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クリントン・モニカスキャンダルを演出した助演者・裏方たち 大森実の『陰謀ー大統領を葬れ』その1

2013年01月13日 | ジャーナリズム 大森実 ・孫崎

本年1月7日のブログで、大森実の『石に書く』を紹介したが、その中で、『陰謀ー大統領を葬れ』をほんの少しだけ触れた。再読したがやはり面白く、今回はこの本について紹介したい。日本でもクリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルは、大きく報じられ、連日テレビ・新聞・雑誌がすべて、三流ゴシップ雑誌に変わったかのように狂乱報道していたのを思い出す。その頃、元毎日新聞外信部長だった大森実は、日本を離れ(脱出!)、カリフォルニアで暮らしていてこの事件のアメリカメディア・チェックをしていた。大森が、「アメリカのメディア狂乱」を座視することができず、そのまま日本に伝染していくのにも耐えられずに、またまた記者魂を発揮して、原稿を日本に持ち込んで出版したのがこの本。「アメリカのメディア狂乱」報道を 彼のペンが捕らえるとどうなるか!堪能させてもらうことしよう。

 

まずは大森実のプロフィール。

 

▲ これは大森実 『陰謀ー大統領を葬れ』1999年 徳間書店 巻末の奥付の横顔

大森の毎日新聞社退社のいきさつについては、『石に書く』 1971年 潮出版社に詳しい。怒りの人大森を知るには一番の書。2010年3月25日死去。

 

 ▲ 大森実 『陰謀ー大統領を葬れ』 1999年 徳間書店  の目次

プロローグ 

で大森は、クリントン大統領の地元、リトルロックで発行されている新聞「アーカンソー・ガゼット」が 「映画・コンスピラシーの論理」と題する、ちょっと変わったタイトルの評論を、同紙の社説面に掲載したことから始めている。1998年1月31日付の紙面だそうだ。

ワシントン・ポスト紙が「セックス・スキャンダル」を報道して、マスコミが「総発狂のカオス」(大森の言葉)と化してから、まだ1週間余りしかたっていなかった。

この地元の新聞は、この記事で、「これは「ライト・ウィングの総力戦」ですよ。」 と ヒラリー大統領夫人に語らせている。

この言葉を引き出している対談相手は、なんと、巨匠オリバー・ストーン監督である。彼もカンが働いたのか、前から探りを入れていたのか、この時点でかなり適切な取材を入れていたのだ。もちろん、大手新聞・テレビでは絶対に扱わなかっただろうが。

世論の支持率70パーセントという史上最高人気の大統領、このころ、アメリカの経済景気は絶好調の段階で、レーガン・ブッシュ軍拡でもたらした財政赤字を、解消したクリントン。下院弾劾決議が成立し、上院に訴追された後に行われた世論調査でも 「現在の生活はわが生涯最高だ」と回答した国民が71パーセントもあった時代。政治とマスコミが国民の心から完全に浮いてしまっていたと大森はこの時期を振り返る。

なぜこの時期にメディアは寄ってたかって袋ダタキにするのか。大森もこの記事を読み、ピン ときたようだ。

クリントンの地元誌に掲載された、オリバー・ストーンとヒラリー夫人との対談のさわりを、引用しているので、まずは紹介しよう。なお、括弧の説明は、大森実である。

ヒラリー  「クリントンが大統領への立候補した週間から、私たちにつきまとって離れない、中傷戦争です。大統領を葬るための戦争です。いわれなき殺人容疑(注・フォスター法律顧問の自殺事件で、殺害容疑者をヒラリーだとした)や麻薬の容疑まで、ライト・ウィングが仕掛けてきた長期戦争ですが、裏に隠れている陰謀の正体をハッキリ洗い出すまで戦い抜きます。」 

ストーン  「陰謀の主役はスター・チェンバー(ブラック・チェンバーもじっている)独立検察官ケネス・スターです。」

ヒラリー   「政治的動機をもつ一人の検察官(独立検察官ではない)です。彼は、私の主人の敵であるライト・ウィングと同盟を結んでいます。」

ストーン   「誰が牛耳っているのでしょうか。すべて、企業の強欲というものでしょう?」

ヒラリー   「右翼のプロ部隊が、総力を挙げて、彼らの目的と利益のために動いていることは疑う余地もありません。」

ストーン   「そうです、そうです。ライト・ウィングはみんなそうです。あなたとご主人を葬るため、数百万ドルの弾丸を発射しているスターの後援者・・・・・。」

エイジェント  (仲介したハリウッド・エイジェントが口を挿む) 「数百万ドルも金を出して、あいつはどんな利益があるんでしょう?」

ストーン    「しっ! (と唇に手を当てて) ヒラリーさん、あの男のことを語ってください。 えーと、なんと言いましたかかな。あの男の名前は  ウォーター・メロン・スクープでしたっけ?(注 、ホワイト・ゲート事件とスクープをもじった 西瓜男 という冗談がよく効いている)。 えーと、ノートを見させてくださいよ。そうだ、リチャード・メロン・スカイフェという男だ。(ここでまた注が必要となるが、ピッツバーグ財閥のメロン銀行頭取の四代目にあたる人物が登場してくる)。

 

リチャード・メロン・スカイフェという財閥の名前が出たところで、大森は二人の会話の引用をやめ、この財閥を簡単に説明する。

鉄鋼都ピッツバーグで、ロックフェラーや、カーネギーと肩を並べる金融帝国を構築したメロン財閥の初代トーマス・メロンは、裁判所の元判事で、破産宣告するものが出ると、役得を利用して抵当流れの不動産を買いまくって財をなした。

南北戦争で勃発で鉄鋼ブーム、鉄道ブームにつづき石油ブームが起こったが、財閥を形成しながらテキサスの油田開発に投資、ガルフ石油を支配下に収め、ウエスティングハウス(現在、CBSテレビの大株主)やALCOA(アメリカン・アルミ)、パン・アメリカン航空などの大コンツェルンを形成していった。

二代目のアンドルー・メロンは、フーバー共和党政権の財務長官として、1929年大恐慌の責任者だったのだから、飛んだ皮肉な人物の登場となるわけだ。・・・・・・・・・

オリバー・ストーンの言う「西瓜男」が どのようにして、クリントン攻撃の「アーカンソー・プロジェクト」なるものを操作していくのか。・・・・・というところで、プロローグは終わる。

この西瓜男を記憶しよう。また、CBSテレビの背後にメロン銀行・西瓜男がいることを確認しておこう。

共和党・財務長官・1929年恐慌・ピッツバーグ財閥・メロン銀行・CBSテレビ・ネットワークなども記憶しておこう。

続く。

 

 

 

 

 

 

 



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