猫は賢い。
子どものころはいつでも、猫も犬もいるのが当たり前の暮らしだった。
犬は、ただただ可愛いともだちのような存在。
でも、猫は違う。人間と対等な精神を持っているようなところがある。
最後にともに暮した猫は、父が知人からもらってきた「チビ」。
ペルシャとヒマラヤンのミックスで、我が家には初の洋猫で家猫。
オトナになってからの彼は、窓から夜景を眺めるのがお気に入りで、
マンションの14階の窓のそば、チェストの上の地球儀の横が彼のすきな場所。
わたしが父のレコードをあれこれ引っ張り出してかけていると
決まっていつの間にか音も立てずにやってきて その場所に座り込むと
もう振り返りもせず、 長い毛並みを網戸越しの夜風になびかせながら
長いことじっと夜景を眺めていたものだ。
彼のうつくしい後姿のシルエットは、いまでもはっきりと思い出せる。
そんな時、彼は音楽に耳を預けてレコードを聴いているようでもあり、
深く深く自分の思考の波に漂っているようでもあった。
そんな時の彼は、ペットなんてものじゃなく、
気軽に触れてはいけないような、自由で崇高な精神の持ち主的オーラが
その背中には漂っていたんだよなあ。
遠い遠い前世では、尊い教えを説く聖者だったのかも。
はたまた、ただ闇夜に本能をメラメラと燃えさせていただけかもしれないけれど。
彼は天寿を全うして、この世を去った。
あれだけたくさんレコードを聴いた猫はそうはいないだろう。
今頃は、生まれ変わって 何処かでギターをかき鳴らしているかもしれないなあ。。。