いせ九条の会

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外交方針の論理的整合性を保つこと/山崎孝

2007-01-17 | ご投稿
1月15日付け朝日新聞は、14日の日中首脳会談【歴史問題】の事項で、安倍首相の発言要旨を《過去を謙虚に振り返る。戦後60年の平和国家の歩みを中国国民にも理解して欲しい》と伝えています。それでは自民党の大方の政治家は安倍氏を含めて、戦前の歴史を、過去を謙虚に振り返ったとはいえませんでした。その特徴的な出来事は、教科書に対する自虐史観批判やそれに対抗する教科書つくりを支援する。日中戦争、太平洋戦争を肯定し、戦争指導者を神として祀る靖国神社に、幾度も参拝する小泉前首相を支持したことでした。

国際社会が日本を一応「戦後60年は平和国家」と評価した最大の事柄は、日本が海外で武力行使をしなかったことにあると思います。かつて日本の軍国主義の被害を受けた中国や韓国は日本が専守防衛を基本にしてきた自衛隊を持っていることには、今は大きな警戒感を示していませんが、日本の改憲の動向には警戒感を示しています。

1月14日に発表された「日中韓報道声明」要旨を《3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化する。政治・外交課題の調整のため、局長級以上の事務レベルの協議組織の創設で合意した。今年中に中国主催で開催》と朝日新聞は報道しています。

このような外交と大きく矛盾するのが、安倍首相の行う「戦後レジームの船出=脱却」の方向です。これの最大の課題である憲法改定では、集団的自衛権行使の可能が大きな目的です。

この集団的自衛権を行使する事態に日本の周辺事態に想定しています。日本の周辺事態のひとつに、中国と台湾の軍事衝突が発生し、米国が介入、日本は米国を支援するために集団的自衛権行使をすることが考えられています。このような想定の根底にあるのは、政治家の中国への不信感です。

中国は台湾に対しては基本的には宥和政策です。台湾の野党は大陸との経済関係を深めることに熱心です。中国が経済成長に相対して軍事予算を増やしているからと言って中国を必要以上に警戒する必要はありません。中国は6カ国協議の議長国として粘り強く役目を務めて米国もそれを評価しています。また、3カ国の政治・外交課題の調整のため、局長級以上の事務レベルの協議組織の創設で合意した。『今年中に中国主催で開催』とあるように、日本と韓国との話し合いにも熱心だと思います。

1月14日は東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国の首脳会議では、東アジア共同体の創設に向けた取り組みを強化することが確認されています。

安倍首相の「戦後レジームの船出=脱却」の方向は、1月に進めた外交の「日中韓報道声明」の国同士の信頼を基本に置いた《3カ国首脳は地域全体の安定のために行動し、相互の尊厳と理解に基づく政治的信頼を強化する》ことと、また信頼関係を基礎とする「東アジア共同体」の創設の確認方向とも論理的な整合性を保ちえません。

仮に中国と台湾に軍事衝突が起きたとしても、国連が関与して調停に当たるべきことです。米国が単独で介入しそれを日本が軍事支援することではないと思います。

安倍首相が述べた《戦後60年の平和国家の歩み》は、憲法理念がもたらしたものであることを、安倍首相は深く認識して欲しいと思います。現行憲法下で、「日中韓報道声明」の実践や東アジア共同体の構築に進む方向こそ、外交方針の論理的な整合性が保つことが出来ます。

1月17日は、阪神淡路大震災の追悼記念日です。改めて人の命の尊さを思いいたし、多くの命が奪われたことを悼み、災害で命が奪われないよう努める事を確認する日です。大地震は避けられません、しかし、多くの命を奪う戦争は人の手によって避けられます。憲法を日本が守ることこそ戦争に手を貸さず、日本が攻められない道は、憲法の理念を忠実に実行することだと思います。