いせ九条の会

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南北閣僚級会談は「共同努力」の方向/山崎孝

2007-03-03 | ご投稿
【南北閣僚級会談:初期段階措置履行で「共同努力」】(3月2日付毎日新聞ニュース)

【ソウル堀山明子】韓国と北朝鮮による第20回南北閣僚級会談は2日、6カ国協議の初期段階措置合意の履行に向けて努力することなどを盛り込んだ共同報道文を発表し、閉幕した。争点の北朝鮮へのコメ・肥料支援については文書に明記されず、6カ国協議の進展を見ながら段階的実施を目指す韓国の方針が反映された形となった。

次回会談は5月29日~6月1日、ソウルで開催される。

韓国側協議筋によると、肥料支援については北朝鮮が今後、必要な量を文書で通報し、コメ支援については4月18~21日に平壌で開催される南北経済協力推進委員会(経推委)で話し合うことにした。韓国側首席代表の李在禎(イジェジョン)統一相は2日、共同報道文発表後、「原則的には、例年通りの水準でコメや肥料を支援する方針だが、手続きを踏んで段階的に実施したい」と語った。

コメ支援をめぐっては、初期段階措置で北朝鮮が寧辺(ニョンビョン)の核施設を停止する期限が2月13日から60日以内と設定されたことを踏まえ、韓国は「4月14日以降の経推委で議論する」と主張した。北朝鮮は3月中の経推委開催を求めていたが、譲歩した。

一方、北朝鮮が昨年5月に一方的に取り消した南北縦断鉄道の試運転は「軍事的保障措置が整い次第」との条件付きで、今年上半期内に実施することで合意した。

◆南北閣僚級会談共同報道文要旨◆

一、朝鮮半島非核化に向けた第5回6カ国協議の(初期段階措置)合意を円満に履行するよう共に努力する。

一、南北経済協力推進委員会を4月18~21日、平壌で開催し、(コメ支援など)経済協力問題を協議する。

一、軍事的保障措置が整い次第、今年前半期内に南北縦断鉄道の試験運転を実施。そのための南北経済協力推進委員会の実務接触を3月14、15日、北朝鮮・開城で行う。

一、南北離散家族再会事業を5月初め、北朝鮮・金剛山で開催。(南北でパソコンをつなぐ)画像を通じた再会事業も3月27~29日に実施する。

一、南北赤十字会談を4月10~12日、北朝鮮・金剛山で開催し(拉致被害者など)行方不明者問題をはじめ関心事を協議する。

一、次回南北閣僚級会談を5月29日~6月1日、ソウルで開催する。(以上)

南北閣僚級会談は、「朝鮮半島非核化に向けた第5回6カ国協議の(初期段階措置)合意を円満に履行するよう共に努力する」ことになりました。

2月27日朝日新聞社は、韓国の羅鐘一駐日大使にインタビューしています。その中で、日本には拉致問題があるという質問に対して羅鐘一駐日大使は次のように答えています。

《韓国にも拉致問題はある。この問題のため、日本政府が簡単に動けないということは理解できる。だが、韓国は「この問題がダメなら、他の問題もダメだ」という形の接近方法を北に対して取っていない。拉致問題が話し合えるような雰囲気に努力してきた。》

3月2日付朝日新聞は、自民党の中国訪問団に関する記事で、丹羽雄哉訪中団長が《「我々は民意を背負っている」として拉致問題への中国側の協力を求めたところ、王家瑞・党中央対外連絡部長は「交渉事は譲り合いが必要だ。ひたすら圧力をかけることからは、効果的な前進を得られない」》と述べたことを伝えています。

丹羽雄哉訪中団長が述べた「民意」は、自民党の政治家たちが改憲や軍事拡張を念頭にして、これに有利な世論操作、北朝鮮の脅威を煽る一環として拉致問題を扱うような姿勢だったことが大きく影響しています。日本国民に他国の手によって被害が出るというような事件は、国民感情をいたく刺激する事柄です。政権与党の政治家は問題の解決に責任を負います。そのことを考えて国民感情を刺激しないよう抑制的な姿勢が望まれます。国民が感情的にエスカレートしてしまうと合理的な解決点が見出せなくなります。

2002年10月21日の朝日歌壇に「拉致・拉致の土砂降りの雨 子に孫に差し出す傘なく生みしを悔やむ」、「過ぎ去りし事件の透きて立ち顕わる祖国は在日を辱めおり」と、切ない気持ちを詠んだ在日朝鮮人の歌が掲載されたように、大半のマスメディアはセンセーショナルな報道を連綿と続けています。これも「民意」に大きく影響を与えました。

日本政府は「ひたすら圧力をかける」ことを行ったために、相手に会談を拒否されてしまった事実があります。強硬路線は何の成果も得られず、この状況が6者合意の日朝国交正常化を図る部会設置でようやく会談が出来るようになります。

米朝も相手を非難するだけの態度を改めたために6者協議を効果的に進展させています。この教訓は日朝にとっても重要だと思います。韓国政府の「この問題がダメなら、他の問題もダメだ」という言葉は日本にとっても教訓だと思います。北朝鮮政府も拉致問題を公正な態度で見つめる日本人に対して、理解されるような態度を示し誠実な調査を行い、拉致被害者の現在の状況を明らかにすべきです。

日朝は大局的な見地で、東アジアの平和と安定の課題に向かって「共同努力」をしなければと思います。