いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

安倍首相の帰巣本能/山崎孝

2007-03-06 | ご投稿
安倍首相は、米下院の従軍慰安婦に関する決議(日本の首相の公式謝罪を求める)の動きに対して、3月5日の国会答弁で「客観的事実に基づいていない。日本政府のこれまでの対応を踏まえていない」と指摘して「決議があったからといって、我々が謝罪するということはない」と述べました。

安倍首相の「客観的事実に基づいていない」という主張の根拠は、「官憲が家に押し入って連れていくという強制はなかった(狭義の強制性)」ということです。安倍首相は「業者が間に入って事実上強制したこともあった」という広義の強制性は認めています。業者が他国でこのようなことが出来たのは、日本の占領や植民地政策があったからです。このことをしっかりと踏まえていなければならないのです。

安倍晋三氏がかつて事務局長を務めていた「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が、従軍慰安婦問題に関する「河野官房長官談話」を「史実を踏まえて、より実証的な表現に修正すべきだ」との考え方で提言をまとめ、首相に申し入れる予定という動きに対して、「狭義の強制性から、広義の強制性へと変わったということを前提にして考えなければならないと思う」と言うような、迎合的態度をとってはならないと思います。

迎合的態度は、首相になってから、世界との付き合う事が出来ないため、建前として持論の自虐史観批判と決別しなければならなかった。古巣である「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」への帰巣本能から来るものです。

朝日新聞2月27日の記事「歴史と向き合う/愛国心再考」によりますと、保守論壇において日本人に「反日」という言葉がよく使われだしたのは1997年当たりからだと述べた後、

《従来の歴史教育、歴史教科書を「自虐的」と批判する「新しい歴史教科書をつくる会」が結成された年でもある。そうした「反日」批判論文は、異口同音にこう論じる。

――先の戦争は自存自衛の戦争であったのに、戦後、日本人は占領軍と左翼偏向教師、ジャーナリズムによって東京裁判史観(日本だけを悪とする史観)を植えつけられ、愛国心を奪われた。この結果、それを「侵略戦争」と考えるようになった。「反日」教師やジャーナリズムを打ち倒し、東京裁判史観・自虐史観を払拭して、侵略否定の愛国的認識を取り戻さなければならない。》と解説しています。

自民党の教育基本法改定の方向は、これと同一方向にあるといっても大きくは外れません。

「侵略否定の愛国的認識を取り戻さなければならない」という考えは、自存自衛という大義がつけば、他国に攻め入る侵略戦争も肯定することです。そして脅威と思う国に先制攻撃を仕掛けても良いとする考えに容易に結びつきます。今日の国連憲章と日本国憲法の理念と対極にある考え方です。