いせ九条の会

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高遠莱穂子さんの憲法理念の実践/山崎孝

2008-04-26 | ご投稿
【武装勢力「なぜ軍隊を送る」/現地の矛先日本に】(2008年4月26日付朝日新聞のシリーズ記事「違憲 イラク派遣」より)

 陸上自衛隊がイラク南部のサマワに派遣された04年1月ごろ、高遠莱穂子さん(38)はイラク人たちから、何度もこう言われた。

 「お前は日本政府のスパイだろう」

 ストリートチルドレンの自立に向けた活動で、3度目のイラク滞在の時だった。イラクは伝統的に親日感情が強い。だが、そんな様子はもううかがえなくなっていた。

 武装勢力に拘束されたのは、それから間もない04年4月のことだ。

 命が奪われ続けるイラクを何とかしなければ-。それは、地球人の一人として、という気持ちだった。だが、拘束事件は高遠さんに、いや応なしに「日本人」である現実を突きつけた。

   ■

 拘束された場所は、ヨルダンからバグダッドに向かう途中のファルージヤ。米軍の徹底した「掃討作戦」で多くの住民が犠牲になっていた。反米感情は強烈だった。拉致した男は怒鳴り上げた。「日本人、よくない」

 武装勢力は、高速さんたちを解放する条件として「自衛隊の撤退」を要求した。「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、わかるわけない」(当時の小泉首相)と発言して実行した国策の、代償としての拘束だった。

 「なぜ軍隊を送るんだ」「なぜ米国の言いなりなんだ」「平和憲法があるのになぜ」。拘束されていた時に武装勢力の男たちに言われ、その後もしばしばイラク人から投げかけられる言葉だ。日本人として生きるとは、どういうことなんだろう。この3、4年、考え続けてきた。



 5月4日に千葉市の幕張メッセで開幕する「9条世界会議」の呼びかけ人に、昨年から名を連ねた。

 紛争を解決する手段としては、戦争をしない、武力行使をしない。そう定めた憲法9条の下で非暴力を貫く。そして「対話による紛争解決」を目指し、自分ができる支援を行う。それが「9条の実践」だと思う。

 今もファルージヤやラマデイで避難民の支援や学校再建などに取り組む。難民は400万人以上。ヒーターや毛布などを送っても焼け石に水であることはわかっている。でも何もやらなければ、どこまでいってもゼロはゼロだ。

 航空自衛隊のイラクでの活動を「違憲」とした名古屋高裁の判決。国民は空白が多国籍軍を運んでいる事実をどこまで知っていただろう。判決で知った人が多いのではないか。そんな気がする。

 しかしそのイラクでは、少し前まで支援を「日本から」と言えなかった。それだけ恨みの矛先が向けられている。その現実をまずは知るべきだ、と話す。(以上)

★コメント 高遠莱穂子さんは、ストリートチルドレンの自立に向けた活動で、3度目のイラク滞在の時、拉致に遭いました。日本政府は人を犠牲にするイラク戦争を支持しておきながら、人道支援と称して自衛隊をイラクに派遣し、この政策により伝統的に親日感情が強かったイラクの人たちから敵意をもたれてしまいました。その事件の責任はイラク人の親日感情から逆に敵意を持たれる政策を実行した日本政府に責任はなく、拉致された人の自己責任とされてしまいました。

現在、チベット人の人権を守れという声が日本人から出されています。他国の人の人権に注意を払うことは大切なことです。それと同時に、日本が関わって起きた歴史的な非人道的事件、そして何よりも現在の日本政府の政策が関与している非人道的な出来事にも関心を持つようにすることが大切だと思います。この政策には私たちにも日本人として責任があると思います。

名古屋高裁は航空自衛隊の活動は、武力と一体化した活動であると認定した判決の中で《米軍を中心とする多国籍軍はファルージャ、バクダット等の都市で多数の兵員を動員して武装勢力の掃討作戦等を繰り返している。その結果、双方に多数の死者が出るのみならず、子どもたちを含む民間人を多数死傷させ、重大かつ深刻を生じさせている》と述べています。イラクの都市で多数の兵員を動員するためには兵士の輸送は欠かせません。日本政府の政策はこの兵士の輸送を担っています。