝の遺跡始
歴史的な遺構や、巨大な仏像が立ち並ぶ。壮大なスケールである。

 
スコータイは、バンコク~チェンマイ間のちょうど中間拠点に当たる。
世界遺産公園としては、素晴らしいの一語に尽きるが 、いま懸案のタイ新幹
線構想の視点から見るとどうなのか。検証してみた。

新幹線が開通した暁には、バンコクから1時間、チェンマイから1時間、確かに
交通の利便性は向上する。
ここを訪れる多くの観光客や、流動する人たちの乗客収益によって鉄道イン
フラの建設資金の回収が進むという事であれば、これは確かに素晴らしいタ
イの国家的事業(ナショナルプロジェクト)といえるだろう。

●しかし私の見たところ、スコータイの都市としての人口集積度は低く、大きな
収益が期待できる新幹線の中間拠点としての規模ではない事がわかってきた。
実のところ遺跡公園と博物館のほか、都市機能を持つ町並みは存在しない。

そしてそこに至る沿線は、どこまでも続く静かな田園地帯である。
どう見てもこの鉄道沿線に多くの人が居住し、頻繁に移動する気配は、みてと
れない。

●新しい鉄道インフラの投資対価として、充分な収益が見込めないとすれば、
新たな鉄道建設によって、沿線に新しい都市機能や産業インフラを構築して
いくという政府の先行投資計画がない限り、今後の進展は、極めて難しいと思
えてならない。

●これが、中間拠点である世界遺産スコータイ公園都市を訪れて得た タイ新
幹線構想に関する私の偽らざる実証である。
それだけに冒頭の「日本政府筋が、タイ新幹線から手を引きかけた」という情
報についていえば、まさに、むべなるかなと思えてならない。

●農村地域の北部(チェンマイ) 東北部には、いまも従来の旧い鉄道がある
先述のように、北部や東北部は、収益性の低い農村地帯だけに、いまも人
口の
集積は進んでいない。
そこへ便利になるとはいえ、タイ新幹線のような
交通インフラの膨大な先行投
資は、
なじまないという事になると、ますます農村地域は、取り残される事にな
る。 もうこれは、タイの経済問題ではなく、タイの政治問題である。
タイ軍事暫定政権の難しいかじ取りと、取り巻く日本はじめ 先進関係国の適
切な協力が求められることになる。

■「タイの鉄道、最新情報
●最近情報によるとタイ政府は、東部経済回廊(EEC)の特区開発を進める。
ここには、次世代の産業開発や生産の拠点を誘致し成長加速の起爆剤にし
たいという。
この辺りは、日本のトヨタはじめ主要な自動車メーカーはじめ。関連企業が進
出まさに、日本産業地帯の趣がある。

ECCの海の玄関口、レムチャパン港は、コンテナ年間700万個と自動車120
万台を輸出する。
首都バンコクからウタパオ国際空港までの高速鉄道の新設
と、南東に120キロの高速道路の建設
が閣議で決まった。
しかし高速鉄道につては、当面日本の新幹線だが、中国が割って入る可能性
が高いという。

●タイの経済事情に詳しい学習院大学末広昭教授によると、この東部経済回
については、中国の「一帯一路イニシアティブ」が、早くからこれに関わって
おり、タイ進出企業の大半を占める日本との間に今後様々な相克が予測され
るという。

軍事暫定政権になってからは、米国の覇権後退に伴い中国が進出を試みて
おり、今後アジアの覇権争いは、続くとみていい。
しかし、
・マレーシアのマハティ―ルが首相に
復帰、中国寄り修正を宣言。
・米朝首脳会談の実現、
・日本、インド、豪州3国の軍事、海洋、経済の連携強化

など、アジアの情勢も大きく変わりつつある。
その中で、タイの民主化が、意図して大幅に遅れている。
伝統文化に彩られた友国タイの今後についても、1日も早い
民政化への復帰
が実現できるよう、心から期待したい。

 


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