いせ九条の会

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戦争が起こらない仕組み/山崎孝

2006-05-17 | ご投稿
5月16日の「天声人語」は、原爆投下の惨状を語り、被爆しても爆心地からの「距離の壁」で、原爆症と認定されず、癌などを患う被爆者が、国に原爆症として認めるよう訴訟を起こしていた裁判の判決が大阪地裁であった。判決は「国は審査基準を機械的に適用すべきではなかった」と指摘して、爆心地から3キロ以上の距離で被爆した原告を含む全員の不認定処分を取り消した、と述べた後、先日亡くなられた湯川スミさんについて述べています。

湯川スミさんは湯川秀樹の妻で、湯川秀樹さんは世界連邦世界協会の活動を行なっていました。湯川秀樹さんが癌を患ってから運動を引継ぎ、亡くなる前は名誉会長でした。

アイシュタインは原爆開発の一端を担ったことを深く後悔して、「戦争を起こらない仕組みをつくらないといけない。そのためには世界を連邦にするしか道はない」と湯川秀樹さんにいわれ、湯川秀さんはこの言葉に共感して運動を行なうようになった。

天声人語は「君が運動の先頭に立て」と湯川秀樹さんに言われ、この言葉を胸に抱き続け、96歳で夫の元に旅たった、と結んでいます。

日本はアジア諸国を侵略したために日本が「戦争を起こさない仕組み」として、第9条の規定を持った憲法を制定しました。そのため、国連に加盟する時は、国連加盟国が一般的に義務を負っている、武力の伴う国連活動をしないことを申請して了承されています。この了解事項を国連からもう了承は止めだとは言われていません。むしろこの第9条をなくす自民党の動きは、日本に侵略をされたアジアの国から警戒心を持たれています。

5月15日、自衛隊は国連平和維持活動(PKO)の図上演習を中心にした演習活動を行なっています。タイで行なわれタイと米国を中心にした多国間演習という形を取っています。しかし、緒方貞子さんが「米国には一貫して、国連に統治、命令される意図はない」と指摘していますから、正真正銘の国連平和維持活動の演習なのか、どうかはわかりません。

ともかく、今までも日本は国連平和維持活動は行なっていて、その本隊業務である停戦監視活動のPKFも法律的には行なうことが出来ます。紛争地の戦闘行動が終息してからです。ですから憲法を変えなくても良いのです。戦闘が収まらない場合の国連平和維持活動は大変難しく、一方の勢力に肩入れしたと見なされると紛争の火に油を注ぐ危険性があります。NATO軍の介入したコソボ紛争はこの危険が伴ったと言われ、NATO軍の活動の評価が分かれています。

それゆえ国連もたやすく行なうことが出来ないのが現状です。安全保障理事会の国々でも意見が別れて活動も行なえない場合もあります。

先に紹介していますが緒方貞子さんは朝日新聞紙上で、安全保障面で日本はどんな国際貢献をしていけばいいでしょうかという質問に、「ひとつは『人間の安全保障』。端的に言えば、暴力や貧困、人権侵害などで苦しむ文民を守ることだ」、「紛争後の『平和構築』でも、日本がやれることは多い。自衛隊が最適なら自衛隊でいいし、治安維持のための警察など非軍事的な分野で貢献できることはたくさんある。憲法の解釈はしゃくし定規ではなく、役立つ枠組みを決める方向で扱ってはどうでしょうか」と述べて、今の憲法の中で行なえることを述べています。

また、緒方貞子著「紛争と難民/緒方貞子の回想」の中で、コソボ紛争の章の中で、紛争の「解決手段の不在のなかで、『隠れ蓑』とされた人道活動は、ますます政治行動、軍事行動が果たせなかったギャップを埋める役割を担わされたのであった」と述べて、人道支援活動の重要さを述べています。

自民党の考え、憲法にまで盛り込む自衛軍による武力の伴う国際協力活動は、活動の機会はとても少なく、鳴り物入りで提唱されるような事柄ではありません。それよりも憲法前文に謳われた事柄の方が、緒方貞子さん述べる「暴力や貧困、人権侵害などで苦しむ文民を守ること」の考えに近いものです。

「自衛軍」による国際貢献を憲法の規定に盛り込まなくても、今の憲法のもとで行なえる活動をすれば、国際的な信用を落とすようなことはありません。この名目に隠された意図(単独行動主義の米国の戦争への参戦)の方が、国際平和にとっては危険です。

「戦争を起こさない仕組み」は、EU加盟国同士で出来ています。アジアではアセアンが結成され、13カ国を拡大して、より多国間で安全保障体制を築く東アジア共同体構想があります。もう日米同盟を強化してゆく時代ではありません。自民党は時代の動きと逆さまな動きです。