パリで大規模なテロがありました。恐ろしい出来事です。
オランド仏大統領はISによる犯行と断定しました。
オバマ米大統領は「全人類と普遍的価値への攻撃だ」と言い、
安倍首相は「いかなる理由があろうともテロは許されない。断固、非難する。フランスをはじめ国際社会と連携していく。」と言いました。
オバマ氏も安倍氏も「全人類が普遍的な価値を共有する国際社会(善)」と「人類の平和を脅かす過激派テロ組織(悪)」という図式で捉えようとしています。そう捉えることで、過去に目を向けることなく、現在のテロという行為だけを非難することができるからです。
ものごとは、多面的に捉えなければなりません。
世界には、さまざまな人々が住み、さまざまな宗教や価値観、生き方、暮らし方があります。20世紀以降アメリカやヨーロッパで発展した政治や経済のしくみ、あるいは生活様式が、日本も含め世界の多くの国々に広がってはいますが、人類全体の普遍的価値とは言えないはずです。アメリカやヨーロッパとは違う、世界中のいろいろな宗教や価値観、生き方、暮らし方が尊重されていいはずです。
また、現在があるのは、過去のさまざまな出来事があったからです。
アメリカやヨーロッパの人々にとっては、価値や意義のあること(善)であっても、世界中のいろいろな人々にとっては許しがたい、絶対的な悪でしかなかった出来事が数多くありました。アメリカ大陸の先住民を殺して土地を奪い取ったこと、アフリカ大陸の人々1000万人以上をアメリカに運び奴隷としたこと、アフリカ、アジアの国々を植民地支配したこと、まだまだ多くの例をあげることもできますが、これらの出来事は、その時代においては、ヨーロッパ人にとっては価値や意義のあることとしてとらえられていました。日本に原爆を投下し無差別大量殺戮を行ったことが、歴史的意義のあることだという考えは今でもアメリカ人の中にあります。
イスラム圏の人々にとって、古くは十字軍、近くは、第一次大戦での英の三枚舌外交、イスラエル建国、もう少し近くではイラク戦争。許しがたい出来事であったはずです。
武力攻撃に対して武力で対抗する。いつまでたっても終わりはありません。
安倍首相には「いかなる理由があろうともテロは許されない。断固、非難する。それと同様に、いかなる理由があろうとも空爆は許されない。フランスをはじめ国際社会に平和的解決を訴えていく。」と言って欲しいものです。
仏教では、仏は一人ではなく、誰もが仏になれます。また、世界は一つではなく、いろいろな世界があります。この曼荼羅のように、いろいろな仏たちがいろいろな世界で調和し、共存しています。
世界がこのような世界であったらと思います。
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