日本原子力学会の「2012年春の年会」が19日、福井県の福井市内で始まった。東京電力福島第1原発事故を受けた特別セッションでは、東電が福島での事故対応や事故時のプラントの動き、地震・津波の影響などを報告。「想定したシビアアクシデント(過酷事故)を超える事故に対する備えが十分ではなかった」と謝罪した。同学会は6月末を目途に、福島事故の進展を技術的な見知からまとめる方針を示した。(伊豆倉知)
「秋の大会」と並ぶ同学会最大の会合で、県内での開催は1998年の秋の大会以来2回目。昨年3月に開く予定だったが、直前に福島で事故が起き中止となった。21日までの3日間、核燃料や放射線工学など各部会の会合を予定しており、原子力関係の企業や大学、研究機関から約1500人が参加する。
フェニックス・プラザで開かれた特別セッションには会員や一般聴衆ら約500人が参加。東電の福田俊彦原子力品質・安全部長はプラントパラメーターの解析結果などから「地震発生から津波到達までの間、プラントの安全性は維持できていた」と指摘。過酷事故に至った主な原因は地震ではない―とあらためて説明した。
一方、燃料損傷に伴い被覆菅の金属ジルコニウムと水蒸気が化学反応し発生した水素が、原子炉格納容器から原子炉建屋内に漏れて水素爆発を起こすことは予想していなかったと強調。想定を超える重大事故への備えが不十分で、安全対策に不備があったと認めた。
教訓を踏まえて実施すべき対策方針に▽徹底した津波対策▽柔軟な対策による機能確保▽炉心損傷後の影響緩和策▽インフラ、サポート態勢の強化―を定め、浸水防止対策や敷地内の高所に配備した電源車の機動的な活用に向けた訓練などに取り組んでいるとした。
東電の別の担当者は、福島事故を襲った津波の解析や事故収束に向けた中長期の行程表などを説明した。関西電力は福島事故を踏まえた安全確保対策の取り組み状況を報告した。
同学会の澤田隆・副会長は、政府の事故調査・検証委員会や経済産業省原子力安全・保安院、東電などがまとめた事故報告書を包括し、学会の専門的な知見も取り入れて事故進展を検証する考えを表明した。取材に対し「技術分析分科会で各報告書に矛盾や見落としがないかを確認する」と述べた。
住民避難に重点の一つを置いて18日実施された福井県原子力防災総合訓練では、船やバスに加え、自家用車の活用を初めて想定。国の方針を踏まえ日本原電敦賀原発から5キロ圏の全住民を避難対象とした。しかし、重大事故の際に「5キロ」という距離で単純に割り切れるのか、東京電力福島第1原発事故は重い課題を投げ掛けている。30キロ圏に全地域がほぼ入る越前市は災害対策本部を設けて独自に訓練を実施。他市町にも広域的な訓練や隣府県との連携を求める声はある。しかし、10万人単位での住民避難は容易ではなく、今後の防災計画づくりでも難しい問題となる。(伊豆倉知、山口剛)
国は原発から半径5キロは予防防護措置区域(PAZ)とし、重大事故の際は直ちに避難を求める方針。一方、半径30キロを緊急防護措置区域(UPZ)として防災対策の重点地域に定めたが、県は「具体的な避難基準が明確ではない」として、今回の訓練では5キロ圏の住民をいかに避難させるかを重視した。
しかし、敦賀原発の5キロ圏から1キロ出た先にも集落はある。70代の女性は「福島であんな事故が起きて不安は不安」と話し、バスなどでの避難計画を立ててほしいと訴えた。集落内に一つだけある屋外スピーカーを通して伝わるはずの敦賀市のアナウンスも「声が小さくて聞こえなかった」という。
福島では避難範囲を同心円状に線引きし、事故が深刻化するのに伴って段階的に広げて、住民の被ばくを防げなかった。県の小林正能危機対策・防災課長は、放射能の放出前に避難するPAZの考え方を取り入れた訓練は全国初と意義を強調。その上で「重大事故が起きれば、事故状況を判断して臨機応変に住民避難を進める」と述べ、必ずしも5キロ圏にはこだわらないと説明する。
地震、津波と原発事故という複合災害の想定が必要なことも福島の教訓だ。福島で避難を強いられた日本原電元社員の北村俊郎さん(67)は「自然災害の対策だけで自治体の対応は手いっぱい」とし、県や近隣自治体の職員が支援に急行できる態勢づくりを求める。
越前市は市役所に災害対策本部を設置し、情報収集の手順などを確認した。県災害対策本部からは「敦賀市や美浜町、南越前町以外は対策を講じる必要がない」との連絡が入ったが、放射線量の拡散が市にどう影響するか独自に把握できず、住民に対する広報が課題として浮上。奈良俊幸市長は「国や県、市町の役割分担が分かりにくい」と述べ、住民と接する基礎自治体としての対応の難しさを物語った。
重大事故に至り、広域の住民避難が必要となる場合の対応も大きな課題だ。嶺南に立地する4原発から30キロ圏に該当する県内市町の人口は延べ約60万人。どの原発でも避難は10万人単位となる。
避難先を県内に限定している県の暫定措置に対して嶺南の市町では「県外に逃げる方が現実的」との声も根強い。緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の活用法を含め、国の具体策は不明。西川知事は「迅速に議論を進める必要がある」と指摘した。
(3月19日付け福井新聞・電子版)
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/nuclearpower/33681.html
滋賀県愛荘町長野のブラジル人学校「サンタナ学園」の存続が危ぶまれている。大半の職員を雇っていた県の失業者緊急雇用対策事業が3月末で終了するためだ。関係者は「職員が減れば学園の運営はできない」と危機感を募らせている。
■不況、職員雇う資金なく
学園には2007年以前、100人以上が通っていたが08年のリーマン・ショックの後は、製造業で派遣労働者の解雇などが相次ぎ、保護者が授業料を払えず退学者が増加。現在は78人が在籍するが、学費滞納者も増え、学園の収入はほぼ半減した。運営には毎月、人件費をはじめ、送迎車燃料代35万円や校舎賃料16万円が定常的に必要。学園は職員2人の給料を20万円から10万円程度まで減らしたが、必要な職員を雇う余裕はなく、09年からは失業者緊急雇用対策で県などから雇われた7人が学園の運営を手伝ってきた。
一方、県内公立校に通う日本語指導が必要なブラジル人の児童生徒数は591人(2011年)。県教委はポルトガル語の支援員を小中学校に派遣しているが十分とはいえない。中田ケンコ校長(55)は「言葉の壁などから公立校で不登校になる子どももおり、学園は最後のとりでといえる。職員7人が一気に減れば運営はできない」と話す。
■ 県「特別支援はできぬ」
これに対し県観光交流局国際室は「ボランティアが日本語教室や進路ガイダンスなどを通じて外国籍の子どもたちを支援している。サンタナ学園だけに特別な支援をすることはできない」とする。
日系ブラジル人の受け入れは、バブル期の労働力不足に対応するため1990年に実施された出入国管理法の改正がきっかけ。原則として日系3世までに在留資格を与えた。ブラジル人の外国人登録が最多だったのは2007年で31万人で法改正当初に比べ5・6倍増。10年は23万人。
■継続サポートを
龍谷大の岸政彦准教授(社会学)の話 ブラジル人労働者の受け入れを進めた国にも責任の一部はある。国も自治体も子どもたちに継続的なサポートをすべきだ。
(3月19日付け京都新聞・電子版)
長浜市の高校教育の将来を考える「長浜教育みらいフォーラム」が18日、市内であった。東京学芸大客員教授で、東京都杉並区立中学校で初めて民間人校長を務めた藤原和博さんが講演し、独自の取り組みが成果を上げる京都市と三重県の3高校の校長が、現場からの意見や主張を述べた。
リクルート社を退社後、区立和田中学の校長を5年間務め、橋下徹大阪市長が府知事時代に知事特別顧問だった藤原さんは学校教育の問題点を「正答が一つの正解主義」と指摘。「社会では正解は一つではない。正解主義の就縛に捕らわれないで、修正主義に移行しないと世界には勝てない」と強調した。
その上で「教員は情報処理を教えるプロ。でも、生徒の情報編集力を高める人がいない。情報を編集する、つまり修正のプロは地域の人。その人たちの助けがあれば、生徒たちの付加価値が大きく育つ」と力説した。
講演後は、難関大学合格者を大幅に伸http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120319ddlk25100212000c.htmlばす京都市立の堀川、西京の両高校と、企業と連携して優秀な技術者を育てる三重県立伊賀白鳳高校の校長が意見を発表。ともに「生徒や保護者、地域のニーズを教師が把握し、どうすれば実現するか、真剣に考え、行動することが大切」と、学校改革には教員の熱意と能力が不可欠だと指摘。その上で「優秀な教員は集めるのではなく、つくる。それは校長の責任」と強調した。
フォーラムは、市が有識者らを委員につくる「長浜の未来を拓(ひら)く教育検討委員会」が開催した。
(小蔵裕)
(3月19日付け中日新聞・電子版:同日付け毎日・電子版なども報道)
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20120319/CK2012031902000138.html
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120319ddlk25100212000c.html
県庁・長浜市・高島市で実施
「敦賀原発から放射性物質が放出された」--。福井県内の地震による原発事故発生を想定した県初の原子力防災訓練が18日、県庁、長浜・高島両市で実施された。県、両市、自衛隊、県警、消防など約300人体制の大規模、広域連携訓練で、県庁の災害対策本部は事故状況の情報収集、自衛隊派遣要請、放射線測定のモニタリング車出動などを訓練。敦賀原発2号機から半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)に含まれる両市の住民約70人が、放射性物質拡散予測に従い、バスなどで緊急避難。放射性物質拡散への不安が広がる中で行われた初訓練に、参加者らは真剣な表情で取り組んでいた。県はこの日の訓練を、見直し中の県地域防災計画(原子力災害対策編)に反映させる方針。
◆対策本部
訓練は「若狭湾沖で震度6強の地震が発生、日本原子力発電の敦賀原発の炉心が損傷し、放射性物質が放出された」との想定。県は原電から連絡を受けて災害対策本部を設置。長浜市余呉町中河内(なかのかわち)地区に環境放射線モニタリング車を派遣したり、琵琶湖の水や葉物野菜、牛乳などの線量測定を指示した。
「事故3日後に放射性物質拡散」を想定した避難訓練は、県独自の放射性物質拡散予測を国の緊急時迅速放射能影響予測システム「SPEEDI」の結果に見立て、放射性物質が長浜市方面に広がった場合と高島市方面の場合に分けて行った。
住民の30キロ圏外への避難を藤井勇治・長浜市長らに電話で伝え、自衛隊には災害派遣を要請。緊急被ばく医療体制を確認し、災害対策本部の大型モニターには県警ヘリなどからの現場映像を映し出した。訓練を終えた嘉田由紀子知事は「本番はシナリオがない。要援護者に何ができるか想像を働かせて現場を把握し、正確な情報を出したい。県民には混乱がないよう対応してほしい」と話した。【石川勝義】
◆長浜市
◇車両に分乗、次々避難 防護服の着脱など学ぶ
敦賀原発から約27キロ離れた長浜市西浅井(あざい)町山門(やまかど)では午前9時過ぎ、「落ち着いて避難してください」などと呼びかける防災無線が響いた。住民ら23人が徒歩で続々と山門地区公民館へ。要援護者に扮(ふん)した住民男性2人が担架と車椅子で救急車に運ばれ、住民らは自衛隊車両や市バス、県警バスに分乗し、南約20キロ離れた市立びわ北小学校(同市益田町)へ。午前10時過ぎ、到着した一行は校舎内で、県職員から「放射線」と「放射能」の違いや防護服の着脱の仕方を学んだ。放射線量を測るスクリーニングも体験。会社員の中川民雄さん(63)は「知識は広がったが、避難訓練をしたから安心ということはない。原発をなくすことが一番の安全、安心につながる。老人や介護が必要な一人暮らしの住民を誰がどう避難させるのか。その訓練も必要だ」と話した。【村瀬優子】
◆高島市
◇参加者、想定上回る 放射線測定、ヨウ素剤も
敦賀原発から南約35キロのマキノ町大沼と同中庄地区で午前9時、防災行政無線と消防本部の広報車から「屋内退避」が伝えられ、9時半に「避難指示」が発令された。
「避難者」は子どもを含む52人で想定を上回った。住民らは市が用意したバスや自衛隊のトラック、車いすの人は福祉車両に分乗し、約12キロ南の同市安曇川ふれあいセンターへ。建物前のテントで防護服姿の保健所職員から放射線測定(スクリーニング)を受け、避難所に入ると甲状腺被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤について説明を受け、偽薬を服用した。
参加した保育士、伊吹初美さん(55)は「遠い福島の事態が身近になった。避難袋や家族らの連絡先などを常備しているが、着替えなど何をどれだけ携行するか、本番の時はとまどいそうだ」と真剣な表情で話した。【塚原和俊】
■視点
◇放射線からの避難は大変
高島市の訓練を取材して、放射線被ばくから避難することの大変さを実感した。
避難所には直ちに入れない。放射性物質が衣服や体に付着してないかまずスクリーニング。これに想定以上の時間を費やした。保健所職員は「訓練なので1人2~3分だったが、本番ではこれでは済まないだろう」。もし高い線量が検出されれば、隣の除染テントでシャワーを浴びる。着てきた衣服は廃棄となり着替えが必要だが、市にその備蓄はない。水道など除染水源と湯を沸かす設備も必要だ。
避難所への移動はスムーズだったが、本番ではマイカー避難が殺到して渋滞が懸念される。あわてて屋外に出て被ばくする恐れもある。放射性物質拡散の状況、程度にもよるが「まず自宅などでの屋内退避で最悪の事態を防ぐ判断も必要かもしれない」(市幹部)との声も聞かれた。【塚原和俊】
(3月19日付け毎日新聞・電子版:同日付けその他各紙も報道)
http://mainichi.jp/area/shiga/news/20120319ddlk25040198000c.html
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shiga/news/20120318-OYT8T00771.htm
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000001203190004
http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0009787
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120319/shg12031902070000-n1.htm