いせ九条の会

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改憲派は護憲派を上回るけれど、その真意は/山崎孝

2006-05-04 | ご投稿
5月3日付け朝日新聞は大きく紙面をさいて、憲法に関する世論調査を掲載しています。そのごく一部分を紹介します。

 3日の憲法記念日を前に、朝日新聞社は日本国憲法について、全国世論調査を実施した。憲法全体をみて「改正する必要がある」は55%で、05年の前回調査の56%と同水準だった。「改正する必要はない」は32%(前回33%)。9条改正を巡っては、何らかの形で「変える」が43%で、「変えない」の42%と並んだ。憲法改正の手続きを定める国民投票法に対しては「憲法改正の議論が不十分なうちに決める必要はない」が53%と過半数で、慎重な見方が多数を占めた。(中略)

世論調査に表れた憲法での自衛隊の位置づけについて、朝日新聞の分析は、

憲法問題に関心が高い人ほど明記派が多く、改憲論議を引っ張る自民、民主両党の支持層でそれぞれ68%、66%だった。

 明記の方法はどうするか。「必要」と答えた人に聞くと、64%が「9条の条文をそのまま残し、新たな条文を追加する」と答え、9条の1項または2項の条文を変える」は31%だった。自衛隊を「軍隊」と位置づけることの賛否を明記派に重ねて聞くと、「反対」が54%と多く、「賛成」38%を上回った。

 憲法への自衛隊の明記は必要だと感じているが、9条の条文も自衛隊の位置づけも大きく変えたくないという傾向が浮かぶ。ただ、憲法改正に関心が高い人で、9条の条文を変え、位置づけの変更に賛成する答えが多くなった。

一方、明記は必要ないと答えた人に自衛隊をどうするべきかを聞くと、いまのままでよい」が66%、「縮小していく」27%、「廃止する」は4%だった。

世論調査に表れた自衛隊の海外活動についての朝日新聞の分析は、

 自衛隊の海外活動について、今後、どうするべきか聞いた。「カンボジアのような、国連平和維持活動(PKO)まで認める」が46%で最も多く、次いで「イラクのような戦闘が続いている国での復興支援も認める」が22%。「国益にとって必要なら、武力行使も認める」(15%)と「一切するべきでない」(11%)は少なかった。この傾向は04年、05年調査と変わっていない。

 政府が「使えない」という立場をとる集団的自衛権については、いまの立場を維持することに53%が賛成し、「使えるようにする」(36%)を上回った。若年層ほど現状維持が多く、70歳以上の44%に対し、20代では64%だった。自衛隊の海外活動で武力行使も認める人では「使えるようにする」が多く、7割程に達した。(以下略)

朝日新聞の憲法に対する世論調査の結果は、自衛隊を認めていても、『自衛隊を「軍隊」と位置づけることの賛否を明記派に重ねて聞くと、「反対」が54%と多く、「賛成」38%を上回った』となっています。また、集団的自衛権については、『いまの立場を維持することに53%が賛成し、「使えるようにする」(36%)』を上回っています。そして、「イラクのような戦闘が続いている国での復興支援も認める」が22%となっていることを見ても、「治安維持活動」ではなく「復興支援」です。

改憲を考える人たちの意識を総体として見ると、自民党の新憲法草案で、自衛隊を「自衛軍」という軍隊して、国際的に協調する活動を行なう、とすることにすんなりと同調するとは思えません。自民党の改憲は自衛隊を憲法に明記するには止まらないこと。自衛軍の国際的協調活動が秘めていることを、自民党の進めている自衛隊と米軍の一体化の政策を具体的に明らかにして、その危険性を訴えていけば、憲法の規定する自衛権行使の不可の大切さを理解されると思います。

米国は日本を守っているのに、日本が米国を守ることをしないのはおかしいと主張する人がいます。軍事超大国の米国の領域を先に攻撃する国がいるのでしょうか。米軍が攻撃されて日本の「自衛軍」が米軍を守るという場合が起きるとしたら、それは他国の領域での戦争です。そのことを想定させる事実が既に起こっています。

5月4日付け朝日新聞記事は、四日市で開かれた憲法と教育基本法を守る集会「ピースネット5・3市民の集い」で、沖縄在住の平良夏芽さんは、平良さんは「全国の集会で9条を守らないと戦争できる国になる」と言われているだろうが、すでに(愛知県の)小牧から飛んだ日の丸をつけた飛行機が、完全武装の米兵を運んでいる」とイラクヘの自衛隊派遣を採り上げ、「私たちはとっくに加害者にさせられている」と話したと伝えています。

先日、イラクで治安維持活動をしていたイタリア兵4人が道路脇に仕掛けられた爆弾で戦死したと報道されています。憲法の集団的自衛権行使の縛りがなく自衛隊がイラクで治安維持活動をしていたら、この運命にあう可能性を否定できません。政府の言う「人道復興支援活動」を行なっていても、自衛隊車両のよく通るサマワの道路に爆弾が仕掛けられていたことがあり、何回も宿営地が標的になっています。運がよく被害がでませんでした。自衛隊は加害者の立場にもなり、被害者の立場にもなります。

自衛隊のイラクでの活動は言うまでもなく「国際的な協調活動」ではありません。元有志連合国は戦争の大義を失い、イラクの混乱に直面して、自国民の強い反対も受けて、イラクから、いかに米国をあまり怒らせず、またスマートに撤退できるか智慧を絞っています。