時間のしずく time drops 

たいせつなもの。すきなこと。

ふた月に一度のご縁

2012-07-14 | essay




うちは、街の時計店。

30日までしかない月の翌月初旬には、いつもご近所のある老夫婦がお店にみえる。

腕時計のカレンダーが31日をカウントしてしまうため、一日日付がずれてしまうのを、
 自分では直せなくてねえ。 
と、いつも仲良くおふたり連れ立ってお見えになる。

日付を一日戻して、すこしお話をしてお帰りになる。ふた月に一度のご縁。

近頃お会いするたび、ご主人は徐々に足元がおぼつかなくなっていたのだけれど・・・。

最後にいらしたのは、奥様おひとり。
ご主人は、入院されているということ。
それでも、「この時計だけは付けていないと落ち着かないのよ」と微笑んでいらした。

桜のころ、ご主人の訃報を耳にした。。。

あの時計の日付を調整しに、おふたりでドアを開けることはもう二度とない

きっとあの時計は息子さんに譲られて使い続けられていくことでしょうけれど。

ふた月に一度の、あの穏やかなご夫婦とのささやかな時間は
もうここに廻ってこないんだなあ・・・。

しみじみと思う 七月の暑い昼下がりなのでした。







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