いせ九条の会

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米国の二重基準と日本政府/山崎孝

2007-01-08 | ご投稿
【米新型核の設計案を決定 近く発表、開発に1000億ドル】(1月7日付け中日新聞ニュース)

【ニューヨーク7日共同】7日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、ブッシュ米政権が技術研究を進める次世代の新型核「信頼性のある代替核弾頭(RRW)」について、ロスアラモス、リバモア両国立研究所の提案を組み合わせた設計とする方針を決めたと報じた。核政策に関する米政府の意思決定機関「核兵器評議会(NWC)」が近く発表する。

開発・製造予算は総額1000億ドル(約11兆9000億円)以上。ブッシュ大統領と議会の予算承認が得られれば、2040年までに退役するとされる現在の核兵器の入れ替えに向けた作業が始まる。だが、北朝鮮やイランの核開発放棄を求める一方、自らの核開発は着実に進める米政策に批判が集まるのは必至だ。

新型核弾頭は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)搭載用として2012会計年度中の製造を目指し研究が進められてきた。(以上)

既に紹介していますが、朝日新聞2006年10月15日「核の衝撃」⑤のからの情報を紹介します。

9月20日、包括的核実験禁止条約(CTBT)を支持する国による閣僚級会合が開かれた。CTBTは1996年に条文に合意したが、批准国数が足らず、たなざらしになったままです。CTBTが発効するには、核保有国や原子力利用国の44カ国の批准が必要で、核保有国の英仏ロは批准し、原始力利用国の日本など34カ国が批准しています。しかし、残る10カ国のうち、署名はしているが未批准なのが7カ国で、核保有国の米中、事実上の核保有国のイスラエル、核疑惑があるイランが含まれています。CTBTが発効しない大きな要因は、米国の態度です。米国の上院は1999年に批准を否決、2001年に登場したブッシュ政権は、核兵器の性能・安全確認には実験の必要がある場合があるとして条約に徹頭徹尾反対しています。(以上)

米国はニュースにあるように、”核兵器の性能・安全確認のための核実験”ではなく、新型核兵器の開発目的のために、未臨界核実験を続けていたことがわかります。そのためにCTBTに背を向けています。

そして、イスラエルの核兵器保有は知らない顔をして北朝鮮、イラン(イランは公式には核兵器を開発するとは述べず平和利用の核開発だと述べている)には核の放棄を迫る。そして自分は新たな核兵器を開発する。全くの二重基準です。せめても米国が相手に説得力を持つにはCTBTに批准すべきです。

2006年8月6日、広島の平和記念式において、小泉前首相は国を代表して挨拶し、「…今後とも憲法の平和条項を順守し、非核三原則を堅持し、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向けて、国際社会の先頭に立ち続けることを改めてお誓い申し上げます」と述べています。日本政府は核兵器の廃絶の誓いを守り国際社会で実践するということは、米国にCTBTを批准せよと迫らなければなりません。

小泉前首相は「憲法の平和条項を順守」と述べていましたが既に2005年10月に公表した「自民党新憲法草案」では、憲法の平和条項を改変しています。小泉前首相は二枚舌を使っています。自民党新憲法草案は、国際貢献のために自衛軍が海外で武力行使をするとしています。

安倍首相も2007年1月4日の年頭記者会見で、国際平和に貢献するため、時代に合った安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとして、集団的自衛権の研究を進め、個別的自衛権の範囲拡大も含めて法整備を検討する考えを示しましたが、国際貢献のために日本が海外で武力行使が出来るようにする必要はありません。

国連は、紛争当時国の平和を維持するために国連平和維持活動を行っています。この国連平和維持活動の創設に取り組んだブライアン・アークハート氏は、国連平和維持活動の性格について、「武器は持っていくが使わず、非暴力の原理を紛争地に持ち込む」と述べています。武力行使でもって平和維持活動をするのではなく、停戦後の停戦監視や兵力の引き離しが目的で、偶発的な武力衝突はあくまでも自らの自衛が原則です。

国連自体が近年において国連憲章第42条を侵した国に対して、国連部隊という形で武力制裁を取った例はありません。

★1月6日の中日新聞ニュース【核搭載艦船の容認検討 横須賀母港化の中止も】

【ワシントン6日共同】先月死去したフォード米大統領(肩書は当時、以下同)が初来日する直前の1974年11月、核兵器を搭載した米軍艦船の日本寄港や領海通過の権利を公式に認める代わりに、空母ミッドウェーの横須賀母港化を中止する案を日米両国が検討していたことが6日、機密指定を解除された米公文書で分かった。

日米両国は核搭載艦船の日本寄港をめぐり「あいまい戦略」を取り続けてきたが、これを変更する選択肢が70年代に検討されていたことが判明した。ラロック退役海軍少将が74年9月、核搭載艦船の日本寄港を米議会で証言、日本で反発を招いたため、大統領訪日への影響を懸念した両国がミッドウェーの母港化中止で事態の沈静化を狙ったとみられる。(以上)

このニュースを読むと、その当時の日本の世論はとても核兵器に対して厳しかったことがわかります。昨年は閣僚や政権党の要職にある人物が、日本の核兵器保有を肯定するような発言をしましたが、安倍首相は罷免をせずに済ましています。これは安倍首相が以前核保有論を述べていたことがあり本音を代弁してもらったと言う思いがあったのかもしれません。また政権党の政治家が、核の問題に対してかなり鈍感になっていることがわかります。

問題はかつてのようなマスメディアと世論の追及力が弱まっていることにあると思います。このことは改憲についても言えます。憲法9条を守ることで一致した世論を高めていかなければならないと思います。そうすればマスコミも憲法を守る立場に立ち続けるのではないかと思います。