いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

「天声人語」が提起した問題 公共の精神を持たない政府/山崎孝

2006-05-28 | ご投稿
5月27日の「天声人語」より

政府、民主党がそれぞれに出した、教育基本法を改める法案を読む。今の法には無くて双方の案にあるのは、「愛国心」のくだりだけではない。「公共の精神」という言葉が双方とも前文に出てくる▼政府案は「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期する」とある。民主党案では「公共の精神を大切にする人間の育成」となっている。公共心のある人間を育むことで通じている▼かなり重視していることが分かる

し、文案はなかなか立派だ。しかし、公共心が公共の利益を計ったり、公に尽くしたりする心だと考えると、法案を出した側の公共心には疑問がわいてくる▼国会議員らが国政の調査に使う目的で税金から支出される「国政調査活動費」のうち、衆院では02、03年度だけで約5千万円が、高級料亭などでの酒食に使われていた。以前からの慣行だというから、累計では更に膨大な額になるのだろう▼国会を停滞させた民主党の「偽メール事件」も、公共の利益に反するものだった。1億円もの献金を受けた疑惑にまともな説明をしない元首相がいれば、それを党全体の問題と考えない政権党もある▼「態政の神様」といわれた尾崎行雄は、きちんとした審議をしない議会を「議事堂ではなくて採決堂だ」と批判した(浅野一郎編『国会入門』信山社)。本社の世論調査では、教育基本法について「今の国会では採決をせず、議論を続ける方がよい」が7割を超えた。「愛国心」の審議より前に、育むべき公共の精神とは何かから議論を始めてはどうか。(以上)

尾崎行雄は、きちんとした審議をしない議会を「議事堂ではなくて採決堂だ」と批判したという文章で、大量に当選した小泉チルドレンと呼ばれる新人議員を思い出します。「採決堂」の要員として、自民党は先の総選挙で大量に確保しました。国民の中には立候補者の個々の識見ではなく、小泉劇場の演出にはまり投票をしてしまいました。

国会で居眠りしたり、よそ事を話したり、携帯メールを入力するような議員もその「採決堂」の一員です。

公共とは国家ではなく、自由の基本原理である、他者の自由を尊重して己の自由の尊重を考える人たちで構成される社会で、お互いの主張を調整し調和をはかる考え方だと思います。

このような社会の構成員を育む取り組みは、現在の教育基本法が定める「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」という教育目的と合致します。

個々の主張を調整するには、個人の自覚が大切ですが、大多数が大筋で合意した公平な法律やルールを設け、公平に運用される必要があります。

この状況を作り出すためには、法律を選挙で選ばれた議員らが与野党を問わず十分な審議を与えられて議論を行い調整を行う。それを国民に理解されることが大切だと思います。政党の議員数で各党に質問時間を与えるのではなく、各党とも同じ質問時間でもって質疑を行う必要があります。

公共の精神は、国家が一方的に個人を従わすことや、奉仕を求める考え方ではないと思います。

安全保障は国家の専権などといって、一方的に国民に公共精神を求め、基地周辺の自治体の首長や住民の不満を抑え込むことではないと考えます。ましてや他国の基地機能を拡大に応じて、他国の軍隊の便宜をはかることは、日本国民のための公共の精神を政府が持っているとは思えません。