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『陰謀 (クリントン)大統領を葬れ』 大森実 1999 徳間書店 その3

2013年01月15日 | ジャーナリズム 大森実 ・孫崎

前回のブログ 『謀略 (クリントン)大統領を葬れ』 大森実 1999 徳間書店 その2で 事件の主役のモニカと、その母親、告発助演者リンダ自身、そして、リンダに盗聴のための録音機を渡し、使用法を教え、スキャンダル本や、ウルトラ・ライト・ウィングの企画本を担当、元ニクソン政権の再選委員会のスパイ役をしていたルシアンヌ・ゴールドバーグがクリントン抹殺のための暴露本出版で、リンダに指南していたことも判明。なんとも下劣な大統領弾劾の顛末だったのだ。あからさまな陰謀もここまでわかってくると、共和党の良識ある上院議員も民主党側へ回って、下院で通った弾劾賛成も、上院で否決。裏の証拠もとらない下ネタでホワイトハウスにミサイル攻撃した報道メディアに大森実は カツ!をいれる。また独立検察官ケン・スターの素性も洗い出す。往年の事件記者を彷彿とさせる。老骨に鞭打ち、大森は調べまくる。

 

ケン・スター独立検察官の素性

1981年 レーガンが大統領となり、ホワイトハウスに入ると、レーガンと親しかったウイリアム・スミスという弁護士が、レーガンの初代司法長官となる。

ケン・スターが、法学を修め大学を出た後、働いた先の弁護士事務所にウイリアム・スミスがいた。ここで、可愛がられる。

司法長官になったウイリアム・スミスの口利きで、ケン・スターは司法省に入る。レーガンが彼に命じた仕事はなんと 

「独立検察官制度の法律を違憲にすることはできないか、改正することをかんがえてくれ」だった。

なんとも皮肉な話と大森は言う。

「いずれ、悪事がばれ、自分や側近が、特別検察官の世話になってしまうので、抜け道を考えてくれ」

というのが本当の理由だろう。

「規制緩和」 の大好きなレーガン、「法律の規制緩和」も考えていたわけだ。

レーガンに寵愛されたケン・スターは、司法省に入って2年目の1983年末、38歳の若さで、ワシントンの連邦裁判所判事となる。

1989年には、ブッシュ(父)政権の司法次官補となる。

大森実が注目するのは、ワシントン高裁を辞めた後の履歴。

ケン・スターがパートナーとして参加していた、カークランド&エリス法律事務所は、ワシントンでも最大のタバコ・ロビーである事。

大森はカリフォルニアのレジスターという新聞記事を引用する。

「ホフストラ大学法学部の法律倫理の専門家、フリードマン教授は、独立検察官になってからも、スターが、フィリップ・モリス、ブラウン&ウィリアムソンとを代表して、年間100万ドルの報酬を取って、タバコ10社のロビー活動を続けていることは、彼自身が、問題の種を撒いていることになるのではないか」

と彼自身の独立検察官の問題点(中立性)を突いている。

フリードマン教授の指摘を、大森流に解釈するとこうである。

「独立検察官の適格性をめぐる法律論争だけでなく、タバコ企業にとっては、「大敵」である、クリントン暗殺のもう一つの動機が出てきた ことになる」

ケン・スター独立検察官は中立どころか明確な「非独立検察官」だったわけだ。一貫して共和党ライト・ウィングのためロビーストとしても働いてきた男であった。(どうしてこんな男が独立検察官になれるのか不思議だが、三流探偵でも調査できる経歴であった。大手メディアはクリントンの下ネタばかり偽情報を報道しまくり、故意にか、ケン・スターの出自を問題にせず、伏せていた)

ケン・スターは学生の時、ニクソンを支持、またニクソンと同じ大学出身だったことを大森は突き止めていた。彼は最初から共和党ライト・ウイングのために働く、法曹界へ放たれていた将棋の駒であった可能性(自らの出世欲もあったろうが)が高い。

タバコは、全米で7位の産業に発展。政府は南部の農民を助けるという名目で、長い間莫大な助成金を出してきた。

「もう多くを述べる必要はないと思うが、このタバコの有害性を激烈に宣伝して、未成年者や、若者の喫煙に猛烈にストップをかけ、タバコ産業をこてんぱんにやっつけ、タバコ産業の命運を次々に打ち出してきたのは、他ならぬ、クリントンであった。」と大森は指摘する。

財閥・財団・基金・キリスト教右翼・タバコ産業などの利権大連合がケン・スター独立検察官を担いで、クリントンを葬ろうとしていたというのが大森の見解である。これに、財閥・投資屋に乗っ取られたもはや報道メディアではない報道メディアが、大拡声器となり、「大山鳴動して鼠一匹」。 老共和党議員も、「こんなことをやってばかりいては共和党はもうだめだ。恥ずかしくて、弾劾に賛成しない共和党上院議員もいて、クリントン弾劾は失敗に終わった。クリントンはかろうじて弾劾を免れた。

4年間、国民の税金4500万ドルと、50名のスタッフを使って、ケン・スター独立検察官は、ホワイト・ゲート事件(ねつ造された汚職疑惑)はおろか、なんと「情事だけを、掘り起こし、「情事すら」掘り起こせなかったのだ。

(ところで、9.11事件の独立調査委員会の調査期間と調査総額を調査する必要がある。まさか、クリントンスキャンダル弾劾費用より少ないことはあるまいね! もしや これこそ世紀の大醜聞!)

日本にもなにやら、独立検察官によく似た、「検察審査会」が、小沢抹殺のために長期にわたって、選挙前に活動していた。敗戦国日本が、アメリカから戦後輸入したシステムで、どのようなひとが、どんな基準で選出されるのかわからない。無作為の選出で公正であるというが、会議内容はどのような合理的論理で整理されるのか不明。闇の制度に近いのが現実。アメリカの意に沿わない人物がいると、まずアメリカのメディアが動き、リークし、騒ぎだす。正規の大阪・東京地検特捜がダメとなれば、まるで国際スパイのスリーパーのようにやおらむっくり起きあがり、検察審査会が活動を始める。これは何なのか。

日本の中野聡や北野仁などの研究者は、アメリカ(帝国)が占領・あるいは保護国化した国々で(たとえばカリブ海諸国・フィリピン等など)、憲法や法律などを、アメリカ好みの国家にするのにどのような改変を行っているのか、精力的な調査を行っているようだ、日本も当然視野の中に入る歴史的経験のある国である。彼らの研究成果に興味が湧く。

レーガン・ブッシュ コンビ時代の「イラン・コントラ」事件は、陰謀規模の大きさ、内戦にもからむ人命が多く失われた重大な国際事件だったにも関わらず、親分たちは、知らぬ・存ぜぬ・記憶なしで決着。これこそ弾劾すべき事件であった、もし、メディアが、きちんと追求していれば、ブッシュ親子の大統領はありえなかったし、それ以前に政界を去らざるを得ないことになっていたはず。その後の道義無き戦争も、またこれほどひどい裏政府が表の国際外交を左右することはできなかったのではないか。

エピソード

1792年の冬、アメリカ独立革命後間もない頃の話。

アメリカ議会が、アレクサンダー・ハミルトン財務長官の「セックス・スキャンダル」を調査したことがあった。

米議会は、下院議長に「三人特別検察官」を任命し、調査に当たらせた。専ら検察官として、ハミルトンの尋問にあたったのは、「モンロー・ドクトリン」で有名な、第五代大統領となるジェームズ・モンローだった。

スキャンダルは事実であった。

ミューレンバーグ下院議長は、モンローの報告を受け、議会首脳部と協議した結果、裁定を下した。

「この事件は、プライバシーの問題である。国家の政治とは何の関係もない。よって、姦通は弾劾すべき罪にはならない」

 

さて、クリントンとモニカのことが書いてなくて、さっぱり、わからないって ?

『陰謀 大統領を葬れ』 大森実 1999 徳間書店 は、まだまだ、古本屋にはあります。 あぶないものをみるには、通過儀礼で、約束の、入り口で木戸銭を払ってもらいます。

本物の事件記者 大森実の仕事 を手に取って堪能することを勧めたい。

 

 

 

 



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