いせ九条の会

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新学習要領は国家のための教育の傾向が強く出た/山崎孝

2008-04-03 | ご投稿
【君が代「歌えるよう指導」 愛国心を強調し修正 文科相が新学習要領告示】(2008年3月28日付中日新聞)

渡海紀三朗文部科学相は3月28日付で、新しい小中学校の学習指導要領を告示した。2月15日公表の改定案の「総則」に道徳教育の目標として「我が国と郷土を愛し」との文言を加え、小学校音楽で君が代を「歌えるよう指導する」と特記するなど愛国心教育をより強調する修正を加えた。

文科省は「パブリックコメント(意見公募)のほか改正教育基本法の趣旨や国会審議、与党とのやりとりを踏まえた修正。特に重要な修正部分はない」と説明。しかし、長期にわたる中教審の公開審議を踏まえた改定案公表の後になって、国民の間で賛否が分かれる愛国心教育に関する修正を多く加えた不透明な手続きは批判を呼びそうだ。

指導要領改定で愛国心や日の丸・君が代の扱いをめぐる中教審の議論は低調だった。文科省が答申を基に作成した改定案も、すべての教科に共通する総則は「伝統と文化を継承し、発展させ」と控えめな表現とし、「国を愛し」といった文言は現行通り「道徳」の項目に盛り込んでいた。

しかし、新指導要領は総則に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛し」と明記した。

小学校音楽での君が代の取り扱いも、改定案は現行指導要領を踏襲し「いずれの学年においても指導」としていたが、新指導要領は「いずれの学年においても歌えるよう指導」と修正。事実上、子どもたちに「歌わせる」ことに力点を置いた。

文科省は「現行指導要領の解説書の記述に合わせた。実質的な変更はなく、強制の意図もない」としているが、法的拘束力を持つとされる指導要領の本文に記載されたことで、学校現場への影響は大きいとみられる。

新指導要領は小学校は2011年度、中学校は12年度に完全実施するが、09年度から移行措置期間に入る。同時に告示した幼稚園教育要領は09年度から実施する。

【学習指導要領】 小中高校や特別支援学校などで、子どもに教えなければならない教科や学習内容、授業時間数など教育課程の最低基準。国公私立のすべての学校を対象とし、文部科学相が告示する。1947年に試案が示されて以降、約10年ごとに改定。89年の改定で入学式や卒業式での日の丸掲揚や君が代斉唱の指導を義務付けた。現行指導要領は98-99年に改定。詰め込み教育への反省から「ゆとり教育」を掲げて「総合的な学習の時間」を新設、授業時間数や学習内容を大幅に削減するなどしたが、学力低下批判を招き、今回の授業時間数増加の見直しにつながった。(以上)

告示された学習指導要領は道徳教育の目標に「我が国と郷土を愛し」や、小学校の音楽教育に君が代を歌えるよう指導することが盛られています。

中学社会では「我が国の安全と防衛」に加えて「国際貢献について考えさせる」と自衛隊の海外活動を想定した文言を入れました。

そして、総則に「これらに掲げる目標を達成するよう教育を行う」という言葉を入れて教師に指導要領に従わせる強い縛りをかけました。

改訂学習指導要領には国民的な合意が得られていない事柄が盛り込まれています。国旗・国歌の強制に教師は抵抗し、強制に反対の国民もいます。個人の思想信条の自由を侵すとの判決もあります。自衛隊を用いた海外活動のあり方では、イラクやインド洋派遣には反対の声が多くありました。

私は道徳教育の目標の国と郷土を愛することが道徳とどう関係するのかと思います。道徳は本来的には個人と個人の関係を律し、尊重し合うこと、調和を図るための道標であります。改訂学習指導要領は個人のための教育というより、国家のための教育いう傾向が強く出ていると思います。