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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

喜多一郎監督「シェアハウス」(2011年、104分)☆☆★

2022-04-03 10:41:28 | 日本・2000年~
舞台は湘南海岸、葉山のあたり。シェアハウスを購入し、一緒に暮らすことになった4人の女性の物語。

このシェアハウスに住むのは、夫と娘夫婦に先立たれた独り暮らしの女性・有希子(吉行和子)、恋愛が不得手な売れないケータイ小説家・麗子(浅田美代子)、JA勤めで孤独な独身女性・花恵(木野花)、そして元帽子デザイナーでただひとり若いまひる(佐伯めぐみ)。
有紀子、麗子、花恵はもともと湘南で暮らす友人同士で海辺のカフェ「プラージュスッド」の常連。花恵はかねてから共同で家を持ち、仲間同士一緒に暮そうと考えていました。有紀子、麗子は話し半分で聞いています。そんなおり、ひとりの若い女性・まひるが海岸に長いこと立ち尽くし、意を決したかのように入水、溺れかかります。

そこに居合わせたサーファー・優人(牧田哲也)はあわてて海に入り助けます、まひるは放心状態。近くに住む有希子はまひるを引き取り、面倒を見ることになります。やがて、元気を取り戻したまひるの後押しもあり、有希子は花恵のシェアハウスの提案を受け入れます。
東京で働いていたまひるは、デザイン会社の後輩と恋人に裏切られて傷ついていのでした。そんなまひるを、有希子は本当の娘であるかのように接します。

世代も性格も異なる4人の女性たちが個を尊重しながら、気張らない生き方を始めるのですが・・・。
 

小林仁監督「五日市物語」(2011年、119分)☆☆☆

2022-04-02 10:43:54 | 日本・2000年~


現在の東京都あきる野市は、1995年に秋川市と五日市町とが合併してできた都市です。市制15年を記念した映画作品です。

五日市はかつて江戸・東京へのエネルギー、材木の供給基地でした。また自然豊かな景観があり、商人、知識人の集まる文化圏も形成していました。

幕末から明治初期、五日市憲法草案を起草した千葉卓三郎、看護師として国内外で活躍し、世界初のナイチンゲール記章を受けた萩原タケが有名です。

<あらすじ>
渋谷の情報収集会社に勤める主人公・伊藤友里(遠藤久美子)は、上司・黒田(井上純一)の命令でテレビ番組の情報収集のため、あきる野市にやってきまし。市役所の情報発信室の栗原(山埼佳之)の案内で取材を進めるうち、市の歴史、自然、そこに住む人のパワーに惹かれていく友里でしたが、番組制作が突然、中止になります。

しかし、市とそこに住む人に強い魅力を感じた友里は退職し、ルポライターとしてこの地の素晴らしさを伝えようと、泊り込みで取材活動を始めます。とくに油屋旅館の女将・岸トシ子(草村礼子)から昔の五日市町の様子を聞くことが日課になります。そこへ、やめた会社の上司・黒田が油屋旅館にやってきてみなで話をするうち、彼の父親が戦前にこの旅館に泊まりこんで絵を描いていたこと、トシ子とも交流があったことがわかり・・・。

佐々部清監督「種まく旅人~夢のつぎ木」(松竹、2016年、105分)☆☆☆

2022-03-27 21:15:49 | 日本・2000年~


舞台は屈指の桃の産地、岡山県赤磐市。

主人公は赤磐市役所に勤める27歳の片岡彩音(高梨臨)。9年前の春、女優を夢みて東京へ向かったものの、両親の死後、桃栽培を担っていた兄・悠斗(池内博之)が病に倒れたため、故郷の赤磐にいっとき戻って経営を手伝うことになります。

しかし、兄はついに帰らぬ人に。彼が抱いていた夢は、接木に成功した桃の新種「赤磐の夢」を新種登録で農水省の認可を受けることでした。悩んだ挙句、彩音は桃農家をつぐことにします。高校生の妹・知紗(安倍萌生)と二人で、新種の栽培を始めます。

彩音は桃の酒を作る宝町酒造の高橋親子(井上順、辻伊吹)や、レストランを営む義姉の美咲(海老瀬はな)たちに助けられながら、畑と市役所の仕事を両立して生きていきます。

そんなある日、農水省の職員・木村治(斎藤工)が桃栽培に関するレポートをまとめるため、赤磐にやって来ます。28歳の治の故郷は、大分県臼杵市。彩音は上司の岩渕(津田寛治)から案内役を任され、治を畑や直売所などに案内します.。それなのに、治の態度は当初、全く真剣でありません。それでもお互いに身の上話をしているうち、気心が通いはじめます。

その矢先、「赤磐の夢」の品種登録の可否通知が農林水産省から届きます。結果は・・・。

篠原哲雄監督「種まく旅人~くにうみの郷」(松竹、2015年、111分)☆☆☆★

2022-03-26 20:38:42 | 日本・2000年~



舞台は淡路島。

淡路島に地方調査官として淡路島に主張を命じられた農林水産省官僚・神野恵子が、地元の農業、漁業従事者とぶつかりあいながら、成長する物語です。

「掻い堀り(かいぼり)」という農業用の池を維持するために行われてきた伝統的な管理方法を蘇らせたシーンが印象的でした。この方法は農作が終わる晩秋から早春にかけての農閑期に、灌漑のために溜めてあった水を抜き天日に干し、そこに堆積した土砂を取り除くというもの。栄養塩類を含んだ泥や水を海に排出し、その作業が海産物(この映画では海苔)に滋養をもたらす効果もあります。

この作品では衰退気味の第一次産業という環境を背景に、中央(農水省)の役人(栗山千明)と地元で直接農水産業に従事する人たちとの感情のズレ、そしてたまねぎ農家の四代目・豊島岳志(桐谷健太)と海苔養殖業に従事する渉(三浦貴大)兄弟の確執から話が始まり、ぶつかりあいながらそこから相互の理解が生まれ、ひとつの力になっていく過程が骨太に描かれています。

淡路人形浄瑠璃の伝統を引き継ごうとする女性のエピソードも盛り込まれています。


稲塚秀孝監督「NORIN TEN 稲塚権次郎物語」(2015年、110分)☆☆☆★

2022-03-22 20:45:50 | 日本・2000年~


1960年代、世界食糧危機のさなかインド、パキスタンの人々を救った小麦がありました。その小麦の元祖は「NORIN TEN(小麦農林10号)」。稲塚権次郎(1897~1988)が育種した小麦です。昭和10年(1935年)岩手県立農事試験場で開発されました。

本作品は、現在、世界の小麦の70%以上のもとになった「NORIN TEN」の育種者、稲塚権次郎の半生を描いています。

主要舞台は権次郎のふるさと(現在の富山県南砺市)です。

権次郎(老年時代・仲代達矢、青年時代・松崎)の勉学と育種研究の過程が丁寧に映像化されています。

「NORIN TEN(小麦農林10号)」は、権次郎が岩手県農事試験場で小麦の新種を開発にとりくんだ成果で、昭和10年(1935年)秋に育種に成功しました。特色は半矮性で、従来の小麦に比べ背が低く穂が倒れにくい品種でした。

それに先だって権次郎は、秋田県大曲にある陸羽支場で主に稲の新種開発に没頭していました。「陸羽132号」「水稲農林1号」と、収量が多く、美味しい新種の稲を開発しました。さらに開発の意欲をもって研究を勧めていた矢先の岩手異動でした。

根っからの研究者タイプの彼は生真面目で、周囲に溶け込めない性格でした。上司の永井は彼に「謡」をすすめ、そこで会った佐藤イト(野村真美)を生涯の伴侶とします。

昭和13年、権次郎は華北産業科学研究所(北京)に異動。イトも同行しましたが・・・。


田中光敏監督「利休にたずねよ」(東映、2013年、135分)☆☆☆

2022-03-18 23:44:36 | 日本・2000年~


原作は山上兼一による同名小説です。

秀吉の逆鱗にふれ最期の時を迎えた利休(市川海老蔵)に、妻・宗恩(中谷美紀)の胸中にそれまでに彼に抱いてきた疑問がよぎります。その疑問は利休が思いを抱いていた人がいたのでは、というもの。利休は若かった頃、高麗からさらわれてきた女性に心をよせ、その出会いが彼の生涯と芸の道に大きな変化をもたらしたのでした。

開巻、大嵐の中、千利休の屋敷は秀吉の3000の兵士に囲まれていました。利休は縁側で白装束を身にまとい、座していました。そこに妻が灯りを持ってきます。灯りを消すように利休は言い、一服の茶をたてます。

秀吉に対して命乞いせず、「天下を動かすのは、武力と銭金だけではない」「私がもとめるものは、美しいものだけ」と呟く利休。その精神が秀吉を怒らせたのです。

ストーリーは「切腹、21年前」「12年前」「10年前」「9年前」「6年前」「利休、切腹の年」と展開します。

利休の生涯をとりあげた映画作品にはこの他に、勅使河原宏「利休」(1989年)、熊井啓監督「本覚坊遺文 千利休」(1989年)があります。田中光敏監督による本作品は、脚色された部分が多く、史実とはだいぶ異なりますので(原作がそうなのでしょう)、その点を了解しながら観なければなりません。

チョン・ジエウン監督「蝶の眠り(나비잠)」(韓国・日本、2017年、112分)

2022-03-18 14:10:51 | 日本・2000年~


タイトルの意味ですが、作品のなかにそれを説明するセリフが出てきます。「韓国では赤ちゃんのように両手を挙げて眠る姿を、比喩で『나비잠(ナビジャン)』っていうんですよ」と。

舞台は東京。

アルツハイマー病に侵された女性が人生の最後をどう迎えるか、そして年の差を超えた韓国青年との愛が描かれます。

主人公は50代なのにいまだ美貌を保ち、若い読者層に根強いファンを持つ売れっ子の女流小説家・松村涼子(中山美穂)。

彼女は小説を書き、愛犬・トンボとともに満ち足りた生活を送っていました。ところがある日、自分が遺伝性のアルツハイマーに侵されていることを医師から告げられます。

人生の終焉と向き合う生活を余儀なくされた涼子は、「魂の死」を迎える前に、執筆活動以外のことをしようと、大学で講義をもちます。
初日の講義後、学生たちと訪れた居酒屋で、アルバイト店員で韓国人留学生チャネ(キム・ジェウク)と出会います。涼子がその店に「万年筆」を忘れたことを切掛けに、チャネは涼子の愛犬の散歩をすることになり、さらに涼子の執筆活動を手伝います。涼子がしゃべる小説のストーリーをチャネがワープロで原稿化する作業です。

仕事を進めるうち、現実と小説の世界で交差していく二人。次第に年齢の差を超えて惹かれ合いますが、涼子のアルツハイマーは徐々に進行していきます。

滝田洋二郎監督「北の桜守」(東映、2018年、126分)☆☆☆

2022-03-05 22:03:58 | 日本・2000年~


1945年8月、樺太から北海道に引き揚げてきた江蓮(えづれ)家の物語。タイトルは、晩年にやや痴呆症状が出てから桜の健康を守る仕事についた、主人公の女性にちなんだもの。

舞台は北海道の稚内、網走、旭川、札幌など。札幌では「狸小路」がメインです(ただし模擬セットです)。

樺太から命からがら北海道の網走に引き揚げ、懸命に生き抜く江蓮てつ(吉永小百合)と次男・修二郎(堺正人)の戦後の道のりが描かれます。

樺太で製材所を営み比較的豊かな生活をおくる江連家は、四人家族。

終戦が間近になったある日、ソ連軍が侵攻。父親の徳治郎(安部寛)は出征。出征の日、徳治郎は必ず帰って来るので四人で満月の夜に綺麗な桜を見よう、と約束します。妻のてつ、清太郎、修二郎は網走に逃れようとします。

途中、引き揚げ船が砲撃を受け転覆。てつと修二郎はかろうじて助かったものの、清太郎は行方不明。

網走で母・てつは菅原(佐藤浩市)や樺太時代からの友人の山岡(岸部一徳)に親身になって助けてもらい、修二郎はその母のもとで立派に成長します。

その後、修二郎は渡米し、ハンバーグ経営のオーナー(中村雅俊)の娘・真理(篠原涼子)と結婚。苦労して狸小路に一号店をだします。そこへ網走市役所から呼び出しの電話が入ります。当地で修二郎は、母・てつと15年ぶりに再会しますが・・・。

阪本順治監督「北のカナリアたち」(東映、2012年、130分)☆☆☆★

2022-03-04 21:53:06 | 日本・2000年~
  

題名にある「カナリアたち」は西条八十による「歌をわすれたカナリア」に由来し、この作品のなかで小学生の子供たちが歌う唄です。

原案は湊かなえによる短編集『往復書簡』所収の「二十年後の宿題」。話はミステリータッチで進みます。ロケ地は礼文、利尻、札幌。
北海道の最北端の離島で分校の小学校教師を務める川島はる(吉永小百合)。4年生から6年までの6人の子どもたち(信人[森山未來]、真奈美[満島ひかり]、直樹[勝地涼]、結花[宮崎あおい]、七重[小池栄子]、勇[松田龍平])に歌を教え、合唱の指導にあたっていました。

ある夏の日、はるが生徒たちと囲んだバーベキューで悲しい事故が起きます。結花があやまって崖から海に転落し、それを助けようとしたはるの夫・行夫(柴田恭兵)が水死します。子供たちは心に深い傷を負います。そしてあろうことか、はるは地元の警察官(仲村トオル)と秘密の付き合いをしていました。それが島の噂になり、はるは6人の教え子を残し、逃げるように島を去りました。

20年後、東京で図書館職員の定年をむかえたはるのもとに、思わぬ知らせが飛び込んで来ます。教え子の一人、鈴木信人がある事件を起こしたというのです。

はるは島に再び帰りますが・・・。

深川栄洋監督「洋菓子店コアンドル」(2010年、115分)☆☆☆★

2022-03-03 23:48:45 | 日本・2000年~


見習いとして「コアンドル」で働き始めた鹿児島弁まるだしの臼場なつめ(蒼井優)。オーナー・依子(戸田恵子)や常連客に支えられ、懸命に自分の居場所を見つけようとする彼女の姿に、暗い過去をもった伝説のパティシエ・十村(江口洋介)の心が動かされていくヒューマンドラマです。

東京で評判の洋菓子店「パティスリー・コアンドル」に、鹿児島出身の若い女性・なつめが訪ねてきます。なんでもこの店で修行中の恋人を捜し求めてきた、というのです。しかし、彼はそこにいません。

泊まるところがないなつめは、店のオーナーでシェフの依子に雇ってくれるよう頼みます。実家が菓子店だったので、ケーキづくりはできると売り込みます。依子は彼女に試験的にケーキを作らせますが、ダメでした。売りものにならないのです。彼女はくいさがり、依子はその熱意にほだされて店を手伝わせます。

「コアンドル」は一流の店。依子はじめ、マリコ(江口のりこ)も腕のたつ職人でした。新米同様のなつめにつらくあたるマリコ。歯を食
いしばってがんばるなつめ。

この店によく来る客がいました。依子によると彼は伝説のパティシエでしたが、わけあって現在はケーキづくりを封印し、評論家として活動している十村という男でした。なつめの作ったケーキを賞味しますが、評価は零点。
そんなある日、オーナーの依子が階段からおち・・・・。

深川栄洋監督「そらのレストラン」(2019年、128分)☆☆☆★

2022-03-02 23:46:28 | 日本・2000年~


舞台は道南・せたな町。この町で循環型農業を営む農家ユニット「やまの会」の全面協力のもと、チーズ作りに情熱を燃やす酪農家が仲間たちと一日限りのレストランを開くまでの奮闘が描かれます。

海が見える牧場で酪農とチーズ工房を営む亘理(大泉洋)は、妻のこと絵(本上まなみ)、一人娘の潮莉(庄野凛)と3人暮らし。

亘理は父が急死したときに農場を継ぎました。チーズ職人の大谷(小日向文世)は父の代からの取引先でした。亘理は引き続き大谷に牛乳を届けます。そして、チーズの作り方を教えてほしいと、頭を下げます。

亘理は自然に寄り添った食を追求する仲間たち(同級生で野菜を作る富永芳樹[高橋努]、米と大豆を作る石村甲介[マキタスポーツ]、UFOに興味を持つ漁師の野添隆史[石崎ひゅーい])とともに、助け合いながら酪農を営みます。そこに東京の外資系の大手会社をやめてやってきた牧羊を営む若者・神戸(岡田将生)が加わり、次いで彼らの食材を目当てに飛び込んできた札幌の有名ビストロのシェフ・朝田(眞島秀和)が加わります。

亘理はせたなのおいしいものをメニューに並べた一日限定のレストランを開くことを思いつきます。しかし、納得のいくチーズはができず悩んでいると、大谷が倒れなくなります。途方にくれる亘理。先行きが見通せず、亘理は農業をやめる決心をしますが・・・。

西尾孔志監督「函館珈琲」(2016年、90分)☆☆☆

2022-03-01 23:11:05 | 日本・2000年~


全編、函館ロケ。市電、教会、臥牛山、函館の街並みがおだやかです。

若者たちにアトリエ兼住居として部屋を貸す「翡翠館」のオーナー・荻原時子(夏樹陽子)。

部屋を借りていたのは、101号に「とんぼ玉職人」・堀池一子(片岡礼子)、102号にクマの人形作家・相澤幸太郎(中島トニー)、104号にピンホールカメラ専門写真家の藤村佐和(Azumi)が生活しています。

そこに桧山英二(黄川田将也)が東京からやってきました。本来は家具職人・藪下が来ることになっていて、人望があったらしくみな期待していたのです。桧山はここでネット販売の古本屋を立ち上げるつもりでした。文学賞を受賞したのですが、第二作が書けすに悩んでいました。
住人はみなそれぞれ、わけありの人生をかかえていました。離婚している一子は子どもに会えない寂しさを「とんぼ玉」作りでまぎらわせていますが、将来は店を出したいのです。相澤は遠い故郷を思いながら熊の縫いぐるみをいつもポケットにいれています。対人恐怖症の佐和は、ピンホールカメラに託し函館の街を切り取っています。

桧山が時々淹れるコーヒーは住人の人気をあつめます。特別においしいのです。しかし、当人は何も書けない自分への怒りと焦りで苦悩しています。桧山は蔵の隅に置かれた時子の亡き夫の愛車、古いオートバイを修理し、ある決意をします。

三島有紀子監督「しあわせのパン」(2012年、112分)☆☆☆

2022-02-28 23:15:12 | 日本・2000年~


舞台は北海道・洞爺村。よく知った風景が映る映画には懐かしさを感じ、落ち着きます、この作品はそのひとつです。

小さな2階建ロッジのパン屋は若い夫婦で経営。夫の水縞尚(大泉洋)が焼くパンと、妻のりえ(原田知世)が入れるおいしいコーヒーが自慢の店です。

お店の名前は、りえが気に入っている絵本「月とマーニ」にちなんで「カフェ・マーニ」。常連客は子沢山で農家経営の広川さん一家、アコーディオンを入れたトランクを持つ阿部さん(あがた森魚)、ガラス作家・陽子さん(余貴美子)、そして毎日配達にきてくれる郵便屋さん(本多力)。

薪の竃で焼いたパンの他、おいしいコーヒー、自家菜園の野菜を使った料理が絶品。一階のテーブル席からは湖畔の景色を眺望できます。

日没後には月が輝いているのが見えます。2階は簡易宿泊所。ときどき遠方から旅行客が訪れます。

四季おります湖畔のカフェにやってきた、3組の人たちと夫婦の交流が印象的です。

夏には、彼氏にふられ沖縄旅行をドタキャンされた東京からの客・香織(森カンナ)。

秋には、登校拒否の小学生の少女・未久(八木優希)と離婚した父親。

冬には、降雪のある日、有珠駅に降り立った老夫婦(中村嘉葎雄・渡辺美佐子)。

ハートフルな時間が流れます・・・・。

元木克英監督「空飛ぶタイヤ」(松竹、2018年、120分)☆☆☆☆

2022-02-24 10:24:52 | 日本・2000年~


原作は池井戸潤による同名小説です。

走行中にはずれたトラックの前輪。業務上過失致死の事件となりますが、それが整備の不備によるものだったのか、もともと製造に欠陥があったのか、大会社の車両メーカーの組織に中小整備工場の社長が敢然と戦いをいどみます。

父親の後を継ぎ中小運送会社「赤松運送」を経営する赤松徳郎(長瀬智也)。
ある日、自社のトラックがタイヤ脱輪事故を起こし、歩道を連れ立って歩いていた母と子を襲います。母親が死亡(子どもは軽症)、事件となります。

事故原因を整備不良とされ「容疑者」と決め付けられた赤松は、警察から執拗な追及を受け、国土交通省からの捜査が入ります。会社は信用を失い取引先から注文が入らなくなり、親銀行からの融資はとめられ、倒産寸前の危機に追い込まれます。

しかし赤松は、整備が入念に行われていたので、事故原因は整備不良でなく、事故を起こした車両自体に欠陥があったと確信します。類似の事故が全国で多発していましたが、もみ消されていました。

赤松は家族や社員たちのために、トラックの製造販売元である大手自動車会社「ホープ自動車」の組織に戦いを挑みますが・・・。

朝原雄三監督「愛を積む人」(松竹、2015年、125分)☆☆☆★

2022-02-22 23:01:14 | 日本・2000年~


原作はエドワード・ムーニー・Jrの小説「石を積むひと」です。舞台を北海道・美瑛町に再設定しています。

ハートフルなドラマ。それだけに盛り込まれている人間関係は深刻。

小林篤史(佐藤浩市)は工場の経営不振のため事業をたたみ、妻・良子(樋口可南子)と新規まき直しをはかり、東京から美瑛町にやってきました。東京には絶交状態の娘・聡子(北川景子)を残してきました。音信不通です。

良子は心臓病を患っています。余命がわずか。夫の篤史に隠しています。

良子は新居を囲む塀を、石を積んでつくろうと提案。篤史はしぶしぶ承諾します。業者が紹介してくれた見習いの杉本徹(野村周平)の助けを借り、この仕事を続けます。徹はほとんど口をひらきません。

徹には非行にはしった過去がありました。篤史と良子が留守中、悪友の誘いであろうことか小林の家に窃盗に入ります。引き返してきた良子がふたりと暗闇のなかでバッタリ。突き飛ばされて転倒。気を失い脚を捻挫。

犯人はわからずじまい。窃盗を隠し徹は黙々と石積みの仕事を続けます。徹には恋人・上田紗英(杉咲花)がいました。怪我をした良子を介護し、篤史と良子の信頼を得ます。

この後、良子が亡くなり、未婚の紗英が妊娠、徹の窃盗幇助が発覚、篤史と聡子の親子の和解、と展開していきます。亡くなった良子が篤史宛に残した手紙がいろいろなところで出てきて・・・。