いせ九条の会

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ブッシュ米大統領のイラク新政策は危険な賭け/山崎孝

2007-01-12 | ご投稿
★米イラク政策:新政策発表 米政権、最後の賭け 関与むしろ強化(1月11日付け毎日新聞ニュース)

【ワシントン及川正也】ブッシュ米大統領が10日発表したイラク新政策は、宗派間抗争が激化するバグダッドの治安対策などのため2万人規模の米軍を増派する一方、イラクの軍事的役割拡大を促す「イラク自立化」を明確に打ち出した。残り任期2年のうちに撤退に道筋を付ける狙いがあるが、目玉の増派は過去にも採用されながら成果がなく、逆に抗争激化につながった。ブッシュ大統領にとって「最後の賭け」ともいえる新政策だが、新味は乏しく効果を疑問視する見方が強い。

◇新たな抗争、火種にも ブッシュ大統領は演説で戦略や手法の「変化」を強調したが、内容は戦略的転換には至らず、従来の関与政策の強化・加速に重点が置かれている。宗派間抗争への対応に遅ればせながら本腰を入れたとの印象は否めない。

演説で大統領が、イラク政府に宗派間抗争沈静化に主導権を発揮するよう「最後通告」を突き付けた背景には当初、昨年末までには現在13万人規模の兵力を10万人以下まで減らせると見ていた政権のいら立ちがある。

大統領にとって早期撤退は最大の目的だ。しかし、演説で大統領は「即時撤退はイラク政府の崩壊を招く」と語っている。米議会などからの撤退圧力が強まる中で、あえて増派に踏み切ったのは、イラク政府を支援しながら治安権限移譲を早めることで撤退開始につなげる狙いがあるようだ。

新政策の狙いは、バグダッドの治安対策への米軍の支援強化だ。増派される米軍はイラク治安部隊に同行する形でパトロールや検問、戸別訪問を実施する。しかし、米軍は米軍の指揮下で動く。民兵組織との戦闘で、米軍が主導する場面も予想され、米軍増強によって「短期的に見れば宗派間抗争が激化する可能性は十分ある」(ブッシュ政権高官)との見方が支配的だ。増派論を主張してきたマケイン上院議員(共和党)も「米兵の犠牲が増えることを覚悟すべきだ」と指摘する。

また、昨年夏、マリキ政権発足を受けて米軍を増強してバグダッドの治安対策を図ったが、宗派間抗争は、むしろ激化した。2万人増派を維持できるのは「数カ月間」との見方もあり、短期間で成果が迫られる。

新政策では目標として(1)11月までにイラク全土の治安権限移譲(2)12~18カ月以内のイラク自立達成--を挙げた。撤退スケジュールは示さないが、共和党内の増派論と民主党内の中道派の意見を取り入れた形で政治的妥協の側面もにじむ。(以上)

★イラクに2万2千人増派 米大統領、新政策発表(1月11日付け中日新聞ニュース)

【ワシントン10日共同】ブッシュ米大統領は10日夜(日本時間11日午前)、イラク新政策についてホワイトハウスから国民向けに演説、首都バグダッドでの治安悪化など過去の戦略の誤りについて「責任は私にある」と認めた上で、2万人以上の米兵を一時増派すると発表した。また今年11月までにすべての治安権限をイラク軍に移譲するとの目標を示し、雇用創出など経済復興に向け約12億ドル(約1430億円)の資金拠出を表明した。ホワイトハウス高官によると、一時増派の規模は2万1000-2万2000人。

2003年3月のイラク開戦以来、米政権による抜本的なイラク政策の転換は初めて。米軍撤退の前提となる治安権限移譲を加速させることで「出口戦略」につなげる狙いを鮮明にした。

しかし増派で治安の安定化が実現できるかどうかは不透明。議会で多数派を占める野党民主党は、一時増派に反対する決議案提出を決めるなど徹底抗戦の構えで、大統領と議会の対立が先鋭化するのは必至だ。(以上)

★ 朝日新聞1月12日の社説の指摘

私たちは、この増派は危険な賭けだと考える。

ブッシュ政権はこれまで3回、イラクに増派しているが、いずれも効果は上げられなかった。今回が最後の機会だ、と大統領は言いたいのだろう。

だが、軍事力だけではイラクは再生できないことが、この4年間ではっきりしたはずだ。米軍駐留そのものが事態を悪くしている面もある。

大統領はこの現実にまだ目を閉ざすつもりなのだろうか。増派がさらに犠牲を増やし、混乱を深刻にしないか。事態が良くなる保証は何もない。(社説の抜粋)

安倍首相は英国のブレア首相と会談した時にイラク問題について「国際社会の一致した支援の継続が重要だ」として、4年間の時限立法だったイラク特措法の改変をしてまで、航空自衛隊の米軍支援活動を継続させようとしています。しかもイラク政策の検証もしないままです。安倍首相も「現実にまだ目を閉ざすつもり」なのです。しかし、英国は次のような状況です。

英軍はイラク「増派せず」 外相、米政策は歓迎(中日新聞ニュース)

【ロンドン11日共同】ベケット英外相は1月11日、ブッシュ米大統領が発表したイラク新政策について「困難な状況を打開しようとの決意を示したもので、歓迎する」と述べる一方、イラク南部に約7000人が展開する英軍の「増派はない」と明言した。

ブレア首相は10日の議会での討論で、混乱が続く首都バグダッドと英軍が管轄する南部のバスラとでは「状況は明らかに違う」と指摘。現在バスラで実施している治安向上作戦が「成功しており、今後数週間で終了する見通しだ」と述べ、イラク側への治安権限移譲が近いとの考えを示した。

英政権では昨年11月、ブラウン国防相が1年後には数千人規模で部隊撤退が可能だと言及。ゴードン・ブラウン財務相も今月7日の英BBC放送のインタビューで「年内に数千人削減できる」と語っている。(以上)

安倍首相は「国際社会の一致した支援の継続が重要だ」と考えていますが、イラクに軍隊を派遣していた国で15カ国が撤退しており、撤退の意思を表明している国は4カ国あります。

自民党は、憲法を変えて自衛軍による国際貢献を考えていますが、国連平和維持活動の基本的性格は「武器は持っていくが使わず、非暴力の原理を紛争地に持ち込む」ことなのです。集団的自衛権行使は不可欠ではありません。結局は日本の集団的自衛権行使は米国の有志連合の活動で発動されるのでしょう。