いせ九条の会

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中国 民族主義を煽るような報道を批判/山崎孝

2007-01-07 | ご投稿
【韓国人は日本車買わない? 中国人の思い込みを特集】(1月6日付け中日新聞ニュース)

【北京6日共同】「韓国人は愛国心が強いため日本車を買わない」―。こんな誤った外国のイメージが中国に定着しているとして、同国営新華社通信系の週刊紙、国際先駆導報は6日までに、国内メディアの報道に責任があるなどと批判する特集記事を掲載した。

中国では政府のメディア規制と商業主義の両面から、国際情勢を単純化した報道が珍しくないが、新華社系の新聞がこうした冷静な視点を示したのは注目される。

特集は「中国人が誤読している世界」と題し、同紙現地記者らが国別に中国人の先入観を解説。

韓国人が韓国車を買うのは品質と価格を評価しているためで、韓国人は憂さ晴らしで「日本製品不買」などと叫んだりせず、日本人観光客の誘致にも熱心だと指摘。(以上)

どこの国でもマスメディアは、自国や他国の社会を多角的で客観的な事実の報道が大切だと思います。自分の生まれたところに帰属性や愛着を持つことは自然なものですが、民族主義を煽るような報道は避けるべきです。自国の民族優位主義と排外主義の視点に立つような報道では、国と国との民衆の相互理解は出来ないと思います。

★杉田敦・法政大学法学部教授は「論座」2月号で「複製時代の政治」というタイトルの【ナショナリズムの空々しさとコピー性】という箇所で、ナショナリズムの善悪の両面性を鋭く指摘して述べています。

教育基本法の改定などに典型的ですが、「愛国心」を強調し、ナショナリズムに訴えるようなパターンです。そもそも愛国心が何なのか必ずしも明確でないまま、愛国心教育がカリキュラムに入れられ、成績評価の対象にまでなろうとしています。

ネーション(国民)という単位で人々が連帯をもつこと自体を、一概に悪いこととは言えません。かつての身分制社会から、国民が平等であるナショナルな同質性へと移行したことは、それなりに意味をもっていました。何か差別や不平等があった時に、国民の平等という根拠に基づいて、それを批判し、是正させることが可能になったからです。戦後日本が、自民党を含めて「国土の均衡ある発展」をそれなりに目指してきたのも、国民である以上、一定の生活水準を享受すべきだ、という合意があったからだと思います。また、今日、福祉社会を実現しようとするなら、少なくとも国民の間でリスクを負担し合うことについて合意が必要でしょう。

ナショナルな連帯は、このような意味で重要である。ただ、それがしばしば国民以外のものに対する排除につながりやすいので、その点に大いに注意しなければならない、ということだと思います。私が今日、「愛国心」を強調する政治家や評論家たちに違和感をもつのは、彼らが対外的な敵愾心を煽り、抽象的なナショナルな連帯を言いながら、同時に実質的にはナショナルな一体性を壊しつつある点にあります。小泉政権以来、大都市から地方への再配分が切りつめられ、地域間格差が広がっていることは誰もが知っています。また、とりわけ正規雇用の労働者と非正規雇用の労働者との間などで、個人間格差も開いている。もしも本当に国民的な連帯と言うのなら、まずはそうした格差こそ問題にすべきではないでしょうか。それなのに、まるでそういうことを隠すためのように、愛国心教育論などが出てきているわけです。(以下略)