いせ九条の会

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漠然とした不安は事実で検証すべき/山崎孝

2006-05-06 | ご投稿
改憲に反対する「九条の会」事務局長として各地で講演している小森陽一東大教授は、会場でいつも同じ質問をされる。

 「北朝鮮の脅威がある以上、懸法9条を変えて軍隊を持つ必要があるんじゃないですか」

 多くの市民が漠然とした不安にかられている、と小森教授は思う。大坂まで新幹線で往復した時、駅や街中で「テロ警戒中」という内容の掲示や放送を数えてみた。全部で232――。

 「護憲派は、その不安に正面から向き合ってこなかったのではないか」

 通信販売誌「通販生活」は、9条に関する記事を多く掲載する。発行人の斎藤駿さんは、読者からの手紙を通じて「市民レベルでは改憲支持者も護憲派もわずかな違いしかない」と感じている。その差とは、「不安」である。(以上は5月3日付け朝日新聞「変わる憲法論議」(下)より)

 9・11テロ後や北朝鮮の拉致事件後の、日本人の不安の原因を見てみると、9・11テロ後は、米国と国際テロ組織との対立により、米軍の軍事基地を持つ日本が標的になる恐れからでした。直接的に日本と国際テロ組織が対立したのではなく、米国と国際テロ組織の対立が介在したものです。これと同様に、北朝鮮の拉致事件後の日本人の不安を見てみると、拉致事件は根本的には韓国と北朝鮮の対立関係から生まれ、その余波を日本が受けた形です。テポドンの脅威も大きな側面として米朝の対立の影響を受けたもので、北朝鮮が攻撃するとしたら、在日米軍基地が一番の標的になると考えられます。日本は憲法の規定で海外での武力行使は出来ませんから自衛隊が先制攻撃するとは考えられず、何回も他国を侵略し、また他国の軍事施設を先制攻撃した実績を持つ米軍に的を絞ると考えるのが普通です。北朝鮮の真意は、北朝鮮の安全を米国が保障すれば、北朝鮮は軍事的核の保有と計画は放棄すると、6カ国協議で宣言しています。

韓国と北朝鮮の関係は随分と改善が図られて、本年中に前大統領の金大中氏が北朝鮮を再度訪問する段取りが具体的に進められています。日朝は平壌共同宣言を実践する方向で取り組めば、平和への方向に向かうことか出来ます。

現在、イランの核の問題が顕著な形で表れています。米国はあらゆる選択肢があるとしていますが、5月4日にフランスのドビルパン首相は、考えられるイラン制裁について「軍事行動は何の解決にもならないばかりか、時に危険を増大させる。イラクをみれば明らかだ」と述べています。

私たちは漠然とした不安を抱くだけではなく、具体的な事実で不安を検証しなければならないと思います。

5月3日付け朝日新聞「変わる憲法論議」(上)で、伊勢崎賢治・東京外語大教授(平和構築)は逆に、イラク戦争を見て「改憲」から「護憲」に転じた。国際紛争処理のプロ。東ティモールではパキスタン軍などを統括管理した経験を持つ。

「イラク派遣は、日本に自主的判断と文民統治の能力が欠けている事実を露呈させた。この状態で改憲すれば自衛隊は一般市民を殺す活動に突き進みかねない。誤った政治判断への歯止めを、当面、9条に期待するほかない。いわば現実的護憲だ」と語る。

まさしく伊勢崎賢治氏の述べる通りです。漠然とテロの脅威や他国の脅威に不安を持つことより、改憲される危険の方にリアリティを感ずることが大事だと思います。