|
拡散予測図
|
(彦根市策定ずみ/長浜市も月内/高島市は素案提示)
昨年3月の福島第一原発事故を受け、県内の市町で原子力防災計画の策定作業が始まっている。福井県の原発に近い県北部では住民の避難を見越した計画づくりが進む一方、南部では着手さえしていない自治体もある。作業がはかどらない背景には、計画の大本となる国の防災指針の改定が遅れている現状がある。
見直しにいち早く着手した県は今年3月に防災計画を決定した。事故後、政府はコンクリート建物への退避を必要とする緊急時防護措置準備区域(UPZ)の範囲を原発から半径30キロを目安としたが、県は独自に取り組んだ放射性ヨウ素の拡散予測を元に、UPZの範囲を福井県内の原発から最大43キロに拡大し、高島、長浜両市の一部を指定。さらに県内全域を、安定ヨウ素剤の服用が必要な範囲(PPA)とした。
関西電力大飯原発のある福井県おおい町と隣接する高島市では、5月31日の原子力災害対策計画検討委員会で住民の避難計画を含む素案が提示された。今年度中に計画をまとめるという。
素案では、県版UPZを採用し、旧マキノ、今津両町の全域を含む範囲の約3万4千人を避難対象とした。避難先となる市南部の旧高島、安曇川両町には、避難所となる施設は限られ、受け入れできる人数は約6千人にとどまる。今後、ホテルなどに協力を求め、避難所の確保を図るほか、全市民5万3千人が市外へ避難する最悪のケースも想定するという。
昨年10月から検討委員会を設けた長浜市も県版UPZを踏まえ、避難所の候補施設や、安定ヨウ素剤の保管場所などを盛り込んだ計画を6月末にまとめる。10月には原発事故を想定した訓練も実施する予定だ。
隣の米原市は昨年11月に検討チームを設立。各課から集まった27人が「初動体制」「医療・救護」「避難所」「応急対策」の4班に分かれて、計画の見直しを進める。屋内退避の区域設定や安定ヨウ素剤の配布方法などを検討し、11月ごろに素案をまとめる予定だ。
彦根市の防災計画には、風水害や火災など幅広い災害に対応する「一般対策編」と「震災対策編」がある。今回の見直しでは、原子力災害の項目をあえて独立させず、一般対策編の中の「放射性物質運搬等災害対策」に、放射性物質の監視とヨウ素剤の備蓄計画を盛り込み、5月24日に決定した。
一方、湖東・湖南地域では、計画の見直しが進んでいない自治体が多い。
東近江市では31日、防災計画の中に原子力災害対策を新たに盛り込むため、1回目の防災会議がスタートした。栗東市と守山市、湖南市は計画を今年度中に見直す予定だが、検討委員会を設置するなどの実質的な作業にはまだ入っていない。
大津市も計画に新しく原子力災害対策を加えるための準備を進めるが、検討委員会の開催はまだだ。危機・防災対策課の担当者は理由について、国の防災指針が改定されていないことや、県の計画にヨウ素剤の配布方法の記述がないことを挙げる。「国の指針と整合性を取りたいが、具体的な対応が示されなければ見直しができない」と嘆く。
県は近く、避難やヨウ素剤の配布方法などを盛り込んだ計画を策定する予定だが、その計画も国の防災指針次第という。県防災危機管理局の担当者は「計画の根幹になるのが国の指針。早く固めてもらわないことには、作成の進み具合に関わる」と話した。
(15%超節電当面維持/県緊急対策本部/初会議で確認)
県は大幅な電力不足が予想される今夏に向け、嘉田由紀子知事を本部長とする緊急節電対策本部を設置し、1日に初会議を開いた。
この日の会議では、各部局のトップが出席し、節電への取り組みや計画停電が実施された際の備えについて説明。定期検査で停止中の関西電力大飯原発3、4号機が再稼働しても、2基ともフル稼働するには6週間かかり、節電期間が始まる7月2日までに間に合わないことや、火力発電所が停止するリスクなどを踏まえ、原発が再稼働しても2010年度比で15%以上という節電目標を当面は維持することなどを確認した。
また、県庁での節電対策として、廊下の消灯などのほか、8月中旬の夏季集中休暇の時期を8月後半にずらす案などが示された。嘉田知事は「6月の補正予算に向けて、実効性のある対策案をまとめたい」と述べた。
(6月2日付け朝日新聞・電子版)
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001206020002