いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
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日中友好に命をかけた 岡崎嘉平太氏/山崎孝

2007-03-21 | ご投稿
私はNHKのテレビ番組「命をかけた日中友好 岡崎嘉平太」を見ました。この番組に関連して述べます。番組案内は次のように述べています。

1972年に日中で国交が正常化する時、周恩来が「わが国では水を飲む時には井戸を掘った人を忘れない」と謝意を伝えた民間人、岡崎嘉平太。隣国中国との国交断絶状態を憂い、貿易という場を利用した交流を発案し、国交樹立へとつなげた“陰の立役者”である。

戦後の日本は台湾政府と国交を持ち、共産主義・中国に対してアレルギーがあった。その中で岡崎は、アカ、反体制財界人という批判を浴びながらも「相手を知ること」「相手の立場に立つこと」を信条に日中のパイプ作りに奔走した。特に周恩来とは、18回におよぶ会談を通じてアジアの安定と共存を語り合い、信頼と友情を深めていく。

国交正常化の後は日中青年研修協会を設立、留学や研修を通した“人の石垣”を築きあげることに情熱を傾けた。訪中100回、「信は縦糸、愛は横糸」と唱え続けた岡崎は、現在も中国で最も尊敬されている日本人の一人である。「日中の不幸な歴史は、数千年の交流の中でわずか数十年。これから子々孫々の未来があるのです」

番組では、日中の懸け橋として生涯、走り続けた岡崎の姿を追い、相互不信が心配される今、その遺志がどう受け継がれているのかを描く。(以上)

「貿易という場を利用した交流を発案」とは、日中が国交のない中で中国政府が保証した中国の寥承志事務所と高崎達之助事務所が協定を結び、日中の貿易と人的交流の促進を図ったことを指します。中国の政府要人とも話し合う窓口の役目も果たします。この両国の貿易をLT貿易とか覚書貿易と言っています。岡崎嘉平太氏は外務省にこの覚書事務所に人材の派遣を頼みましたが断られ、通産省と何べんも交渉して人を派遣してもらいました。

1966年に羽田沖墜落事故、松山沖墜落事故と航空事故が相次ぎ、政財界の一部から「社長が日中問題に首を突っ込んで、社業に専念しないから安全対策が疎かになるのだ」と当てこすりめいた批判を受けるようになります。経団連会長石坂泰三氏からも辞任勧告を受けるに至り、翌1967年社長を辞任します。

岡崎嘉平太氏が、社長に就任した頃の全日空は名前こそ壮大ではあるが、実態は地方零細航空会社の寄せ集めで会社存続すら微妙な状態であった。岡崎は会社を一つにまとめつつ、極東航空や藤田航空を合併し規模を拡大させ、運輸省とたびたび衝突しながらも国内線航空会社としての地位を確立させています。

全日空社長を辞任するときに、「全日空の経営は自分でなくともできるが、日中問題は国家の将来にかかわる問題であり、自分に代わるものがいない」と語っています。歴史を見据えて現時点で何が大切なのかを教えてくれる言葉です。

番組が「命をかけた」といったのは、安倍晋三氏の祖父と兄弟であった佐藤栄作氏が、台湾国民党政府と手を結び反中国政策を推し進める中で、右翼たちが岡崎嘉平太氏を国賊と罵り、自宅に脅迫電話を頻繁にかけてきて、警察官が自宅を警護するようにもなりました。周恩来は岡崎嘉平太の長男彬氏に「友情のために自分の生死をかけるような人を本当に信用する」と語ったといわれます。

1972年9月、周恩来首相が「わが国では水を飲む時には井戸を掘った人を忘れない」の言葉は、田中首相と周恩来首相が日中国交回復の調印式をする2週間前に、岡崎嘉平太氏が中国に訪れないことを知り、周恩来首相は急いで岡崎嘉平太氏を訪中させるように日本側に頼み、調印式より前に周恩来首相が岡崎嘉平太氏ら国交回復に尽力した日本人を歓迎する席で述べた言葉です。「わが国では水を飲む時には井戸を掘った人を忘れない、という諺があります。まもなく田中総理が来られ日中は国交正常化をしますが、田中総理が来られたから国交を回復するのではありません。長い間困難な時期に日中友好に努力をされた方々があったから今日正常化が出来るのです。岡崎先生、松本先生、あなた方もその一人です」

信義を重んじる中国人の言葉です。岡崎嘉平太氏も「刎頚の交わり」だと思っていました。

岡崎嘉平太氏がよく述べていた「信は縦糸、愛は横糸」の言葉は美しい人の世を築こうとする言葉で、お互いを信頼しあい、愛情をもって交際することをいいます。この言葉は一般的な人間関係はいうに及ばす、特に外国との交際で大切にしなければならないと岡崎嘉平太氏は思っていました。この心こそ「美しい国」をつくる源泉だと思います。けっしてひとりよがりな民族の誇りを誇示することではありません。

1971年、国連における中国の代表権が台湾国民政府から中華人民共和国政府に変わります。ニクソン米政権はベトナム戦争の泥沼化やドル危機に直面して、アジアに対する過剰介入を避ける方針を打ち出し、そのためには中国との和解が必要になると考えます。1971年7月、キッシンジャー大統領特別補佐官を訪中させ、ついで1972年2月にニクソン大統領が訪中して米中の国交正常方向への足がかりを得ました。日本政府は米国に出し抜かれた格好になりました。

現在、米国はイラク戦争の泥沼化に苦しみ、中東にはイランも含めて大きな注意を払わなくなり、余力がなくなりアジアに対しては対話路線を取り始めました。そのような状況のもとで米朝国交正常化の気配すら窺われます。日本も米国に出し抜かれないようにすべきだと思います。

周恩来首相が岡崎嘉平太氏らに述べた「日清戦争以来、日本は我が国を侵略し、人民を苦しめてきた。我々は深い恨みがある。しかし、中国と日本の間には2千年に亘る友好の歴史がある。戦争の歴史はわずか数十年に過ぎません。我々は日本に恨みを持っていますが、忘れようと努力しています。これからは日中が力を合わせて、アジアを良くして行きましょう」の言葉は、正に歴史の大局を見据えた言葉だと思います。この言葉を日本の政治指導者にかみしめてほしいと思います。中国の人たちにかつて与えた恨みを思い起こすような言動はしてはいけないと思います。これも日本人が大切にする「信義」の一つだと思います。

周恩来首相は、日本には中国人民を苦しめた日本軍は存在しない。戦争の賠償を求めれば日本人を苦しめることになると考えて、国交正常化に当たり戦時賠償金を請求しないと語っています。この言葉も日本人は留意しなければならないと思います。自民党新憲法草案では「自衛軍」という軍隊を持とうとしています。

イラク戦争開始から4年を経て/山崎孝

2007-03-20 | ご投稿
【強まる米軍撤退要求 イラク開戦から4年】(3月19日付中日新聞ニュース)

【ワシントン19日共同】ブッシュ米大統領が、国際社会の強い反対を押し切りイラク開戦を強行してから20日(イラク時間)で4年。宗派対立の激化でイラクが内戦状態に陥る中、3200人を超える米兵の死者を前に米国民の政権不信はピークに達し、米軍撤退要求が強まっている。ともに開戦に踏み切った盟友ブレア英首相の英軍一部撤退表明などイラクの安定や復興に協力する「有志連合」にもほころびが見られ、国内外での孤立化が深まっている。

残り任期が2年を切った大統領は「勝利なき撤退」を強く否定、3万人近い増派に最後の望みをかけるが、イラク安定化への道筋は見えていない。

イラク戦争を最大の争点にした昨年11月の中間選挙では、野党民主党が勝利し、議会多数派を奪還した。国民から不信任を突き付けられた大統領は、ネオコン(新保守主義)と歩調を合わせて戦争を主導した強硬派のラムズフェルド国防長官を解任。これをきっかけに政策が軟化の方向を見せ、今月10日には、イラク安定化国際会議で米代表が敵対するイラン、シリアと同席した。

【イラク戦争やめろ 国防総省へデモ行進】(3月18日付中日新聞ニュース)

【ワシントン18日共同】2003年3月のイラク戦争開始から丸4年を前に、米軍の撤退を求める大規模な反戦抗議行動が17日、首都ワシントン周辺で行われた。参加者はベトナム戦争の戦没者記念碑付近から郊外の国防総省前までデモ行進し「戦争をやめろ」などとブッシュ政権批判を展開。AP通信によると、1万-2万人が参加した。

APによると、抗議行動は同日、ロサンゼルスなど全米各地であった。また、スペインのマドリードで数万人規模の反戦デモが行われたのをはじめ、イラク時間20日の開戦4年を控え、世界各地で米国のイラク政策に反対の声が上がった。大きな混乱はなかった。

ワシントンの反戦デモでは「ストップ・イラク戦争」「大統領に弾劾を」などと書かれたプラカードを掲げ、ブッシュ大統領に仮装した参加者らが行進。曇り空で冷え込む中、ポトマック川を渡りワシントン郊外の国防総省前で集会を開いた。

【イラクでの空自輸送活動/7、8割が多国籍軍支援】(3月13日付「しんぶん赤旗」ニュース)

航空自衛隊がイラクで実施している輸送活動のうち、多国籍軍への支援を目的にしたものが七、八割に達することが、防衛省の国会への報告で分かりました。これまで政府は、空自のイラク派兵継続を正当化するため国連支援を強調していましたが、実態は米軍を中核とする多国籍軍への支援が大半を占めていることを示すものです。

防衛省の報告によると、空自は、クウェートのアリ・アルサレム航空基地を拠点に、イラク国内のアリ(別名タリル)、バグダッド、エルビルの各航空基地・飛行場へ、多国籍軍や国連の人員・物資をC130輸送機で輸送しています。

国連支援は昨年九月に初めて実施。それ以降の輸送実績は月あたり十七―二十回程度で、うち四、五便が国連支援となっています。

日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の質問に対し久間章生防衛相は、空自の輸送活動では「国連(支援)以外の分野については多国籍軍を運んでいる」と答弁しており、残りの十二―十六回程度は多国籍軍支援となり、全体のおよそ七、八割に当たることになります。

また、週あたりの運航は四、五便程度。行き先別では(1)バグダッドへの運航(昨年七月三十一日開始、多国籍軍兵士を輸送)が週一便程度(2)バグダッド経由のエルビルへの運航(昨年九月六日開始、国連の職員・物資を輸送)が週一便程度(3)そのほかがアリへの運航―となっています。米軍の拠点基地であるバグダッドとアリへの運航((1)と(2))は、多国籍軍支援が中心とみられます。

空自の活動は、罪のない多くの民間人を殺傷し、イラクの「内戦状態」を招いた米軍の「掃討作戦」を支援するのが狙いです。イラク戦争とその後の占領支配の破たんにもかかわらず、ブッシュ米大統領はバグダッドを中心に二万五千人を超える米軍増派を発表しています。空自の活動は、米国内でも反対が多数の米軍増派に直接加担し、これを支えることにもなります。(以上)

朝日新聞2006年12月10日付に「イラク派遣空自の輸送4年目に/危険度増した新任務」小松基地「無事なのは幸運」と題した記事があります。その中に、小牧基地幹部によると、多国籍軍などから事前に寄せられた「脅威情報」をもとに、空自の飛行を取りやめたケースもある。「今まで何もなかったのがラッキーだったという面は否めない。慎重に判断して、キャンセルしたからこそ危険は避けられた」と明かす。イラク特措法の改正が伴う4度目の延長はあるのか。基地幹部は「終わりが見えれば、家族も隊員もホッとするだろうが…」と話す、とあります。

これが自衛隊員の本音です。しかし、隊員や家族が願う終わりは見えていません。政府は「イラク特措法」の延長を企図しています。それも国民に正面から問えず、地方選や参院選に影響を及ぼさない時期に延長法案の国会通過をさせようと考えています。これは政策に大義がないことを政権与党自らが認識していることを物語ります。

イラク戦争を支持した国の国民は、国連決議に基づかない米国を中軸とした有志連合型のイラク戦争その占領政策とその支援活動を否定的に捉えています。3月15日付朝日新聞は、日本はイラク特措法の延長反対が69%。英国は英軍のイラクからの即時撤退を求めるが60%、豪州は豪軍イラク派遣を「価値がない」が71%になっていることを報道しています。

これは事実が明確になっているからです。改憲も現在の政府の政策や政治化の言説から判断していけば、論理的には将来の同じ政党の政府の行動は予測できます。北朝鮮の核実験を背景にした国会審議、2006年10月11日の参院予算委員会で、安倍首相は、米国が他国に軍事介入して公海上で米軍艦が攻撃された場合や、イラクで英豪軍が攻撃された場合を挙げ、「(集団的自衛権の行使を可能にするよう)しっかりと研究していくことが、われわれの責任だ」と答弁して、改憲の本音を露出しています。このことを国民に宣伝していかなければならないと思います。そうすれば、イラク特措法の延長反対が69%となったように、国民も改憲の本質を認識し国民投票で多数を獲得できると思います。

従軍慰安婦問題 駐日米大使は刺激的に批判し、米法学者は論理的に追究/山崎孝

2007-03-19 | ご投稿
【慰安婦は日本軍に強姦 駐日米大使】(3月17日付中日新聞ニュース)

【ワシントン17日共同】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、シーファー駐日米大使は16日、一部記者団に対し、太平洋戦争中の従軍慰安婦について「強制的に売春をさせられたのだと思う。つまり、旧日本軍に強姦されたということだ」と語った。

大使は、2月に米下院外交委員会の公聴会で証言した元慰安婦を「信じる」と述べ、慰安婦が強制的に売春させられたのは「自明の理だ」と語った。

また、従軍慰安婦問題への旧日本軍の関与を認め謝罪した1993年の「河野洋平官房長官談話」を日本政府が見直すことのないよう期待を示した。

安倍晋三首相は4月下旬に訪米予定。ロイター通信によると、同大使は、従軍慰安婦問題で首相訪米が「台無しにならないよう望んでいる」と述べ、影響を懸念した。

【「慰安婦」問題強制性否定は悪質 米法学者が安倍発言批判】(3月15日付「しんぶん赤旗」ニュース)

【ワシントン=鎌塚由美】米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(十三日付)は、「従軍慰安婦」問題での安倍首相の発言を批判する米法学者の投稿を掲載しました。両教授は、六年前の米国内での慰安婦裁判の判決を引用し、安倍首相の主張は成り立たないと指摘しています。

投稿は、ハーバード大学法学部のジェニー・スック教授と、ニューヨーク大学法学部の教授で米外交問題評議会の研究員でもあるノア・フェルドマン教授の連名によるもの。

「従軍慰安婦」問題で「強制性を裏付ける証拠はなかった」という安倍首相の発言は、「アジアの古傷を再び開いた」もので、日本軍の関与と強制を認めた河野官房長官(当時)談話から「実質的には、後退」したものであると述べました。

両教授は、安倍首相はいまだに「実際の拉致は日本軍ではなく民間業者が行ったとの立場を維持している」とし、「言語道断」だと述べています。

その理由として、六年前に米連邦地裁で争われた「慰安婦」問題の裁判で、被害者の女性から訴えられた日本政府が「商行為として行ったことを否定した」事実を挙げました。同地裁は女性たちが政府の計画にそって拉致されたとし、日本政府の行為は「商行為」というより「戦争犯罪に近い」と結論を下したと両教授は指摘。政府が「商業的事業」をした場合に訴えられるケース以外には訴追できないとする外国主権免責法の規定によって日本政府の責任が問われなかったことを紹介しました。

その上で、「日本兵による拉致は商行為ではないとの法廷の結論から利益を得ながら、日本政府が今、日本兵は誰も拉致していないと述べるのは、特に悪質だ」と強調しています。

両氏は、「政治と訴訟は同じものでない」とし、「政治と法廷論争が違うからこそ、日本政府は道義的にも責任を果たすべきだ」と指摘。「ナチの強制労働の被害者と違い、『慰安婦』は補償を受けていない」とのべています。

両教授はまた、日本の改憲問題に言及し、「日本がなりたいと思う国になろうと決意するのであれば、日本は何よりも自らの過去と向き合わなくてはならない」と指摘。

日本が過去六十年以上にわたり憲法で平和主義を義務付け、軍事活動を「自衛」のみに制限してきたとし、日本政府が「安全保障においてより積極的な役割を果たす」として憲法改定を検討するという「重大な決定をする」なら、「なぜそういう(平和主義という)条項があったのか、開かれた議論をしなくてはならない」と述べました。(以上)

「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、従軍慰安婦問題に関する「河野官房長官談話」を「史実を踏まえて、より実証的な表現に修正すべきだ」と考えて、日本の名誉を回復させようとしたのでしょうが、安倍首相がこれに迎合する態度を取ったためにかえって世界の批判を浴びてしまっています。誤りは率直に認めてこそ日本の名誉は回復できます。

日本政府は開かれた議論をすると同時に、日本政府が「安全保障においてより積極的な役割を果たす」として憲法改定を検討するのではなく、現行憲法の理念に基づいて政治を行うことこそ、世界の平和と安全に寄与することが出来ます。

国民投票法案は参院選のプラスにならない/山崎孝

2007-03-18 | ご投稿
3月17日付朝日新聞に「国民投票法案 参院選にプラスか 成立急ぐ首相に河野議長疑問」という記事がありました。安倍首相が国民投票法案の今国会成立を目指し、与党が公聴会の日程を単独で決めたことについて綿貫国民新党代表が河野議長と会談して「対決すべきではないものを『これをやるんだ』というのは、参院選対策みたいに思える」と指摘すると、河野議長は「(参院選に)本当にプラスになるかどうかはわかりませんね」と疑問を呈した、という旨が書かれていました。

既に紹介していますが、朝日新聞社が3月10、11日に実施した世論調査では、イラク戦争を正しかったと思う人が12%、正しくなかったと思う人が75%になっています。イラク戦争を起こした米国を支援するために日本政府が戦後慰撫政策の性格を持ったイラク・サマワに陸自を派遣。現在、空自がイラク戦争の後方支援を行っている法律的根拠「イラク特措法」の延長には、賛成が19%、反対が69%となっています。

この結果は、国民にイラク戦争が4年を経過してその実態がよく知られるようになったからだと思われます。このような国民の意向を察知していた自民党は統一地方選への影響を避けるため、「イラク特措法」延長法案を4月下旬に国会提出を検討。公明党幹部からは、争点化を避ける狙いで「参院選からなるべく離れた時期に法案を成立させたいとの声も出ている」と報道されています。

このことは国民投票法案の成立させる政治の方向が「イラク特措法」が今まで以上に軍事的支援レベルを上げた、自衛隊海外派遣の恒久法になっていくことを、国民に広く認識させることが出来れば、政権与党は国民に正面から問うことが出来なくなります。国民投票法案が参院選にプラス材料にならなくなります。

3月14日付朝日新聞は、安倍首相が「個別具体例が憲法の禁じる集団的自衛権の行使にあたるかどうかの研究」の研究例として「サマワで一緒に活動する英豪軍に攻撃があった場合に(自衛隊が)駆け付けること」を挙げていると報道しています。

国民投票法案を論理的に突き詰めていけば、法案成立は改憲へ階段を一つのぼることであり、自民党の改憲の狙いは、現在の「イラク特措法」をモデルで言えば、自衛隊の活動地域が非戦闘地域となっているのを戦闘地域となる。現在の「イラク特措法」が武力行使を禁じているのを集団的自衛権も行使できるようになります。改憲されたてしまった将来は、イラク戦争のようなケースである、米国を中軸とした有志連合に参加して、海外の戦闘地域で活動し、武力行使・集団的自衛権行使を行うということを宣伝しなければと思います。

このこととあわせて、イラク戦争が日本国憲法の理念と正反対の考え方をして行われたこと。2月の6者合意の方向が、武力で国際紛争を解決してはならないとする日本国憲法の理念と合致した考え方であることも宣伝することも大切だと思います。

政府の中央審議会会長の山崎正和氏の意見について/山崎孝

2007-03-17 | ご投稿
朝日新聞は3月16日付でイラク「開戦時の賛成論 振り返ると/オピニオンリーダに聞く」と題して、イラク戦争に賛成した二人の意見を掲載しています。その一人、政府の中央審議会会長で劇作家の山崎正和氏の意見を紹介します。山崎正和氏の意見は、安倍首相が本年3月に述べた国会答弁とほぼ同じ考え方の意見です。

編集委員の質問 開戦直前のインタビューや、戦争時の総合雑誌の論文では道義はアメリカにあるとし、軍事行動を支持されていました。2年前の新聞論文では、支持してきたイラク戦争は終わった、とも。お考えは今も変わりませんか。

 「変わらない。ただ強調したいのは、私が支持した戦争は、加盟国がこぞって賛成した開戦前年11月の国連決議1441を出発点にした戦争だ。イラクの大量破壊兵器疑惑に対し無条件の査察などの条件をつけ、決議違反が続けば『イラクは深刻な結果に直面する』と警告していた。それまで2年近く続いた議論の決着点であり、すべての国がイラクは危険であり、大量破壊兵器の存在を疑っていた。ここまでは、アメリカは突出せず、全員がきっちりついてきた。しかし、フセインは大量破壊兵器の廃絶を積極的に証明しなかった。道義はアメリカの側にあったのは明らかだ。『深刻な結果に直面する』とは、外交用語で戦争するぞ、ということだ」

編集委員の質問 特に仏・独が査察継続を求め、早期の攻撃に強く反対しました。

 「アメリカの大きな過ちは、重ねて開戦決議を求めたことだ。1441決議のままでいけば、誰も反対できなかった。皮肉にもアメリカが湾岸に軍を派遣し、その圧力からフセインが査察を受け入れるふりをしたので、少し攻撃を見合わせようという国が出てきた。仏、独も査察継続を言うのなら、音頭をとり、全国連で米軍の駐留費を分担して圧力をかけ続ければよかったが、しなかった。あの争いは異様なものだった」

編集委員の質問 日本の対応で最も大事なのは、アメリカの行動への明確に支持とも言われました。

 「一つは国連中心の立場から、もう一つは長期的な国益の見地からだ。国際政治は多極体制から、戦後、冷戦下の二極に移り、今や、経済面も含めアメリカ一極体制にあるのが現実だ。米国は何よりも開かれた言論の国で、政府の動向も透明度が高い。また、大統領選挙が4年に1度あるように、内部から復元力がある。この一極体制はベストではないが、今のところは次善の形で、各国がいかに賢明に運用するかが重要になる。日本にとって、平和主義を貫くにも、アジアの安定を考えても、予測可能な将来を保証する意味で、今は日米同盟しか選択の余地がない」

編集委員の質問 大量破壊兵器の不在をもって開戦を非難する議論もあります。

 「大量破壊兵器の最大の効果は、使うことではない。あるかないか分からないのが、ある意味で最大の『攻撃』だ。そういう『攻撃』は排除しないといけない。米英がウソをいったという議論があるが、そういう細かい事実が仮に真実だったとしても、最大の査察は攻撃だったというのが私の考えだ。本来はフセインがすべきことを、はっきりさせた。無意味ではない」

編集委員の質問 今もイラクでは死者が連日出ているが、戦争は終わったとお考えですか。

 「もちろん。民主的選挙が実施され、イラクの国民議会が新しい大統領と首相を任命した時点で。繰り返しますが、私のこの戦争の原点は国連決議にあり、米国の道義もその中にある。決議を背景に開戦した時の目標は、独裁者の排除、大量破壊兵器疑惑の解明、イラクの民主化、テロリストの温床の制圧だったが、これらはほば達成された。副産物として、リビアの自発的核廃棄などを生んだ。

編集委員の質問 山崎さんがこの戦争を考えるものさしは、あくまでも国連決議1441だと。

 「私はイラク攻撃が根源的に賢明な戦争だとはいっさい言ってない。『文明の衝突』説には昔から反対だし、ネオコンが、民主主義と人権尊重の子供っぽい使命感から始めた戦争なら、賛成しない。国連決議に至る議論の前に戻せば、選択はいろいろあった。ただ、政治の論議はあくまで時限的な行動を問うもので、歴史の中に戻せば、戻すほど分からなくなる。様々に重なったものを、腑分けし、冷静に語るのが一人のモノを考える人間の仕事だ。整理すればこうなる、ということを、今回も一貫して述べてきただけだ」

編集委員の質問 終わらない混乱については。

 「シーア派、スンニ派というイスラム世界内の代理戦争という形になっている。もう、イスラムの世界にまかせ、アメリカは手を引くべきでしょう」(聞き手・編集委員の質問 四ノ原恒憲)

山崎正和氏は「大統領選挙が4年に1度あるように、内部から復元力がある」と述べていますが、その復元力が明確に示した事実は、イラク戦争は間違いと言う意見が多数を占めています。このことを山崎正和氏は認識すべきです。

山崎正和氏は「テロリストの温床の制圧だったが」と述べていますが、フセイン政権は国際テロリストとの関係がなく、イラク戦争開始後に国際テロ組織がイラクに侵入し、イラクで新たに反米武装勢力などのテロが発生するようになったことは世界がよく周知していることです。

山崎正和氏は「開戦前年11月の国連決議1441を出発点にした戦争だ」と述べています。それではこの決議に対する国際社会、国連の多数意見や国際法学者の意見を紹介します。

2003年2月19日、国連安保理の公開討論会が行われ、35カ国・機構の意見は、国連原子力機関と国連監視査察委員会の査察継続の意思が示される中で、仏独の主張する「査察継続」を支持する声が大半を占めています。

2003年3月18日、国連監視査察委員会のブリスク委員長は、米国の最後通告を受けて査察団がイラクを撤退しなければならなくなったことを記者団に対して次のように語っていました。「失望している。査察再開からわずか3ヵ月半で中止する理由はないし、国連決議1441の趣旨は、このような短い査察をするためのものではなかったと思う」。国連原子力機関とエルバラダイ氏は、2005年度のノーベル平和賞を受賞して、その受賞の理由には、米国のイラク政策に対して毅然とした態度を取ったことも含まれていました。

2003年3月18日の朝日新聞に掲載されていた「イラク問題に関する国際法学者の声明」は、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為に対する事実を認定し、武力行使を容認するか否かを決定するのは、唯一国連安全保障委員会である。安保理決議1441はそのような同意を与えたものではないと述べています。

山崎正和氏は「今や、経済面も含めアメリカ一極体制にあるのが現実だ」と述べています。しかし、今や世界は経済的には、米国、EU、相互扶助の関係を深める日本・中国・韓国・ASENA、インドなどのアジア経済圏、反新自由経済主義を掲げた中南米諸国圏、そしてイスラム圏などに多極化しています。

山崎正和氏は「日本にとって、平和主義を貫くには」と述べています。日本が平和主義を貫く指針は、戦後の国是とした日本国憲法の理念です。この理念の観点で、日米両政府のイラク政策を見なければと思います。その観点で2003年に書いた私の文章をお読みください。

朝日新聞2003年3月22日付「声」欄掲載文【理念無視した経済軍事優先】

 日本政府は国連の安全保障理事会の承認を得ない米英などの対イラク戦争を支持しました。支持する考えの基本は、日米の経済関係、軍事同盟にひびが入らないようにするため、また、国益のためだと言います。

 国連はイラクの大量破壊兵器の廃棄を平和的な方法で果たそうとしました。これは日本の憲法の理念と一致しています。

憲法が掲げる理想・理念に基づき日本政府はその役割を一番発揮しなければならない時に、日米の経済関係、軍事同盟の方を選びました。

日本はかつてエコノミック・アニマルといわれ、理念より経済的な損得しか考えない国と思われました。今回の決定はこの考え方の延長であり、とても残念で恥ずかしいと思います。

 政府は米国のイラク戦争の後で人道支援をすると言います。人道とは人命を失われることを防止することであり、多くの人命を失う政策を支持しながら、人道支援を口にするのは本末転倒です。

 今回の決定の要素には北朝鮮情勢への配慮があるともいわれます。米国の採用した武力による威圧、先制攻撃の論理を北朝鮮の問題に適用されたら、平和への大きな脅威になると思います。(山崎註 「廃棄」という言葉を用いたのは、この時点ではイラクの大量破壊兵器の有無ははっきりしていませんでした)

6者協議の合意後の進捗状況/山崎孝

2007-03-16 | ご投稿
【査察官受け入れの用意 訪朝のIAEA事務局長】(3月14日付中日新聞ニュース)

【北京14日共同】北朝鮮を訪問していた国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は14日、訪朝を終え、北京に戻って記者会見し、北朝鮮が6カ国協議合意を履行しIAEA査察官を受け入れる用意があると表明したことを明らかにした。北朝鮮は一方で、合意履行は金融制裁解除など他の条件の進展次第としたという。事務局長は訪朝を「有益だった」と評価した。

朝鮮中央通信によると、事務局長は同日、平壌の万寿台議事堂で最高人民会議常任委員会の金永大副委員長と会談した。同通信は会談内容を伝えていない。

★【北朝鮮金融制裁:解除のカギ握る中国 日本、難しい立場】(3月16日毎日新聞ニュース)

【北京・大塚卓也】北朝鮮金融制裁問題で、米財務省がマカオのバンコ・デルタ・アジア(BDA)の凍結口座の扱いについてマカオ金融当局に一任したことで、いつ、どのような形で凍結解除するかの判断は、中国政府の意向が左右することになりそうだ。

中国外務省の秦剛副報道局長は15日の記者会見で、BDAの北朝鮮関連口座の扱いについて「マカオ当局が適法妥当に処理することを支持する」と述べ、特別行政区であるマカオ金融当局の自主性を尊重する姿勢を示した。一方で、「6カ国協議の進展と、マカオの金融・社会の安定の両面に着目すべきだ」とも述べ、6カ国協議への最大限の配慮を求めた。

北朝鮮の対応などを見極めながら解除の時期と範囲を決める必要性をにじませた発言とみられる。

    ◇

日本政府は、米国がマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮関連口座の凍結解除を事実上容認したことについて「これによって急に今までの流れが変わることはない」(塩崎恭久官房長官)と比較的冷静に受け止めている。ただ、15日から始まった作業部会とその後の6カ国協議で、凍結の全面解除を求める北朝鮮がどう出るかは「まったく読めない」(外務省幹部)のが実情。拉致問題をめぐる日朝協議が難航しているだけに、警戒感の裏返しでもあるようだ。

「あらかじめ想定していたことだから、日朝交渉も含めて影響があるとは考えていない」。今回の米国の措置について、安倍晋三首相は同日夜、首相官邸で記者団にこう語った。

対照的に、麻生太郎外相は同日の参院外交防衛委員会で「6カ国協議は北朝鮮の非核化のために始まった。6カ国協議が動いたという点では評価すべきだ」と述べ、一定の評価を示した。

首相と外相の発言の違いは、6カ国協議を通じて北朝鮮の非核化と拉致問題の解決の双方を追求する日本政府の立場の難しさを象徴している。増元照明・家族会事務局長は「(凍結解除は)拉致問題の解決には悪い方向だ」と不満を表明した。政府関係者は「今後も北朝鮮のマネーロンダリングを抑止する効果は継続する。しかし、国内世論を考えると首相の発言は引き気味にならざるを得ないだろう」と解説してみせた。【中田卓二】(以上)

毎日新聞の記事には《増元照明・家族会事務局長は「(凍結解除は)拉致問題の解決には悪い方向だ」と不満を表明した》とありますが、増元照明氏が私の住む地域の講演会で述べた「拉致問題の解決は北朝鮮政権が倒れないと解決できない」という考えを根底にしていると悪い方向といえます。しかし、今まで拒否されてきた日朝交渉が6者協議の合意で再開できています。これを東アジアの平和と安定への活用の場、拉致問題への合理的な解決の場として生かせれることは出来ます。

日本政府が毎日新聞記事に《北朝鮮の非核化と拉致問題の解決の双方を追求する日本政府の立場の難しさを象徴している》と書かれたようになったのは、北朝鮮に対する強硬路線、圧力一本やりで、拉致問題を解決しようとしていた路線が招いたものです。以前、北朝鮮との交渉に臨む外交官が述べたような「今回は机を叩いていればすむから楽だ」というようなやり方ではいけなかったのです。昨年12月からの米国政権内のライス国務長官とヒル国務次官補の対応、相手の真意を掴むために柔軟な対応をしたことを見習うべきだと思います。そのためには交渉で問題を解決するという“不退転の決意”が必要だと思います。米国政府がこの決意をしたから6者協議はここまで好転してきたのだと思います。北朝鮮は5カ国に真摯に対応してこのチャンスを逃がしてはいけないと思います。

6者の合意が実現すれば北東アジアの平和と安定は大きく前進します。これは、泥沼に陥ったイラクと対比させて、平和憲法の理念の正しさの一つの証明になることを期待しています。

集団的自衛権行使が出来る憲法になれば、在日米軍の基地が減らせる?/山崎孝

2007-03-15 | ご投稿
(朝日新聞3月14日掲載「ニッポン 人・脈・記」より)

2月9日。石破茂(50)は衆院予算委員会で、思いのたけをぶつけるように首相安倍晋三に質問した。

 「戦争を経験した世代が生きているうちでなければ、集団的自衛権の議論は進めることができないと私は思う。総理がきちんと語り、ビジョンを示してほしい」

 議員会館の自室には自衛隊艦船のプラ模型がずらりと並ぶ。たいていの自衛隊艦船や航空機の性能をそらんじる。銀行マンから政界入りし、「軍事オタク」ともやゆされる元防衛庁長官。その石破がしかし、「戦争経験世代が生きているうちに」とは?

 集団的自衛権とは、国と国が助け合って他国の攻撃に反撃する権利だ。日本は悪法9条で「行使は禁じられている」とされている。

 「フィリピンで徴用した人が大勢死んだ。こちらの教科書は1行でも、向こうは10行も書く。そういうことを知らずに集団的自衛権をいえば、日本がまた大東亜共栄圏を持ち出すと思われるでしょう」。戦争経験者は毎日2千人ずつ亡くなっていく。集団的自衛権容認には、アジアの痛みを忘れないことが必須だと石破は思う。

 では、なぜ集団的自衛権を認めるべきなのか。石破は日米安保条約をあげる。米国は日本を守る。日本は米国を守らない。代わりに基地を置かせ、自由に使わせる。

 「日本は『なぜ三沢基地にF16戦闘機を置くのか』というようなことも米国に聞けないんですよ。領土をかってに使わせる。これで独立国家なんですか」

 04年秋まで2年間、防衛庁を率いた石破が米軍基地のありように怒る。「集団的自衛権を認めて対等になれば、在日米軍基地を減らせと米国に言えるんです」。根底には、「第二の独立を果たせ」というナショナリズムがある。(以下略)

記事は《集団的自衛権とは、国と国が助け合って他国の攻撃に反撃する権利だ》と述べていますが、米国が他国から攻撃を受ける場合とは逆に、同盟国の米国が正義をかざして他国に侵攻する場合や、他国の内政問題に介入して軍事行動を起こす場合に日本が集団的自衛権を発動することがありえます。集団的自衛権を考える時はこのことを念頭にいれて置かなければと思います。

集団的自衛権の行使が出来る憲法になれば、安倍首相も言っていますが、米国と対等な立場になり、日本政府は米国にしつかりとものが言えるでしょうか。集団的自衛権行使が盛んに論じられることと並行して、自衛隊と在日米軍の一体化が進んでいます。一体化に大きな障害になってくるのが日本の集団的自衛権が行使出来ない憲法です。米軍の有事即応の世界戦略に伴い米軍の世界的な編成替えも行われて、それに伴う米軍のグアム移転費用までが日本政府は押し付けられています。そして、米軍の世界戦略に合わせて在日米軍の基地機能拡大も計画されています。

以前、自衛隊の幹部は、朝日新聞の取材に対して、在日米軍の再編で自衛隊と米軍の一体化が進めば進むほど、日本政府は米国と違う政策判断が困難になると述べています。これらを見れば日本政府が毅然として米国に物を言えることを信じるわけにはいきません。

「ニッポン 人・脈・記」には、《米国の世界戦略に協力する同盟なのか。第二の独立なのか。防衛省を「新しい国造りの第一歩」という安倍の見つめる先に何があるのだろう。》と書いてありますが、「第二の独立」なるものは単なる願望に終わるでしょう。

額面どおりには受け取るわけにはいかない/山崎孝

2007-03-14 | ご投稿
朝日新聞3月12日の「ニッポン 人・脈・記」には、舛添要一参院議員に触れた部分があります。記事は、同氏は自民党新憲法起草委員会の事務局次長として、自分のパソコンで最終案を書き上げた人物と述べています。記事は自民党新憲法草案《9条は、自衛軍を創設するけれども、第1項の「戦争放棄」は変えなかった。舛添は若い日、フランスに留学、第一次世界大戦後に不戦条約を作った仏外相ブリアンの研究にいそしんだ。「1項は不戦条約と同じなんです。人類の理想です。1項を変えていつでも戦争をできるみたいにしちゃいけないよ」》と書いています。

舛添要一参院議員の「1項は不戦条約と同じなんです。人類の理想です。1項を変えていつでも戦争をできるみたいにしちゃいけないよ」との言葉を額面どおりに受け取るわけにはいきません。

北朝鮮の核実験を背景にした2006年10月11日の参院予算委員会で、舛添要一参院政審会長は、「軍事制裁」を後押しする立場に立って、米軍が北朝鮮への制裁として臨検(船舶への立ち入り検査)を実施するケースを想定して「臨検をしているアメリカ海軍に向かって発砲が始まったときにそばにいて、うちは憲法で禁じられているから何もできませんというのが通じるのか」とのべて、米軍とともに武力行使に乗り出すべきだという考えを主張しています。そして「もはや(自衛権を)個別や集団と峻別する意味はない」「憲法改正という形で筋道を立てたい」と改憲を強く求めています。

この参院予算委員会での発言と「1項は不戦条約と同じなんです。人類の理想です。1項を変えていつでも戦争をできるみたいにしちゃいけないよ」と言う言葉とは大きく矛盾しています。舛添要一参院議員が想定しているのは、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と規定されている周辺事態法を発動して、米軍の後方支援を行っている状況の時のことを述べています。この法律は、周辺事態への対応は、武力による威嚇や武力行使に至らない行動にすると規定しています。

北朝鮮の核実験に対する国連安保理事国の基本姿勢は、軍事制裁を行わないが、経済制裁はする。その目的は北朝鮮を6者協議に呼び戻すこと。そのために、国連加盟国は紛争を拡大させるような行動を慎むことでした。この国連の姿勢とも明らかに違う舛添要一参院議員の政治姿勢です。

日本政府は周辺事態法の適用に政権内からも異論があり適用を諦めます。従って米艦船の後方支援はできませんでした。そして肝心の米国も海上での臨検は行わず、港での船舶検査にとどめます。

結局は憲法の第1項を残したのは、国民をなだめるための意図で、自民党新憲法草案の9条2項を変えたことの危険な本質を隠すためのものです。「戦争の放棄」の理念は、前文と第2項を変えないことで確固として保証されるものです。

2006年10月11日の参院予算委員会では、久間防衛庁長官は、集団的自衛権と個別的自衛権の間に「グレーゾーンは本当にないのか」などと答弁。自衛隊機が他国の空中給油機から空中給油を受けているケースを示し、「相手は空中給油機を狙ってきた。日本の自衛隊機は、その敵機を撃ち落としてはいけないのか。実行はできるんじゃないのか」と述べています。

安倍首相は、公海上で米軍艦が攻撃された場合や、イラクで英豪軍が攻撃された場合を挙げ、「(集団的自衛権の行使を可能にするよう)しっかりと研究していくことが、われわれの責任だ」と答弁。さらに「研究を行った結果、それはわが国が禁止する集団的自衛権の行使ではないという解釈を政府として出すことも十分あり得る」と述べています。

2007年3月14日付朝日新聞は、オーストラリアを訪問した安倍首相が、ハワード首相と会談したことを伝える記事の中で《「個別具体例が憲法の禁じる集団的自衛権の行使にあたるかどうかの研究」を進めるなど、自ら主導して協力の拡大を図っている。研究例として「サマワで一緒に活動する英豪軍に攻撃があった場合に(自衛隊が)駆け付けること」を挙げている》と書いています。これを見れば、3月7日の内閣記者会でのインタビューで「集団的自衛権の研究」に関して「国民を守る大きな責任がある中で、そんなに時間をかけるべきではない」と述べた「国民を守る大きな責任」とは全く無関係なことがわかります。

現行憲法の解釈を変えることは許されません。歴代政権が戦後一貫して国民に説明してきた内容、国の最高法規の解釈が時の政府の都合で変えられたら、法治主義は大きく揺らぎます。「憲法改正という形で筋道を立てたい」という舛添要一参院議員の方がまだしも真っ当です。

2005年2月、日米安全保障協議会で、ラムズフェルド米国防長官が述べた「平和協力活動は、血を流してこそ未来につながる尊いものになる」と述べ、日本に武力の伴う国際貢献を求めました。しかし、ラムズフェルド米国防長官が思いましたが国連はそうとは思わなかった「平和協力活動」の大量破壊兵器の除去から大儀名分を変えたイラクにおける民主主義と「テロとの戦い」は無残な有様を呈しています。アフガニスタンにおける武力を主体とする「テロとの戦い」も成功を収めていません。安倍首相も日米同盟は「血の同盟」と述べたことがあります。

自民党新憲法草案の9条2項は、自衛軍を創設して武力の伴う国際貢献を謳っています。しかし、国連平和維持活動の原則は、非暴力の原理を紛争地に持ち込むことです。国連は停戦を勧告して、停戦成立後に紛争当事者が了解すれば国際部隊を派遣して、武装解除、停戦監視、人道支援を行います。国連軍が編成されて国連憲章第42条に軍事制裁のケースは今まで基本的にはありません。(朝鮮戦争時の国連軍編成は中ロと米国の対立で正常な状態ではなかった。湾岸戦争は国連部隊ではなく、このような事態はごく稀なことです)

国民投票法案に関する世論について/山崎孝

2007-03-13 | ご投稿
朝日新聞社が3月10・11日に行った全国世論調査の結果(電話での調査)が13日の紙上に発表されています。「国民投票の手続きを定める法律を作ることは必要だと思いますか」の問には「必要だ」68%、「必要はない」19%。「国民投票法案を今の国会で成立させるという安倍首相の考えに賛成ですか」という問には「賛成」48%、「反対」32%となっています。

私はこの結果は、一般的な国民投票の手続きを定める法律を作ることは必要だという意識の反映だと思います。しかし、今国会での法案の成立させることについては、賛成率が下がり反対が増えていることをみれば、安倍首相の改憲姿勢に必ずしも同調しているわけではありません。そして、自民党の改憲の狙いに賛成していることでもありません。

「いせ九条の会」の改憲に反対する賛同署名運動の反応を見ても、留守の家を含み、また関心がなく対話が出来ない家は半数を上回りますが、対話が出来た家での反応は、改憲に反対する家の方が大部分です。そして反対しても仕方がないと答える人に、改憲は最終的には有権者の一人一人の考えで決める国民投票がある。この段階で、世論調査では一般的には改憲に賛成する人が多いが、自民党の改憲の目的である「9条を変えて海外でも武力行使がて出来るようにする憲法」には、反対する考えの人が多いと説明して、改憲は阻止は出来ると話すと、気を取り直して賛同署名に署名する人もいます。

朝日新聞の結果を私は一般的な意識の反映と述べましたが、このことは朝日新聞社が2006年5月3日に掲載した憲法についての世論調査の結果と共通すると考えます。その世論調査の結果は「憲法を変える必要がある」は55%で、「必要がない」32%を上回っていました。しかし、これは一般的、漠然とした考え方と捉えることが出来ます。

調査の細かい問には、自衛隊の存在を憲法に明記する必要があると答えた人たちは「第9条をそのまま残し新たな条文を追加する」が64%と一番多い。憲法を変える理由として「第9条に問題があるから」は9%でした。自衛隊を「軍隊」と位置づけることの賛否を、自衛隊を憲法に明記する考えの人に重ねて聞くと、「反対」が54%と多く、「賛成」38%を上回っています。また、集団的自衛権については、いまの立場を維持することに53%が賛成し、「使えるようにする」36%を上回っています。

私は、自民党がイラク戦争のような米国の戦争に日本が加担して、集団的自衛権の行使を想定していることを宣伝して改憲に反対する人たちを増やしていかなければと考えます。

安倍首相が3月7日の内閣記者会のインタビューで「集団的自衛権の研究」に関して「国民を守る大きな責任がある中で、そんなに時間をかけるべきではない」と述べことの欺瞞性、国民を守ることと集団的自衛権行使は対立した事柄であることを暴露しなければならないと思います。

民主党にも大東亜戦争聖戦説という妖怪がさまよっている/山崎孝

2007-03-12 | ご投稿
「慰安婦」河野談話/民主から「見直し」要求/若手が「会」/“南京大虐殺もなかった”(3月10日「しんぶん赤旗」ニュース)

民主党の若手議員は九日、「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」を発足させました。会長に選出された渡辺周衆院議員は、「従軍慰安婦」問題で旧日本軍の関与を認めた一九九三年の河野洋平官房長官談話について「見直しを求めていきたい」と、党内で賛同者を募る方針を示しました。自民党に続き、民主党にも歴史逆行の動きが広がった形です。

 また、同会幹事長の松原仁衆院議員は、旧日本軍が占領下の中国で起こした南京大虐殺に関して「事実無根だと発信していく必要がある」と語りました。

 会合では、東京基督教大学の西岡力教授が講演。「河野談話」に代わる新たな談話を出す必要があるなどと主張しました。初会合には衆参両院議員十六人が出席。

 鳩山由紀夫幹事長は同日の記者会見で、党としては談話を尊重すると強調した上で「真実を検証することに関して異を唱えるものでない。見直すという発想でスタートして見直さないという結論(に至ること)も考えられる」と述べ、若手の勉強会を容認する考えを示しました。(以上)

【「慰安婦」問題 日本政府に批判続く】(3月10日「しんぶん赤旗」ニュース)

“歴史直視、真の国益” ボストン・グローブ紙社説【ワシントン=鎌塚由美】米紙ボストン・グローブ(八日付)は、「謝ることのできない日本」と題する社説で、安倍首相の「慰安婦」発言を批判しました。

 社説は、安倍首相が「軍の売春宿に閉じ込められた二十万人にのぼる女性たちの苦しみを公式に認めることを拒否した」と指摘。安倍首相の発言は「日本国民を反映したものと理解すべきでなく、むしろ与党・自民党の安倍氏や右派が権力への布石として採用してきた国粋主義の症状だ」と述べました。

 社説は、米議会で審議中の決議案について「客観的事実に基づいていない」と主張する安倍首相に対し、「むしろ安倍氏は、十分に確立された歴史の真実を認め、生き残っている被害者たちに公式な損害賠償を行うべきだ」と主張。「真の国粋主義者は、このような日本の真の国益にとって最良となる方法で、歴史に向き合うだろう」と述べました。

★“世界で理解しがたい” インドネシア英字紙社説

 インドネシア英字紙ジャカルタ・ポスト六日付社説「日本の未熟さ」は、安倍首相が「慰安婦」問題で「強制を証明する事実はなかった」とのべたことを厳しく批判し、誠実に歴史と向き合うよう求めています。

 社説は「安倍氏はわずか六カ月で、日本の戦争中の歴史と向き合う点で小泉首相とあまり変わらないことを世界に示した。安倍氏は、日本が戦争中に性の奴隷の問題に関与したことを認めて謝罪するよう求める米下院での決議案にいらだっている」と指摘しています。

 また、「第二次世界大戦後六十二年にもなるのに、日本がなぜ戦争中の歴史的事実を正直に受け入れずこうした子どもじみた態度を維持し続けるのか、世界中の人々にとっては理解し難い」と問いかけています。

★強制否定は許されない 中国外務省報道官 【北京=菊池敏也】中国外務省の秦剛報道官は八日の記者会見で、米下院外交委員会が「慰安婦」問題で決議案の審議を進めていることについて、「『慰安婦』の強制徴用は、日本軍国主義が第二次世界大戦で犯した重大な犯罪行為の一つ」と述べ、「これは客観的な歴史事実であり、否定することは許されない」と強調しました。

 同報道官は、「慰安婦」問題が「隣国および国際社会での日本のイメージにかかわる」と指摘、「日本側が勇気を示し、歴史・人民・未来に責任を負う態度で、国際社会の正義の声に真剣に対処し、歴史的に残されたこの問題を真剣かつ適切に処理することを希望する」と述べ、日本政府の対応を促しました。(以上)

鳩山由紀夫幹事長は、党としては談話を尊重すると強調した上で「真実を検証することに関して異を唱えるものでない。見直すという発想でスタートして見直さないという結論(に至ること)も考えられる」と述べ、若手の勉強会を容認する考えを示しています。党として「談話」を尊重という立場であるならば、党の幹部の立場として、それを尊重しない党員には厳重な注意をすべきなのです。これは安倍首相とも共通する点です。

鳩山由紀夫幹事長は、真実を検証することに関して異を唱えるものでないと述べていますが、検証するまでもなく、動かしがたい事実は存在しています。日本人の中にも軍関係者で従軍慰安婦の事務を取った本人が新聞の投書で明らかにしています。そして被害者自らが、心情的には隠しておきたい事柄なのに、歴史を歪曲する日本の政治家に真実を突きつけるため、苦痛を偲んで法廷や議会で証言しています。政治家はこの心を、人間として汲み取らなければなりません。

日本人で南京虐殺を直後に見聞きした人が何人もいます。当時の軍幹部も日記に記しています。マギーという外国人牧師が撮影した映像も残されています。当時、外国通信員が世界に南京虐殺事件を配信しています。だから、現在、世界の新聞社が日本の政治家の歴史を歪曲する動きを批判するのです。

歴史の歪曲を図る政治家の根底にあるのは、“戦争は悪ではない”とする考え方です。自らが「正義」と信じていることに対して、戦争という手段で実現しても良いとする考え方です。

これほど極端でないにしても、山崎拓氏が述べたように、戦争忌避、平和主義といった観念が薄れ、『軍事力を背景としない外交は迫力に欠ける』といった考え方の人が多くなったのです。6者協議の合意を見ても軍事力を背景にした恫喝外交はゆきづまり、米朝は双方の言い分を出し合うことによって妥協点を見出しています。真剣に平和的に問題を解決する態度を確立して対話すれば道は開かれると思います。

山崎拓氏が述べた、正しい戦争史観がないから、このごろの議論を聞いていて、極端に言えば大東亜戦争聖戦説という妖怪がさまよっている感じがしますの言葉は、自民党の政治家ばかりではなく民主党内の政治家にも当てはまります。

従軍慰安婦問題で他国の女性を「官憲が家に押し入って連れていく」事例の証拠が見出し得なくても、安倍首相が認めた「業者が間に入って事実上強制したこともあった」ということが何を意味するかは歴然です。それは業者が他国で無法なことが出来たのは、日本の占領下や植民地下であったからです。このことを基本に置かない歴史の検証は無意味です。他国には理解はしてもらえません。

安倍首相は日本の最高責任者として、2007年1月14日に確認した「日中韓報道声明」《3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化する》の政治姿勢を貫いてほしいと思います。