いせ九条の会

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朝鮮半島の有事&時代に合うと言うこと/山崎孝

2007-01-05 | ご投稿
朝日新聞1月4日付け記事は、《日米両政府が、朝鮮半島有事とそれが日本有事に発展する場合を想定し、港湾・空域の利用や後方支援活動などの詳細部分を詰めた「共同作戦計画」づくりを昨年12月から始めたことが、3日、明らかになった。複数の政府関係者が明らかにした。北朝鮮の核実験やミサイル発射実験などで、朝鮮半島情勢が緊迫化しているのを踏まえ、07年秋の完成を目指す。(記事のリード部分)》と報道しています。

それでは韓国と北朝鮮の関係は今、どうなっているのか、朝鮮半島情勢が緊迫化しているのかを見てみます。

韓国は北朝鮮の白南淳外相が最近死去したことに対して、白南淳外相は「2000年、04年、05年の3度にわたり南北外相会議を行ったことを思い起こし弔意を示す」という非公式のメッセージを送りました。

韓国統一省は1月4日、2006年に韓国と北朝鮮を往来した人数(金剛山観光を除く)が、2005年より15.1%増えて10万1708人に達し、初めて10万人を突破したことを明らかにした。7月のミサイル発射と10月の核実験強行にもかかわらず、開城工業団地の拡大など南北交流協力を進める韓国側からの訪朝が堅調だったことが増加につながりました。

韓国からの北朝鮮を訪問した人数は前年比15.8%の10万838人達した一方、北朝鮮からの訪韓は870人と前年より33.7%減少した。南北の交易額も前年比27.8%増の13億4974ドル(約1600億円)を記録しました。(1月4日の朝日新聞の報道)

安倍首相は、北朝鮮ミサイル発射のときは、国連安保理決議に経済制裁、軍事制裁の条項(第7章)の適用をすることにこだわりましたが国連安保理決議は第7章を排除しました。核実験のときは、国連安保理決議は経済制裁をすることになりましたが、加盟国は紛争を拡大する行動を取らないことを求めています。そして6カ国協議の再開を求めました。

5日のNHKニュースによりますと、安倍首相は訪欧しますが、EUに対して北朝鮮制裁を実行するように求めると言います。安倍首相は強硬姿勢一本槍です。韓国政府の姿勢とまるっきり違い、果ては朝鮮半島有事を想定して日米「共同作戦計画」を完成させる予定です。

朝鮮半島に有事が起こる場合は二通りがあると思います。北朝鮮が追い詰められて勝算の全く無い先制攻撃を行う。米国が外交的に思い通りにならない状況の中で先制攻撃を行う場合です。以前にも紹介していますが、米国が2002年9月17日に出した「国家安全保障戦略」は次のように述べています。「合衆国は自国の安全保障に対する相応の脅威に対抗すべく、長きにわたって先制的行動という選択肢を維持してきた」、「われわれは敵が先にわれわれを攻撃するのを許すわけにはいかない」と述べています。

このような米国の戦略に基づいて行われた米国の外交政策の結果は、

2006年11月3日付の英ガーディアン紙の世論調査は、ブッシュ大統領は、核実験した北朝鮮の金正日総書記よりも、核開発疑惑が持たれるイランのアフマディネジャド大統領よりも、世界の平和を脅かす危険な存在だと、英国人の多くが考えている。英国では、ここ5年間の米国の安保外交政策が世界の安全をさらに悪化させたとみる人が、調査した4カ国では最高の69%にのぼった。米国の隣国であるカナダ、メキシコや米国との安全保障上の結びつきが強いイスラエルの主要新聞各紙とともに、10月末に調査を行った結果です。

2006年6月22日の朝日新聞の記事は、訪欧したブッシュ大統領は「イランや北朝鮮の核問題はあっても、欧州人の大半は、世界の安定に最大の脅威は米国だと思っている」とひとりの記者から言われる。別の記者からは「ここオーストリアでは、米国の行為が平和のためになるというのは14%で、64%は平和に反するとみている」と報道されていました。

これらを見れば、非力な北朝鮮が有事を起こす可能性より、米国が北朝鮮を先制攻撃を行い、それが日本有事につながる可能性の方が高いと見なければならないと思います。

4日付の朝日新聞は、安倍首相は1月4日の年頭記者会見で《今年7月の参院選で憲法改正を争点に据える方針を明らかにした。さらに「国際社会で平和に貢献していくために、時代に合った安全保障の法的基盤を再構築する必要がある」として、集団的自衛権の研究を進め、個別的自衛権の範囲拡大も含めて法整備を検討する考えを示した》と報道しています。

有事を想定した《時代に合った安全保障の法的基盤を再構築》ではなく、憲法の平和理念と同一方向の対話による平和を勝ち取る6カ国協議を成功させ、現在、構想されている東アジア共同体への日本が努力することこそ重要です。《時代に合った》とはこの方向です。