いせ九条の会

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国際社会や国連が求める国際平和協力とは/山崎孝

2008-04-28 | ご投稿
はじめに 昨日「いせ九条の会」の平和憲法賛同署名に参加しました。その活動の中で、高齢の女性は、私は目が悪いので署名はできない。家の者は留守をしていていない。しかし、憲法9条は変えてはならない、ときっぱりと述べました。日本が戦争をした時代を生き抜いてきた方の明確な意思表示を語感から私は感じました。中年の男性は署名に来ることはチラシで知っていた、話しをほとんど説明しなくても署名しました。

30代の男性は自衛隊のイラク派遣は憲法違反とした名古屋高裁判決を、あれは裁判所の考えで自分は違反とは思わない。憲法を変えても戦争にはならない、と話しました」。このように三権分立を平面的に捉え、違憲審査権を持つ裁判所の重要な位置を理解しない人や自衛隊が海外に出かけて武力行使(戦争)を可能にする憲法の目的が理解できていない人もいます。このような人たちに改憲の目的を理解して貰う宣伝活動がとても必要だと感じました。

【アフリカの二つの顔 週のはじめに考える】(2008年4月27日付中日新聞社説)

アフリカには二つの顔があります。古くからの「貧困」と新たな「成長」です。成長への転換を目指す各国の努力へ日本独自の後押しができませんか。

アフリカ西海岸のコートジボワールは、チョコレートの原料、カカオ豆の世界最大の輸出国です。

同国の密林の村を訪れたカナダ人ジャーナリストが「チョコレートの真実」(キャロル・オフ著、英治出版)の中でカカオ農園で出会った子供たちの姿を描いています。彼らは自分たちが育てた豆から何が作られるのか知りません。チョコレートが何であるのかも。

チョコを知らない子供 「私の国には学校へ向かいながらチョコレートをかじる子供がいて、ここには学校も行けず、生きるために働かなければならない子供がいる」

コートジボワールのカカオ生産はマリなど近隣諸国からの移民労働に支えられてきました。ところが価格低迷で賃金さえ払えなくなり、復活したのが子供の人身売買と奴隷労働だったといいます。

カカオ産業を牛耳っているのは巨大食品企業と腐敗した政府、武装勢力、農園経営者であり、「今も子供たちは狙われ、酷使されている」と著者は告発します。

アフリカは、まだまだ「貧困の大陸」なのでしょうか。けさ(二十七日)の本紙サンデー版の大図解「変わるアフリカ」を見てください。世界で最も貧しく、重い借金を背負っていると世界銀行などが認定した重債務貧困国(二〇〇七年)は、五十三カ国のうち三十三カ国に及んでいます。

チョコレートを作る側と、食べる側との間の深い裂け目。日本との間にもある、よく似た溝の広がりを実感したことがあります。

飢えと内戦で荒廃したソマリアでの取材です。一九九二年暮れ、無政府状態の国に食料と秩序をもたらそうと、米軍など多国籍軍が希望回復作戦を展開しました。

日本の姿が見えぬ援助 痛感したのは、日本という国の「遠さ」「軽さ」です。日本はよく知っています。でもそれは、街を走る車やカメラやパソコンといった日本製品なのです。

よく「中国人」に間違えられました。「いや、日本人だ」と答えると、驚いた表情で言いました。

「立派な車や製品をつくる日本人はアメリカ人とそっくりだと思っていたよ」

日本人を実際に見たことがないのです。当時、ソマリアに対する日本の援助は世界トップ級と聞きました。国連機関などによる食料や医療援助を資金面で支えたのですが、日本の姿は隠れています。

自国の国旗を掲げて支援活動に汗を流す北欧などの非政府組織(NGO)とは対照的でした。カネやモノだけではなく、ヒトの貢献も重要なのです。

ソマリアは無政府状態が続き、イスラム過激派たちのテロの温床にもなっています。地域紛争、飢餓、難民、エイズ、水不足。「貧困」がかつての「暗黒大陸」をもたらしたかのようです。

グローバル化、市場主義経済の陰の部分がアフリカに集中したのです。最近のコメや小麦など穀物価格の急騰も、暴動の多発など深刻な打撃を与え始めています。

一方、時の経過とともにアフリカに明るい変化も生まれました。「成長」です。多くの国が年5%を超す経済成長を遂げました。石油・天然ガス、鉱物資源に恵まれた国が目立ちますが、地域の平和と安定こそが成長に不可欠の条件なのです。

来月、横浜市で開かれる第四回アフリカ開発会議(TICAD)と七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を世界は注目しています。議長国日本のアフリカ支援策に期待しているからです。

かつて十年連続世界一を誇った政府開発援助(ODA)は財政難を理由に毎年削減され、昨年は五位に転落しました。でも財政事情の厳しさは同じでも欧米諸国はアフリカ支援を拡大しています。

21世紀の外交の試金石 二〇〇一年一月に日本の首相として初めてアフリカを公式訪問した森喜朗氏は「アフリカは二十一世紀日本外交の試金石」であり、「アフリカの平和なくして世界の平和なし」と語りました。

政府としてその決意は今でも変わりないはずです。具体的な貢献策は、自給自足するための農業技術の指導、学校建設など教育、人材育成の手助け、民間投資を促進する道路や橋、水道の整備などたくさんあります。地球規模の気象変動対策と成長の両立という難題にも取り組まねばなりません。

アフリカの全人口のほぼ半数が十四歳未満の子供たちです。明日の地域づくりを担う彼らに、チョコレートの味はもちろんのこと、日本の国や日本人の顔も覚えてほしいものです。(以上)

2007年7月2日付中日新聞 国連は発展途上国の貧困や飢餓対策のための国際的数値目標、ミレニアム開発目標(MDGs)の進ちょく状況に関する二〇〇七年版の報告書を発表した。目標達成に重要な先進国の政府開発援助(ODA)が二〇〇六年に前年より減少するなど「資金不足が深刻だ」と指摘している。

潘基文事務総長は「先進国は過去の約束を果たしておらず、ODAの大幅増がみられない現状ではMDGsの達成は困難だ」としており、ODAの削減を続ける日本には耳の痛い内容となった。

報告書によると、ODA総額は〇五年が千六十八億ドルだったのに対し、〇六年は千三十九億ドルにとどまった。ODA総額の前年割れは一九九七年以来となる。

総額は先進国の国民総所得の0・3%で、国民総所得の0・7%を援助に向けるとの公約を果たしたのはデンマーク、ノルウェー、オランダなど五カ国だけだった。

報告書は「〇五年の主要国首脳会議(グレンイーグルズ・サミット)で一〇年までにアフリカ援助を倍増させることなどを誓った先進国は、その約束を果たしていない」と指摘。「MDGsの達成は先進国が援助の約束を果たすかどうかにかかっている」と援助の増額を訴えた。

これまでの達成状況では、世界人口のうち一日一ドル未満の収入で暮らす人の比率が一九九〇年の32%から〇四年に19%に低下するなど、貧困解消を中心に一定の効果があった。ただその一方で、サハラ砂漠以南のアフリカでの貧困人口が依然多く、子供の死亡率が高いなど「進ちょく状況にばらつきが大きい」といい、潘事務総長も「どれだけ多くの課題が残っているかも明らかになった」としている。

【ミレニアム開発目標(MDGs)】 発展途上国の貧困解消や持続可能な開発のため、国際社会が2015年までの実現を公約した目標。2000年の国連ミレニアムサミットで採択された宣言と1990年代の主要な国際会議で約束された国際開発目標をまとめた。極度の貧困と飢餓の廃絶、普遍的な初等教育の達成、乳幼児死亡率の削減など八つの主目標があり、「5歳未満の子供の死亡率を3分の1に減らす」「飢餓に苦しむ人口の比率を半減させる」など、18の具体的目標が盛り込まれている。(以上)

★コメント 中日新聞社の社説は「21世紀の外交の試金石」という問題を提起しています。また、2007年7月2日付中日新聞は、国連の報告書は「ODAの削減を続ける日本には耳の痛い内容となった」と述べています。

「21世紀の外交の試金石」には、日本が外国の軍隊を助けるために、海外での武力行使をしなければならないという観点や必要性は入っていません。私たちが必要性があると思うのは、憲法前文で謳われている精神です。「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏を免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」。

自民、公明、民主3党の超党派議員の結集組織「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」が、自衛隊などの「国際平和協力活動のあり方をめぐる包括的な議論を深める」として掲げた (1)日米(軍事)同盟をより効果的なものとする集団的自衛権の議論はじめ領域警備、秘密保護など防衛法制の見直し(2)自衛隊の海外派兵を迅速に展開する一般法(恒久法)の制定(3)国家安全保障会議(日本版NSC)の創設――の三つの柱は、新世紀の世界の課題に対応するものとは言えません。

国際平和協力活動のあり方とは、自衛隊が海外に武力行使に出かけることではなく、日本人が海外で地道な人道・復興支援を行なうことです。それを政府が奨励し援助をすることです。

憲法前文の精神の確実な実践こそ21世紀の世界が抱えている問題に対する最大の貢献です。

【参考】ミレニアム開発目標にある「1日1ドル未満で生活する人を半減させる」のに必要なお金は6兆2千億~7兆1千億と見積もられています。世界の軍事費は116兆円(2005年)です。栄養失調の子どもを半減させるのに必要なお金は3兆400億円と見積もられています。日本の軍事費の4兆8千億(2007年)です。(数字は「NHK地球データマップ」を参考)