いせ九条の会

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アフガンニスタンにおけるテロとの戦いに対する仏の世論/山崎孝

2008-04-16 | ご投稿
先日のブログでアフガニスタンの国際治安支援部隊のことに触れましたが、3月にサルコジ仏大統領は国際治安支援部隊への増派を決定しました。これについてのフランス国民の反応を紹介します。

サルコジ仏大統領は、アフガン増派を3月の英国訪問時に発表しました。そして北大西洋条約機構(NATO)軍事機構への来年以降の完全復帰の可能性を示唆しました。

 フランス国内では「NATO重視へと変化した」「米国へのすり寄り」など外交・安保政策の転換だとの指摘や、「(アフガンにおける)泥沼化への危険」を懸念する声が上がっています。

 仏国際関係戦略研究所のパクザド客員研究員は、「本来なら仏議会と国民にまず説明すべきだった」のにそれをしなかったと指摘。その理由は(1)仏外交・安保政策のNATO重視への転換を強調すること(2)米英が求める増派を仏が受け入れることでこの要請を断ってきたドイツにメッセージを送る―の二点にあったと説明します。

 同氏はまた、国際治安支援部隊(ISAF)と米軍主導の多国籍軍を合わせて約六万人の軍隊が活動しているにもかかわらず、治安が改善していない現状で、フランスが七百人程度の兵力を増強したとしても、治安が大きく改善する見込みはないと指摘。「かえってアフガン軍養成などに貢献している仏軍のイメージを悪化させる恐れがある」といいます。

 外相時代にイラク戦争に反対したドビルパン元首相も、「軍隊をほんの少しばかり増強することが、アフガンを困難な状況から救い出す最善の方法ではない。反対に泥沼化の危険性が非常に高い」と警告しました。

 NATOと一定の距離を保つことは、一九六六年のドゴール大統領の統合軍事機構離脱決定以来、仏外交の独自性を示す象徴の一つでした。

 サルコジ氏は、欧州防衛能力の強化を軍事機構への復帰条件としました。ブッシュ米大統領はNATO首脳会議で、欧州がNATOと対立しない補完的な軍事能力を持つことを歓迎すると述べました。

 その裏には、サルコジ大統領がアフガン増派を、フランスが推進してきた欧州防衛実現の「取引材料にした」(パクザド氏)可能性もあります。

 ドビルパン氏は、NATO完全復帰は「有効でも、フランスの国益に沿うものでもなく、かえって危険だ」と述べ、「軍事ブロック対立の論理」に戻ることを懸念しています。

 サルコジ氏の英国訪問直後の世論調査では、アフガン増派には仏国民の68%が反対、賛成はわずか15%です。

 フランスの組織「平和運動」は声明で、「アフガン問題の軍事的解決はあり得ない。アフガン人にとって、この七年で飢え、貧困、汚職、麻薬取引は増大し、状況は悪化している。軍隊を引き揚げ、真の国際的連帯を対置すべきだ」と強調しています。(2008年4月15日付「しんぶん赤旗」の情報)