時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

子鹿色の記憶

2017-03-29 | 本 のこと

記憶とは、つくづくふしぎなものだ。

約30年ぶりに読み返し始めたイギリスミステリ小説「女には向かない職業」。

主人公のコーデリアという名を目にした途端、
「子鹿色」というコトバがふわふわと浮かんできた。

ストーリーはほとんど憶えていないのだけれど・・・
このひと、確か「子鹿色」のセーター着てたんじゃなかったっけ???

読み進めていくと
やっぱり~出てきた。
「こじか色のスカートとグリーンのブラウス」というくだり。

あら、セーターじゃなかった。スカートでした~。
「こじか色」ってコトバが魅力的だったから記憶に刷り込まれていたのかなあ。

著者、P.D.ジェイムズの小説は、細やかな状況描写がとても多いことで有名。
わたしは遅読派なので、そういうの結構すきだけれど
さっさと読みたいひとには、細かすぎる描写にまどろっこしさを感じるかもねえ。

そういうわけで、P.D.ジェイムズのミステリ小説は
机の配置から床の絨毯の色までディテールを描写してくれるおかげで、
まるで自分がそこに居るみたいに本の中に入り込める。
陽射しの温かさや匂いまで伝わるほど。

「こじか色」、原文ではどういうコトバなんだろうな。
それにしても、その「こじか色」を実際目にしていないのに
まるで視たかのように覚えているのは、やはりこの著者の細やかな描写のおかげね。

本の中のこじか色。
記憶のフシギ。。。いとをかし~。

 


最新の画像もっと見る