前回の記事「アンコールワットへのみち展」で、仏教とヒンドゥー教のことを少し書きました。
今日は、八部衆について、もう少し詳しく(できれば、わかりやすく)書こうと思います。
教王護国寺(三十三間堂)の迦楼羅(かるら)像です。ヒンドゥー教の神、ガルーダと同起源と考えられます。
仏教には、ヒンドゥー教(バラモン教)と同起源の神々がたくさん出てきます。どうしてでしょうか。
お釈迦さまの時代、インド地方(当時インドという概念はなかったですが、便宜的に)には、すでに独自の宗教観があり、さまざまな神様の存在が信じられていました。(そのころの宗教をバラモン教と呼んでいます。現在のヒンドゥー教につながっています。)
お釈迦さまが悟りを開かれ、各地でさまざまな説法をなさっているとき、お釈迦さまの弟子や信徒をはじめ、じつに多くの者たちが聴聞していました。その中には人ではないもの、つまり動物や鬼神の姿で、時には人に災いを招くような不思議な力を持ったインド古来の神々も交じっていました。
お釈迦さまが法華経をお説きになっているとき、つねに聴聞していた神々は、
天・・・梵天(ブラフマー)、帝釈天(インドラ)、四天王、自在天など
竜・・・ヒンドゥー教では、ナーガという蛇神。法華経には、八人の竜王が登場します。
夜叉(やしゃ)・・・バラモン教ではヤクシャ。人を食らうこともある鬼神です。
乾闥婆(けんだつば)・・・ガンダルバ。半神半獣で美しい音楽を奏でます。
阿修羅(あしゅら)・・・アスラ。生命生気の善神。
迦楼羅(かるら)・・・ガルーダ。人の体に嘴、翼、爪を持つ。
緊那羅(きんなら)・・・キンナラ。音楽神。
摩睺羅伽(まごらが)・・・マホーラガ。大蛇の神。
の8種類です。その者たちを天竜八部衆と呼んでいます。
八部衆は、8人(8頭)ではなく、たとえば、迦楼羅(かるら)には、大威徳迦楼羅王、大身迦楼羅王、大満迦楼羅王、如意迦楼羅王の4人の王があり、それぞれがまた数千人の家来を連れて来ていたので、聴聞していた者の数は、膨大なものでした。
法華経の中には、この八部衆がそろってお釈迦さまの説法を聴聞している場面が10回ほど出てきます。
インド古来の神々は、お釈迦さまの説法を聞き、心からお釈迦樣に従い、これからはお釈迦さまの身をお守りしましょうと誓います。つまり、仏教の守り神となったのです。
仏教以前のインド古来の宗教を、バラモン(祭司階級)中心の宗教という意味で、バラモン教と呼んでいますが、広く大衆を救う教えである仏教が生まれ、盛んになってくると、バラモン教は、土着の信仰も取り入れた民衆宗教へと形を変えていきます。多くの神々が存在し、さまざまな信仰形態を持つヒンドゥー教が生まれていくのです。