岐阜県各務原市の旧川島町に「かさだ広場」というところがあります。
木曽川の旧河道にあり、それほど整備されていなくて、自然が多く残って、特に初夏は、高原の草原を歩いているように気持ちのいいところなので、毎年訪れます。
大正末から昭和にかけて、この辺りを幾筋にも分かれていた木曽川の流れを整理して、現在のような三派川にしたそうです。かさだ広場は、しめ切った旧河道を利用しています。
かつて川底だったところ、中洲だったところ、河岸だったところがあって、微妙な高低差とともに、砂礫が多く草原になっているところ、湿地になって萱が茂っているところ、沼になっているところ、小高くて雑木林や竹林になっているところなど、豊かな植生を見ることができます。
入口近くには、広い芝生広場があって、家族連れに人気です。
私が行くのは、その奥。あまり人手の入っていない自然があって、子供や犬を連れてよく行きました。
今の時期には、オオキンケイギグ(大金鶏菊)が一面に咲いて、それはきれいな風景です。
オオキンケイギグです。一面に咲き誇ります。
上の写真は、10年ほど前ですが、2~3年前もこのような景色でした。
今年の風景です。
目を疑いました。
重機が入って、地面を掘り返し、砂利が敷き詰められて、一本の雑草も生えていません。
今までは、オオキンケイギグだけでなく、いろいろな雑草や灌木が茂って、乾燥したところ、湿地になったところ、水たまり、日の当たるところ、影になるところ、それぞれに応じて、さまざまな植物が生え、さまざまな小さな生き物にあふれていました。特にこの季節は、草むらで子育てするひばりが何羽も空高く舞い上がり、賑やかにさえずっていました。
「生態系に悪い植物を防除しています。」
こんなふうに重機で掘り返して地ならしして砂利を敷き詰めて、生態系の「せ」の字もありませんでした。生命の欠片も見られませんでした。
乾燥しやすい旧河原です。立派な堤防ができていますから、水に浸かることも殆どありません。土砂も流れてきません。生態系といえるものが蘇るまで何年かかるのでしょう。
最初にも書いたように、かつて川が流れていた時の高低や、土質が砂なのか、石が多いのか、土なのかによって植生が違っていたものを重機でならしてしまっては、生態系の復元はありません。
堤防はしめきって、表面に水は流れなくなっても、地下の水脈は流れています。だから、ある場所には、水が湧いて、沼が出来ていたのです。
アスファルトの新しいサイクリングロードが造られていましたが、鳥の声や草原を渡る風を感じるからこそ心地良いのであって、こんな石ころだらけのところは、だれも通りません。人も草も鳥も虫も寄り付かなくなってしまいました。
生態系の保護が目的だったのか、オオキンケイギグの根絶やしが目的だったのか。愚かなことをしてしまったものです。
かさだ広場の奥の方には、雑木林や竹林が広がっています。幸いにもそこは、以前のままでした。
鳥の声も、ホオジロ(頬白)、雉、うぐいす、ホトトギスを聞きました。ひばりは聞けませんでした。あんなにいっぱいいたのに。
竹林の中の散策路。
途中、こんな流れもあります。
ハルジオンの群落。これも帰化植物なんだけど。
やまぼうし
栗の木。白く房になって垂れ下がる花をいっぱいつけていました。
センダン(栴檀)の木。薄紫の花をいっぱいつけていました。
よい香りはありません。
ヘビイチゴ。
桑の実。
よそではあまり見かけない植物がいっぱいです。
これ以上は手を付けずに、そのままにしてほしいものです。