時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

虹のおもひで

2011-02-22 | essay




昔、東京湾の見えるマンションで暮していたころ、
13階のベランダから、スゴイものを見てしまった。

それは、雨上がりの光るテニスコートから立ち昇る大きな虹。
虹のたもとを初めて見た奇跡の一瞬だった。

その頃、よく一緒に飲みにいっていた東北生まれのともだちにその話をしたら、
田んぼで遊んでいたころ、大きな虹を見て、みんなで虹を追いかけたことがあるんだ。と話してくれた。
追いついたと思ったら、後ろにあって、また走ってくぐったと思ったらもう前にあって
すごくフシギで貴重な体験だった、と懐かしく思い出す彼女。
ああいう体験は都会じゃ無理だね~、と笑った。

そうだ、「だから、いつか子どもを育てるなら、東京じゃなくて田舎がいいんだ~」って
言っていたんだっけ。
そういえば、彼女のその希望は叶ったんだなあ。
それから数年後に都内で結婚したけれど、今は彼の実家のある滋賀で、
ふたりの男の子の子育てに奮闘中だ。
彼女のことだから、どろんこになって一緒に遊んでいることだろう。


虹を一日に何度も見た日が一度だけある。

大阪~東京間の新幹線。
当時大阪に住んでいた両親の家から、ひとり暮らしの東京への復路。

天気の変動の激しい一日で、流れる景色とともに天気もくるくると変わる。

車窓の空の彼方に何度も現れる虹。
現れては、視界の隅に流れていく。

いつものように本を読むこともせず、
ウォークマンを聴きながら、ただ外ばかり見てひとり虹を数えていた。
まだ、ふわふわとゆめの中にいたあの頃のわたし。

あの時わたしは、結局虹を幾つ数えたのだろう。
あの時聴いていたウォークマンのテープは誰の歌だったのだろう。

遠い空の遠い虹だけが音もなくわたしのこころに今も浮かぶ。


近頃、虹をひとつもみていない。
ためいきが出るほど大きな大きな虹をみたいものだなあ。

     

 


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