
▲ジョン・コールマン 本多繁邦 訳 『世界の黒い霧』 2017年成甲書房
ジョン・コールマン 本多繁邦 訳 『世界の黒い霧』 2017年成甲書房 1-2
ジョン・コールマン 本多繁邦 訳 『世界の黒い霧』 2017年成甲書房 1-2
▲ジョン・コールマン 本多繁邦 訳 『世界の黒い霧』 2017年成甲書房 定価1800円+税
詳細なこの本の目次は、5月20日(土)の当ブログに掲載したので、そちらを見てていただきたい。
簡単な目次は以下のようである。
人物の紹介では、第3章のプーチンの肖像が面白い。
日本を含む西側の政治とメディアの支配下にあるおかげで、プーチンは、第3章のタイトルの様に、
暗黒ロシアの顔として、悪魔化されて報道されるのが常である。
アメリカのソ連観とその情報は、ブレジンスキーのソ連観や、地政学的意見が下敷きになっていると思われる。
外交官だったブレジンスキーの父親は、ポーランドの外交官で、戦前のスターリン体制下のソ連にあるポーランド大使館を経て、カナダ大使館勤務の時に祖国ポーランドがナチス・ドイツに占領され、そのまま亡命者のようになりカナダにとどまった後、アメリカの市民権を取得した。
ナチス・ドイツのファシズムと、スターリン体制下の双方の体制を見たブレジンスキーは、西側やアメリカに好意を寄せる以上に、反共イデオローグの大家となり、多くのアメリカ政治外交史研究者や外交官を育てた。1950年代にソ連体制論を発表し、大学教授となって長いので、彼自身の反共産主義的立場は、アメリカの50年代末以降の政治家にも大きな影響を与えたと思われる。従って、ロシアは体制が変わろうと、新自由主義による制度変革が完成したと見なされるまでは・・・・・征服するまでは、地政学上の敵国の範疇に置かれる。
ゴルバチョフのペレストロイカの後エリツイン大統領の元で国富の収奪と新自由主義化の大波が荒れ狂った間は、西側諸国は、それなりに待遇したが、ペレストロイカに遅れてきたプーチンは、東ドイツのドレスデンに赴任し、ある意味で、世界現代史の辺境の地で、現代史を実感しつつ、成長の機会をまっていた。モスクワ大学のメイン・ストリームのエリート政治家の眼ではなく、古都ペテルブルグで育ったプーチンは、第2次世界大戦のレニングラード(ペテルブルク)攻防戦で、家族を失った。2000万・あるいは2500万人とも言われる戦い・祖国防衛戦というソ連の歴史はプーチンの家族の歴史でもあり、ロシアの経済が破綻に瀕した時、エリツィンはなぜプーチンにロシアを託すことになったのか興味深い。
プーチンが持っているもの、エリート主義ではなく、ロシアの庶民が歴史の中でなぜか絶やさなかった素朴さの残った愛国主義のようなものかもしれない。たぶんロシア的と称される古い伝統となった国民性・・・・・
エリツィンのロシア・・・・体制崩壊の後の帝国植民地化に限りなく堕ち、独立国家存亡の危機に瀕してしまったロシア・・・・・起死回生の脱出劇をエリツィンはプーチンに託したのだろうか。
悪魔プーチンではない、東ドイツ時代のプーチンなど、西側メディアには登場しない逸話があり、飽きさせないプーチン評伝になっている。
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5月20日に届いたので、5月21日にかけて、通読してみた。
いわゆる参考文献が表示されていないのが残念であるが、著者のコールマンが情報元を書くと、その筋が、情報源を特定し、情報入手先にも迷惑がかかるのか、開示していない。
ここにある情報の真偽・及び検証は、読者に委ねられているのだが、そのひとつひとつに旧帝国主義時代の主な国々、諜報機関の工作の痕跡、民間民主主義支援団体を装った工作活動の手口など、世界ニュースを読むためのABCが開示されている。
2016年までのニュース・レターの翻訳なので、最新のニュース情報があるのではないが、投資家ジョージ・ソロスの世界投資という名の「世界クーデター」には、投資とは何だったのか思わず身震いすることになるはず。
さまざまな装いを施した民主主義の活動基金に多額を寄付するのは、近い将来、投資に有利な法を相手国に創らせるための諸活動でもあるのだから、自作自演とも言える。コールマンはこの本で、ジョージ・ソロスの行く先々で経済的ヒットマン・経済的テロリズムの役割をしていることを暴く。ジョージ・ソロスの行くところに気をつけよう。ウクライナにもジョージ・ソロスの確実な足跡があった。
「アレクサンダー病」
「ナポレオンン病」 という適応障害がアメリカに蔓延している。
「傲慢なまでの自信というウィルス」
「ワシントンは、(衰えてきた)覇権を維持する最善の道はヨーロッパでの戦争だと考えている」
という項目がある。 『世界の黒い霧』(266頁~)
アメリカは冷戦が開始された頃、新たに創った情報機関が、犯罪歴のあるウクライナファシストの入国禁止を解き、米国入国を認め、ソ連からの離反活動を早くから支援してきた経緯がある。それが、2000年代カラー・革命・オレンジ革命の工作を経て、2014年、右翼ファシストを使ったクーデターによる、ウクライナファシズム・政権乗っ取りが実現した。これが、欧州の発火にとって大事な火種になる駒と考えているのだろう。ブレジンスキーが構想していた、「グローバル・チェスボード」通りになっているではないか。4千万人いるウクライナなど、寡頭層のチェス盤上の駒なのだ。
傲慢な地政学上の勢力交替地図が、1997年のブレジンスキーの著書」「ザ・グランド・チェスボード」に示されていたのだが、今やその通りに突き進んでいる。アメリカに意見することができる立場にあるのは今やプーチンで甦ったロシアと、中国、イランのみなのか。
元グルジア、現在ジョージアという国家は、一時サーカシビリが大統領になったが、このサーカシビリという人物は、もちろんアメリカが支援していた。
「アメリカで教育を受けたサーカシビリは、グルジア大統領になる前にトビリシからベオグラードに入り、大衆的反抗のテクニックについて厳しい指導を受けていた。」
(第5章ワンワールド政府のウクライナ介入は世界大戦の号砲 『世界の黒い霧』 255頁)
ユーゴスラビアの解体は、民主化運動そのものが、最初は民主化アジビラの発行に必要な印刷道具の寄贈から、デモから、そして何から何まで、・・・・・蜂起の訓練まで・・・・・・計画通りに・・・・・・支援していたのだが、その成功に学ばせようと、グルジアのサーカシビリは、プロパガンダ機械になるべく、かつて訓練に参加していたのだ。
最近は辞めたようだが、サーカシビリはウクライナのオデッサ州知事を務め、ウクライナ大統領ポロシェンコの大統領顧問もしていたのだから摩訶不思議。彼がグルジア大統領だった時、故国ジョージアの閣僚のうち数名が、アメリカとイスラエルの市民権を持っていたことなども、新生ジョージア国の出自の謎を解くカギであるだろう。ジョージアの閣僚に何人もの外国籍のある人物が任命されるのは、古い用語でいえば「傀儡国家」というのだが。グルジアが2008年南オセチアに侵攻したとき、首相プーチンは北京オリンピックのため、国を離れている時で、ロシア大統領メドヴェージェフも外遊中に起きたのである。すべて、ロシアの外交日程に照準を合わせ実行に及んだことが明確だったのだ。
さて、ウクライナ・ファシズムにまつわる話と人物に触れていたのだが、地球の裏側ベネズエラでは、毎日のように、殺人事件をともなう反政府活動で都市が荒れている。ウクライナ・クーデター前の状況に酷似してきた。アメリカがまたもや動きだしている。
ベネズエラ状況の情報は伊高浩昭のブログが、ラテンアメリカの最新情報が入手できる。
ここ ▼
現代ラテンアメリカ情勢 http://vagpress-salvador.blogspot.jp/
つづく