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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

成島出監督「草原の椅子」(2013年、139分)☆☆☆★

2022-02-21 16:43:12 | 日本・2000年~


宮本輝による同名小説の映画化です。中年サラリーマンが母親から虐待を受けた子どもの世話をすることになり、人とのつながりや自らの過ちをかえりみ再生するドラマです。

遠間憲太郎(佐藤浩市)は仕事一筋のやり手ビジネスマン。離婚を経験し、娘・弥生(黒木華)と二人で武蔵中野界隈で暮らしています(原作は夙川)。

取引先のカメラ店の店長・富樫重蔵(西村雅彦)の家庭に離婚騒動がもちあがりトラブル。遠間がかけつけ、その後、互いに気心がしれ飲み友達になります。

遠間の心配の種は学生の弥生の様子。変な男とつきあっているかと思いきや、その男の妻(小池栄子)が息子の圭輔を虐待しているのをみて可愛そうに思い洗濯などを手伝っていたのでした。彼女はその子を一時的に家で面倒をみたいと申し出ます。遠間は難色を示しますが、受け入れます。圭輔はほとんど口がきけず、怪獣の縫いぐるみを抱いています。

遠間には気になる女性の存在がありました。陶器を販売している篠原貴志子(吉瀬美智子)です。店に足繁く通い陶芸作品を購入、会話が弾みます。

遠間の友人・鍵山(AKIRA)が遊びにきます。自作の写真集を観てもらいたかったからです。写真集のテーマはパキスタンの風景と人々の暮らし。藤間は写真に感動し、圭輔をつれて富樫と、そして貴志子も連れてパキスタン・フンザへの旅を実現しますが・・・。

成島出監督「グッドバイ~嘘から始まる人生喜劇」(2020年、106分)☆☆☆☆

2022-02-16 23:03:56 | 日本・2000年~


太宰治の遺作「グッドバイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが戯曲化した作品の映画化。

戦後の復興期、幾人もの愛人を抱えた雑誌編集長と金に目がない担ぎ屋の女性による抱腹絶倒の人間喜劇です。大泉洋さんはいつものアジを出しています。小池栄子さんは怪女ぶりを発揮!

文芸雑誌編集長・田島周二(大泉洋)はケチで優柔不断なのに、なぜかモテ男。疎開中の娘・幸子から小学校に入るので会いたいと手紙が届き、身辺整理の決心を固めます。しかし、いい案が出ません。

作家の漆山連行(松重豊)は、周二にアドバイスします。美人の女性に妻になりかわってもらい愛人たちに紹介すれば「清く」別れられる、と。そこで田島が闇屋で知った太っ腹の女性・永井キヌ子(小池栄子)に妻役を依頼します。金さえもらえればOKとキヌ子はこの依頼を引き受け、二人は偽夫婦になります。

花屋で働く戦争未亡人・青木保子(緒川たまき)、挿絵画家・水原ケイ子(橋本愛)、医師・大櫛加代(水川あさみ)と次々に挨拶まわり。その都度、騒動がおこります。

三人目の女性を訪ねる日の朝、妻・静江(木村多江)から田島宛に電報が届き、そこには離縁する、もう仕送りは要らないと記されていました。どうやら漆山が青森に出張したおり、静枝と出来てしまったらしいのです。

筋の説明はこのあたりで止めますが、最後までおかしく哀しいストーリーです。

三島有紀子監督「ぶどうのなみだ)」(2014年、117分)☆☆☆

2022-02-15 09:59:44 | 日本・2000年~


舞台は北海道の空知北部。近くに幾春別川が流れています。

葡萄栽培とワインづくりに執心する兄弟・アオ(大泉洋)とロク(染谷将太)のところにキャンピングカーでやって来たエリカ(安藤裕子)。彼らとエリカのぎこちないながら心温まる物語です。映像が綺麗(全編、北海道ロケ)です。

アオはかつて才能のある指揮者で国際的に活躍しましたが、突発性難聴を患い、音楽の道を断念。北海道の空知で父の遺した葡萄(ピノノワール)栽培に取り組んでいます。ワイン製造も行っていましたが、なかなかいいものが出来ません。小麦づくりをする弟のロクとは一回り年齢が違います。

そこへエリカという不思議な女性が現れます。兄妹の敷地の横で、突然、穴を掘り出します。謎めく彼女は村の人と気さくに交流。アオはエリカの行動を受け入れません。

エリカのそれまでの人生はわけありでした。幼い頃、母親は彼女にンモナイトの化石を渡し、そのまま失踪? どうやらこの過去があるため、アオの農地の近隣で穴を掘りアンモナイトを発掘しているようです。

穴が相当深くなった頃、エリカが突然いなくなります。北海道に会社を持つ母親に会い、お金を借りにでかけたのです。借りたお金でアオとロクにミズナラの木で作った樽を送り、ワインの改良を託しました。アオはいいワインを作るために努力を重ねますが・・・。

佐々部清監督「ツレがうつになりまして」(東映、2011年、121分)☆☆☆★

2022-02-14 11:31:57 | 日本・2000年~


「うつ病」は誰もがかかるかもしれない「心の風邪」。この作品はうつ病を患った夫とその妻の支援の物語です。原作は、細川貂々による同名のコミックエッセー(2006年)です。実話です。 

「ツレ」というのは、妻が夫をそのように呼んでいることに由来しています。

外資系のPC販売会社に務める高崎幹夫(堺雅人)はクレーム係担当、極端に几帳面な性格。妻・晴子(宮崎あおい)は漫画家。飼っているイグアナは、家のなかを徘徊しています。

ある朝、幹夫は真顔で「死にたい」と呟きます。病院で診察を受けると心因性うつ病。ストレスによる「心の風邪」です。全治に半年から1年半。晴子は会社を休んでリラックスすることを勧めますが、真面目一辺倒の幹夫はかえってストレスを感じる様子。

心配になった晴子は、幹夫に「会社を辞めないなら離婚する」と告げます。薬で一時的に元気になることがありますが、主治医は「揺れがあるから油断は禁物」とアドバイス。認知行動療法として日記をつけるよう勧めます。

幹夫はとうとう「退職」。やがて幹夫の失業保険が切れ、晴子の漫画は連載打ち切られ、ます。家計は火の車。晴子は編集部に直参し、仕事をもらいます。編集長の「自分が書きたいことを書く」ようとの示唆で晴子は・・・。

佐々部清監督「六月燈の三姉妹」(製作委員会、2013年、104分)☆☆☆★

2022-02-13 11:34:17 | 日本・2000年~


家族の葛藤をテーマにとりあげる映画作品は多いですが、これもそのひとつ。

舞台は鹿児島にある和菓子店「とら屋」。

シャッター商店街にある家族経営の和菓子店「とら屋」。客足がにぶっているこの店を経営するのは中薗家。この家の三人姉妹が中心人物です。

長女・静江(吉田羊)は出もどり。次女・奈美江(吹石一恵)は東京でイラスト関係の仕事をしていて、税理士事務所を経営する夫・徹(津田寛治)と離婚調停中。三女・栄(徳永えり)は結婚直前に婚約を破棄して実家に戻っています。栄は母・惠子(市毛良枝)と菓子職人の父・眞平(西田聖志郎)の子どもですが、上の二人は恵子と前夫との間に生まれた子です。惠子と眞平は離婚状態ですが、店に菓子職人の眞平の腕が必要なので一緒に暮らしています。家族関係が複雑です。

おりしも商店街のお祭り「六月燈」。店の稼ぎ時なので、東京から奈美江が手伝いにきていますが、離婚問題を抱えています。夫の徹がやって来ました。離婚を考え直して欲しい、というのです。奈美江は頑として拒否。このもめ事の顛末が本作品の要です。

平山秀幸監督「エヴェレスト 神々の山嶺」(東宝、2016年、122分)☆☆☆★★★

2021-10-04 21:09:56 | 日本・2000年~


夢枕獏による同名小説の映画化です。

エヴェレストに最初に登頂したのは、ヒラリーとテンジンです(1953年)。マロリーは1924年に挑戦し遭難で亡くなったという記録があります。この遭難が登頂後だったのか、あるいは登頂前だったのか、物議を醸しました。遺体の側にカメラがみつかりましたがフィルムに登頂の記録はなく、現在は登頂前に遭難と了解されています。本作品はこの話が切掛となって始まります。

主要な舞台はネパール、そして東京。

エヴェレスト登頂を目指した経験(失敗)のあるカメラマン・深町誠(岡田准一)はカトマンズの裏街の登山用具店で、偶然、古いカメラ・コダックのモデルBを手に入れます。もしかすると、かのマロリーが所有していたカメラかもしれません。

深町はそのカメラを店に持ち込んだ男に興味をもちます。孤高の天才クライマー羽生丈二(阿部寛)?

羽生とはいったいどんな男なのか。鬼スラ制覇、北アルプス屏風岩での一緒に登った後輩の死、グランドジョラスでの遭難と奇跡の生還。
深町は羽生がビカール・サン(毒蛇)と改名し、ネパールに雲隠れしていることをつきとめます。羽生が目指していたのは、神々にもっとも近い秘境、8848メートルのエヴェレスト登攀、それも屏風のようにそびえ立つ南西壁、冬季無酸素、単独登攀でした。

壮絶な羽生の頂上アタック、登攀、そしてそれをカメラで撮る深町の執念が後半の展開です。

森義隆監督「聖の青春」(配給・KADOKAWA、2016年、124分)☆☆☆★

2021-02-14 23:38:03 | 日本・2000年~


1998年に29歳の若さで亡くなった棋士、村山聖(むらやまさとし)の生涯を描いた作品です。村山聖を演じたのは松山ケンイチ、羽生善治を演じたのは東出昌大です。右下の画像は、在りし日の村山九段です。

大崎善生著「聖の青春」の映画化です。わたしはこの原作を読みました。原作も参考にしながら、この映画を紹介します。

聖は5歳の時、原因不明で発熱。ネフローゼと診断されます。幼くして病床での生活が始まります。父が息子にすすめた将棋に開眼。

13歳で家族の反対を押し切り、森信雄7段(当時4段)に弟子入り、紆余曲折があって奨励会入りします。

奨励会在籍2年11ヶ月で4段、17歳。彗星のごとく現れた「怪童」、大型新人として、同僚の棋士と競いました。平成7年、B1級で田丸戦をねじふせて勝利、そしてA級入り、25歳。

しかし、聖は膀胱癌に侵され、手術後肝臓に転移、ついに29歳の若さで、A級在籍のまま他界しました。病床での最期のウワ言は、「2七銀」。
日本将棋連盟は、彼の功績を讃え、9段位を追贈しました。

通算成績は356勝201敗(うち12局が不戦敗)、勝率・653(不戦敗を除く)。羽生善治とは6勝6敗。

若松節郎監督「柘榴坂の仇討ち」(配給・松竹、2014年、119分)☆☆☆☆

2021-01-28 10:56:57 | 日本・2000年~


浅田次郎による同名の小説の映画化です。
 
安政7年3月3日、雪が降りしきる朝、開国を唱える井伊直弼大老は、尊王攘夷を掲げる水戸藩の脱藩浪士15人と薩摩脱藩浪士1名人に暗殺されました。世に言う桜田騒動です。
 
大老・井伊直弼(中村吉衛門)を護衛する重役を担っていた志村金吾(中井貴一)はその責任をとらされますが、切腹は許されず暗殺に加わった浪士の誰でもひとりを仇討ちを命ぜられます。
 
主君を敬愛する金吾は、13年の間、刺客を探し続けます。妻セツ(広末涼子)は酌婦となり、金吾を陰で支え続けます。
 
時代は明治に入り、維新、帯刀禁止令、廃藩置県によって藩がつぶれ、多くの武士が浪人となりました。世の中が動転し、人々は価値観、考え方の転換が迫られていました。しかし、人間の生活感、価値観はそんなにたやすく変えられるものではありません。金吾は髷もおとさず、武士の心、忠義の精神を持ち続けました。
時がたち、金吾は車夫に身をやつした直吉こと佐橋十兵衛 (阿部寛)に出会います。それは奇しくも仇討ち禁止令が出たその日のことでした。
 

東伸児監督「しゃぼん玉」(製作委員会、2016年、104分)

2021-01-04 12:11:21 | 日本・2000年~


乃南アサさん原作です。犯罪に手を染めた青年が、宮崎県の片田舎で自然体で生きる人々の交流のなかで、人生をやりなおす決意を固めます。(市原悦子さんの最後の出演映画です)

親に見捨てられ、女性や老人をねらった悪さを繰り返してきた伊豆見翔斗(林遣都さん)が、逃亡途中で迷い込んだのは宮崎県の山奥村・椎葉村です。彼がここに来たのは逃走途中、オートバイの転倒事故で大けがをしていた老婆(スマ:市原悦子さん)を助け、椎葉村の家に連れ帰ったからです。

翔斗はここで居候の生活を始めます。周囲のものは彼をスマの孫と勘違いします。スマは翔斗が犯罪者とは知らず、おしみない愛情を注ぎます。翔斗は居心地のいい生活で、だらだらとして毎日を送っていましたが、シゲ爺(綿引克彦さん)に連れられて山仕事の手ほどきを受け、祭りの準備を手伝うようになります。

祭りの準備の最中、翔斗は美知(藤井美奈さん)という女性と知り合います。翔斗は彼女と親しくなりますが、彼女が以前に都会で強盗にあい、以来落ち込んだ日々をおくってきたことを知ります。それはとりもなおさず、自分が犯した罪を自覚することでした。
 

前田哲監督「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018年、120分)☆☆☆☆

2020-12-06 11:40:17 | 日本・2000年~


舞台は1994年の札幌市。

昨夜、日本テレビで放映されていました。渡辺一史によるノンフィクション作品(2003年)の映画化です。いい映画でした。

幼くして進行性筋ジストロフィの難病を患いながら、ボランティアの助けをかり、強く明るく生きた鹿野靖明さん(2002年に42歳で亡くなりました)の闘病生活と仲間(ボランティア)との交流を描いた作品です。

鹿野さんは体を動かせないうえ、人工呼吸器の使用で痰の吸引を24時間必要としました。それを支えたのは、多くのボランティアたちでした。
タイトルの「こんな夜更けにバナナかよ」は、鹿野さんに夜更けにバナナを買ってきてくれ、と頼まれたあるボランティアの胸中をよぎった想いです。患者はひとりでは生きていけないので、欲求をみたすには人の手をかりなければなりません。しかし、それは時に身勝手、わがまま、になることもあります。

患者は他人の手助けが不可欠ですので、何でも人に頼む「勇気」が必要です。そして患者もボランティアの手助けを思いやる気持ちが大事です。
鹿野さんを演じたのは、大泉洋さん(大泉さんはわたしの前任校・北海学園大学出身です)。ボランティアには北海道大学医学部の学生・田中久(三浦春馬)、その彼女・安堂美咲(高畑充希)他多数です。靖明さんの母親役はジャズ歌手の綾戸智恵さん、です。他に佐藤浩市さん、原田美枝子さんの重鎮。

この7月に亡くなった三浦春馬さんが好演です。合掌。

北海道大学中央ローン、クラーク会館、勤医協西区病院などが映し出されていました。

中野量太監督「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016年、125分)☆☆☆★

2020-12-04 14:37:36 | 日本・2000年~


この作品はガンで余命2年の女性が、破綻しそうな家族関係を修復しようとし、絆を再構築する家族ドラマです。深刻なテーマをあつかいながら、全編に堅苦しさがないのは俳優陣の人間くさい感情、振る舞いが素直に出ているからです。

銭湯「幸の湯」を経営していた双葉(宮沢りえ)は、ガンを患い、全身に遠隔転移していました。

安澄(杉咲花)という女の子がひとりいます。クラスで苛めにあっています。双葉の悩みの種です。

夫の一浩(オダギリジョー)は、家を出ていってしまっていません。その一浩が娘(?)を連れて「幸の湯」に戻ってきます。

家族関係は複雑です。双葉自身は再婚、安澄は一浩の前の妻の子供でしたが、長いことそのことを本人に秘密にしていました。余命が短いと悟った双葉は、子供たちを連れて小旅行を計画し、安澄に本当の母親に会わせ、この秘密を安澄に明かします。

この家族関係の構築はどのように????

この作品のなかに、タカアシカニという珍しいカニ(沼津のあたりの深海で獲れます)が話題になるシーンが二度あります。世界最大のカニです。

三上智恵監督「標的の村」(2013年)を観ました。☆☆☆☆

2019-11-15 21:44:29 | 日本・2000年~
沖縄への新型輸送機「オスプレイ」配備に反対する闘いを描いた映画です。「オスプレイ」は、2012年9月、多くの国民の懸念と反対をよそに、まず岩国へ、そこから沖縄に配備されました。しかし、とくに9月29日の強行配備前夜、反対する沖縄の人々はアメリカ軍普天間基地のいくつかあるゲートの前で身を挺して完全封鎖しました。この闘いの全貌を、地元テレビ局の報道関係者が記録していました。

強制排除にあたる警察官が非道な撤去を行うのですが、米軍統治下の苦しみを知る老人、東村・高江で日々米軍の演習で生活を脅かされている家族、彼らを支援する多くの人びとは連帯して腕を組み、断固たる抵抗を示したのです。画面には次々と理不尽なシーンが映ります。

権力の暴挙と横暴がまかりとおる沖縄。そこで何が行われているかは、ほとんど国民に知らされていません。この映画は、それを白日のもとにさらし、沖縄の真実を訴えています。