いせ九条の会

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安倍首相の一番痛いところを突いたワシントン・ポストの社説/山崎孝

2007-03-26 | ご投稿
【安倍首相は「ごまかし」と批判、ワシントン・ポスト社説で】(3月25日付朝日新聞ニュース)

米紙ワシントン・ポストは24日付で「安倍晋三のダブル・トーク(ごまかし)」と題する社説を載せ、拉致問題に熱心な安倍首相が従軍慰安婦問題には目をつぶっていると批判した。首相に「拉致問題で国際的な支援を求めるなら、彼は日本の犯した罪の責任を率直に認め、彼が名誉を傷つけた被害者に謝罪すべきだ」と求めている。

 同紙は、6者協議で拉致問題の進展を最重要課題とする日本政府の姿勢について「この一本調子の政策は、国内で落ち込む支持の回復のため拉致被害者を利用する安倍首相によって、高い道義性を持つ問題として描かれている」と皮肉った。拉致問題については「平壌の妨害に文句を言う権利がある」としながら「第2次大戦中に数万人の女性を拉致し、強姦し、性の奴隷としたことへの日本の責任を軽くしようとしているのは、奇妙で不快だ」と批判した。

 さらに政府が16日に決定した答弁書は、93年の河野官房長官談話を「弱めるものだ」と指摘し、歴史的な記録は「北朝鮮が日本の市民を拉致した証拠に劣らず説得力がある」と主張。首相が河野談話を後退させることは「民主主義大国の指導者として不名誉なことだ。日本政府の直接の関与を否定すれば、北朝鮮に拉致問題の回答を求める正当性を高めると考えているかもしれないが、それは逆だ」としている。(以上)

私は以前にブログで、他国の女性を従軍慰安婦にするために日本の官憲による強制性を否定しても、日本の責任は軽くならないとの意見を述べ、これは外交的には逆効果になると述べました。ワシントン・ポストは社説で「日本の責任を軽くしようとしているのは、奇妙で不快だ」と述べるに至りました。

また、同社説は「「この一本調子の政策は、国内で落ち込む支持の回復のため拉致被害者を利用する安倍首相」と述べていますが、このことに関したことを朝日新聞は3月24日付「安倍政権の研究」で触れています。以下それを紹介します。

「『左』におもねっても、安倍さんを支持していた保守的な考えの人が離れるだけです」

1月22日夜、首相公邸。ジャーナリストの桜井よしこ氏や金美齢氏ら首相の思想・信条に近い知識人が集まった。久しぶりの会合だが、厳しい直言が相次いだ。

一人が「今のままでは陳総統のようになりかねませんよ」と指摘した。台湾の陳水扁総統は中国からの独立を主張したが、再選後にその姿勢がぐらつき、支持率の低下を招いたとされた。村山談話や河野談話の継承を明言、真っ先に中韓訪問を果たした首相への「変節」批判でもあった。

首相は会合で「言われているほど変わってませんよ」と苦笑した。後日、旧知のプレーンとの電話では「耳の痛い話だった」と漏らした。

 首相周辺には「保守支持層の不満がたまっている」との報告も寄せられた。そこで表面化したのが、従軍慰安婦への軍当局の関与を認めた河野談話見直し問題だった。

 2007年度予算案の衆院通過がもつれ込んだ3月3日未明の衆院本会議場。自民党の中山泰秀衆院議員が首相に「党でまとめた提言は総理が受け取って頂けますか」とたずねると、首相は「私が受け取る。私に持ってきてくれ」と応じた。(以下略)

私は以前に、安倍晋三氏が昨年9月1日に発表した政権公約の「美しい国、日本」には「文化・伝統・自然・歴史を大切にする国」と「中国、韓国等近隣諸国との信頼関係の強化」があり、この二つの柱は、歴史の大切の仕方によっては対立すると述べました。従軍慰安婦問題でこの現象が現われてしまいました。

「『左』におもねっても、安倍さんを支持していた保守的な考えの人が離れるだけです」というような次元の問題ではなく、日本が世界の人たちから理解されるには、普遍的な歴史観を持つことが必要で、このことなしにアジアの国とは真の友好関係、ワシントン・ポストの社説が指摘した「民主主義大国の指導者として名誉」が保てないと言うことです。