ワールドボーイ RF-858は、BCL(Broadcasting Listening)がブームになる前の時代にナショナルから発売された FM/AMとSW(短波)が聴けるラジオだった。
ヒマに任せて書棚を整理していて、偶然にも、それの取扱説明書が出て来て往時を懐かしく思い出した。後日、実物も押し入れの奥から探し出した。
このワールドボーイ RF-858だが、ネットでお他人様がどの様な評価とか、思い入れを持って居られるのか?斜め読みさせて頂いた。それぞれに、このラジオに託した思いが綴られていて、共感する部分もあり、思いを新たにした。
ナショナル ワールドボーイ RF-858 (私物)
当時は未知の世界だった?短波放送を聴きたくて、いわゆるオールウェーブ・ラジオに憧れていた。秋葉原で貰って来たナショナルとソニーのカタログを眺めつつ思案していたが、その結論として、ナショナルのワールドボーイ RF-858 を買うことにした。
FM/AM/SWの三バンドが聴けるラジオとしては、他社とほぼ横並びだったが、当時のナショナルのラジオのなかではマニア向け?でデザイン的に、かなり凝った作りが決めてだったのかもしれない?
夏のある日、秋葉原の家電量販店で、このワールドボーイ RF-858 を買ったが、積年の思いが結実し正に至福の時だった。
今回、見つかった取扱説明書に保証書が挟まっていた。それによると、1970年(昭和45年)8月29日と店の日付印が押印してあり、新発売の告知から数ヶ月後であった。
余談だが、
ホームページやブログに於いて、RF-858 の発売年を「1968年」としたものが散見され、思わず苦笑した。ネットで良くある「孫引き」である。
つまり、参考にした記述の真偽を確かめず、そのまま引用したため、間違いが、そのまま次々と引用され、「1968年」に発売が定説化されたが、それは間違いだ。正しくは「1970年」夏前の発売である。
RF-858本体と取扱説明書、保証書、POPタグ
ナショナルのワールドボーイ RF-858 のカタログでは、「GX」なんてネーミングで大々的な宣伝もしていて人気の機種だった。今から思えばかなり大きめサイズだが、当時としては、ごくごく普通だった。
デザインは、選局のメインダイヤルが大きめのツマミである以外は、スライド式の音量調節のVOLUME や TONE調節と BAND切替、それに四連のトグルSWによる POWERをはじめ INDICATOR、LOUDNESS、AM/FM切替が列び、それら全てが上部に配置されたスタイルは、当時としては斬新だった。
小型のメータがフロントにあり、このメータはスイッチにより VUと TUNEそして BATTERYチエック に切り替えができて、何となくマニアックな仕上がり。
回路的には、ICが一個、FETが一個、トランジスターが八個使われ、AC100Vと単2電池三個で動作したが、ICとか FETなどと敢えて明示するところに時代を感じさせる。
受信周波数は
中波:525kc~1,605kc
短波:3.9Mc~12Mc
FM:76Mc~90Mc
買ってまもなく、ヨーロッパの小国で暫く暮らすことになり、このラジオを携えて渡欧した。
逗留したマンションの窓辺から毎晩必死になって NHK の国際放送 Radio Japan の受信を試みた。しかし、現地のラジオ放送の混信もあったが、東西冷戦の真っ只中で、当時のソ連邦から強力なパワーで発せられる Radio Moscow や東欧諸国からのジャミング(妨害電波)に邪魔され一度も聴けなかった。
それで Radio Japan は諦め、隣国ルクセンブルグから中波で放送していた Radio Luxembourg を毎晩聴いた。
今で言うところのユーロビートのヒット曲を延々と深夜まで放送していて、MCの語り口調がとてもユニークで面白く、フランス語?の分からない自分にも雰囲気だけは楽しめ退屈凌ぎにはなった。
ニュースは専らイギリスのBBCにチューニングしていたが、早口の英語にはお手上げ状態で、何のニュースか位しか分からなかった。
しかし、今の様に携帯やネットなどが無い時代、日本から届く新聞やエアメールなどは、早くても一週間は掛かっていたことを思えば、唯一の情報源だった。
今にして思えば、電気通信の時代は遠い昔のことになり、情報通信の時代の真っ只中、知りたい情報が何時でも何処でも手に入り、ラジオの使命は限定的になりつつあるようだ。