先月、名古屋骨董祭で掛け軸を一本買いました。
水辺に蘆と蓮。そこに集う白鷺、かわせみなどが明るく軽快な筆さばきで描かれています。
いい物を見つけたなあと喜んでいます。
作者は、暘谷山人とあります。
左上には、この絵を描いたいきさつが書いてあるようです。
「大正丙辰五年(1916)秋 機動演習の旅に従いて、遠州浜名郡松倉郷の下位氏に宿す。主人、余の画を求む。よりて、帰り来たりて武事の余暇にこの図を写して贈る。丙辰初冬暘谷山人。」と読むのでしょうか。
調べてみました。暘谷山人とは、川村暘谷(ようこく)という文人画家のようです。 明治15年東京に生まれ、昭和30年に没しています。それ以上のことはわかりませんでした。
大正5年は、今からちょうど100年前。第一次世界大戦のただ中でした。作者は30代の半ば。軍事演習に参加しています。どんな立場で参加していたのでしょうか。下位氏という個人宅に宿泊しているので、一兵卒というわけではなかったようです。画を描いてほしいと頼まれているからには、絵かきとして名が知られていたのでしょうか。
遠州浜名郡松倉郷は、現在の浜松市南区倉松町。
浜名湖の東、遠州灘に面した地域で国道1号が通っています。
インターネットの電話帳を見てみると、松倉町には、現在も下位さんがたくさん住んでいらっしゃるようです。
一本の掛け軸ですが、いろんなことに思いを巡らせることができて、おもしろいです。