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『陰謀 (クリントン)大統領を葬れ』 大森実 1999 徳間書店 その2

2013年01月14日 | ジャーナリズム 大森実 ・孫崎

前回は大森の『陰謀 大統領を葬れ』のプロローグで、ホワイトハウスのクリントン追い落としの陰謀に 西瓜男 ! がからんでいるということ ヒラリーとオリバー・ストーン監督の対談で語られていることを紹介した。大森実は、「一つぐらいはまともな論評をする新聞もある。やっぱり、地元紙だけは、クリントンの味方だな」と思ったと書き記す。この記事が、大森を、老骨に鞭打たせ、本書を書こうと発奮させるだけの強い衝動に駆り立たせた最初の誘因だった。今回は、大森の事件の解読を進めよう。

 

第1章  巡航ミサイルは発射された    

私が気になり、付箋を貼ってメモしていたものを掲げる。(注 以下大森が書く人物記事の内容・役職等は、1999年執筆までのもので、現在2013年のものでないことをお断りしておく)

『コウエル・メディア・デイリー』 紙1996年5月9日付紙面に、ワシントンポストの人事が掲載。ウォーレン・パヘェットと、ダニエル・バーグが、ワシントンポストの役員会入りを伝える。

世界金持ちランキングで、マイクロ・ソフトのビル・ゲイツと争うほどの個人財閥ウォーレン・パヘェットはウォール街で株の買い占め、買った企業のボードに入るのが特徴。コカコーラ、ジレット、ソロモンなどを兼ねているが、ディズニー社のABCテレビ買収劇では、「黒幕」として、舞台裏で彼がすべてを仕切っていたことも周知の事実。ワシントンポストの株保有率18.8パーセント。

ダニエル・バーグ ウォール街の投資家、パヘェットを後ろ盾にして、アメリカ三大ネットワークのABCテレビ株を買い取り、ABCテレビのCEOとなった。ウォール街投資家がアメリカの権威あるメディアの中に続々と浸透。英・豪系のルパード・マードックはニューヨーク・ポストを買い、フォックス系テレビも買って、猛然とクリントン攻撃を仕掛けている。アメリカ投資家・投機家のメディア買い。

これら、右翼的な投資家・投機家の手に落ちたメディアが、一斉砲火をクリントンに浴びせていく。

第2章 告発者のクレディビリティ

この事件の関係者

主役 モニカ・ルインスキー   「クリントンとのセクシュアル・リレイションズ」を同じ職場の先輩を親友だと信じ切って、愚かにも自慢げに誇張もまじえて、電話で打ちあけてしまった元見習研修生。

第一助演者 リンダ・トリップ   モニカの承諾なく、その電話の会話を累計20時間にわたって20本の録音テープに収録し、クリントンを告発した、独立検察官スター・オフィスに垂れ込んだとされる国防省勤務の中年女性。

この二人の履歴を大森は追う。本来は、権威ある新聞は彼女たちの経歴の調査・検証すべきであったという。

主役モニカ・ルインスキー および周囲について

父親はガン専門の外科医。東ヨーロッパからの移民。

母親のマーシア・ルイスはハリウッドの芸能記者。『3人のテノール歌手のプライベート・ライフ』なる暴露本を出版している。「魅力的なハリウッド・ライターが曝く、テノール歌手の麻薬がらみの私生活の全内幕」という、挑発的・扇情的な帯がつけられていた本。彼女の本を出した編集者によると、マーシア・ルイス自身による持ち込みの発想で、暴露本に出てくる一人の有名歌手と関係があったと専らの噂があるという。母子二代揃って暴露癖があるようなので、大森は、眉に何とかで「要・注意の赤レッテル」を貼って、調査を進める。

スター独立検察官は、この母親のマーシア・ルイスを狙った。と大森は見る。母親が、スターの脅しに屈することがなかったら、一件落着していたに違いないという。モニカは「ポーラ・ジョーンズ」の民事裁判で、「大統領とのセックス関係はなかった」という宣誓供述書を出していたから。

もともと、スターは、ホワイト・ゲート事件で独立検察官に任命された。弾劾に追い込むだけの証拠を何一つ立証できなく、大学の法学部長に就任すると公式発表していた。ところが急に白紙撤回され、捜査をホワイト・ゲート事件追跡からモニカ・スキャンダルへと方向転換する。そこにリンダ・トリップがいた。

告発の主役 兼 助演者 リンダ・トリップ

騒動の時、リンダは48歳。数学教師の娘として育ったが、高校時代に離婚、母親のもとで育つ。母はドイツ生まれ。リンダ・トリップは陸軍将校と結婚。ドイツに渡る。夫はドイツの米陸軍情報部将校。彼女自身も陸軍の情報部・秘密部隊で仕事を見つけた。アメリカに戻ったリンダは、ホワイト・ハウスに欠員があり就職。ホワイトハウス法律顧問秘書から国防総省勤務に変わる。国防総省に転じてから2年後の1996年には、『クリントン政権の秘密と嘘』というタイトルの本を書くことを決心した、というのを、かの女に近い筋の話として、大森は情報を伝えている。

この頃リンダ・トリップは、国防省勤務の単純な事務屋から、別な任務を帯びた役割を持ったものに変身をとげていたようだ。もともとホワイトハウスは一枚岩ではないし、民主党・共和党どちらの政権が運営しようと、それぞれの省庁が、国益とは何かをめぐって、つばぜり合いをしているわけで、省庁内でも、リベラルからライト・ウィングまで、それぞれの情報ネットワークを構築している。リンダは国防総省の中で、どのネットワークに属していたのか。

このような環境の中で、モニカは国防総省に転勤することになっていく。

 

第3章 助演者たちの役割

ルシアンヌ・ゴールドバーグというニューヨークの出版エージェントのこと。

オリバー・ストーン監督が、「かつてニクソンが、マクバガンのバスに潜入させた時限爆弾」と決めつけた女性

1972年の大統領選挙で、ニクソン陣営が放ったスパイ。マクガバン民主党候補のプレスバスに乗り込んで、毎晩のようにネタを打電してきた女性。

大森が見たアメリカのテレビ番組では、リンダ・トリップが本にするため、彼女のオフィスに訪ねてきたので、録音テープをとるようアドバイスしたといっていた。が、後日、メリーランドの刑事法廷の大陪審の審理では「リンダに録音を勧めたとき、州法違反になることを知っていたか」と問われると、、「全責任は私にあります」とあっさり認めている。大陪審の証言から判断すると、、ラジオ・シャックトいう店で録音装置を買ってきて、リンダに操作を教えたのは、ゴールドバーグのようだとしている。

このルシアンヌ・ゴールドバーグは、セックス・スキャンダルや暴露ものの小説を書き、出版エイジェントになってから彼女が手がけた本は、クリントンのハイスクール時代の同窓生が書いた暴露本、最近では、O・J・シンプソンの鍵を握った話題の人物、元ロス市警のマーク・ファーマンの本を扱っている。

マーク・ファーマンは、ロス市警の自分のロッカーの扉の内側にカギ十字の腕章やナチの勲章を貼り付けていたウルトラ右翼。

こうなると、モニカ・ルインスキー  → リンダ・トリップ  → ルシアンヌ・ゴールドバーグ→

→共和党再選委員会→ 共和党内ウルトラ・ウィング という構造が明確に見える。1999年春の時点で大森さんは、事件の核心を押さえていた。と考える。

ルシアンヌ・ゴールドバーグは1972年の時点でニクソン(再選委員会)が放ったスパイであり、これらの人脈は延々と、政権をとろうととるまいと歴代共和党ウルトラ・ウィングが支え、資金を提供してきたのだろう。

 

 

続く

 

 

 

 

 



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