地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

60テラワットへの挑戦

2012年02月07日 | 読み聞き日記
日本太陽エネルギー学会の会報誌「四季雑感」より。

60テラワットへの挑戦  荒川裕則


(前略)

筆者は、安価な太陽電池となる有機系太陽電池や太陽光を水で分解してクリーンエネルギーである水素を製造するための研究開発を行っていますが、これらの研究開発を行っていますが、これらの研究開発を行うについて、いつも勇気づけられる話があるので紹介します。それはC60(フラーレン)を発見して1996年にノーベル化学賞を受賞した米国RiceUniversityの教授であったRichard E.Smalley博士が2004年の米国材料学会で"Future Global Energy Prosperity : The Terawatt Challenge"と題する講演の内容です。

彼は講演の中で、人類がこれからの50年(21世紀の前半まで)の間に解決すべき10個の課題を挙げました。そして、それらの課題の中で、解決すべき最も重要課題はエネルギー問題であり、2位から10位までの課題である飲料水、食料、環境、貧困、テロと戦争、病気、教育、民主主義、人口等の諸問題は、安価でかつクリーンなエネルギーさえ入手すればすべて解決できると述べています。

では、人類にはどのくらいのエネルギーが必要なのでしょうか。2004年の講演当時の世界の人口は約63億人で、世界の消費エネルギーをワット換算すると約20テラワットでした。
2011年には世界の人口が70億人となったことは記憶に新しいところですが、2050年には世界の人口は100億程度になると予想されています。この100億の人々が、快適な生活をするには60テラワットのエネルギーが必要であると推定しています。さらに、このような膨大なエネルギーを長期に安定に供給できるのは、太陽・風力・地熱エネルギーすなわち再生可能エネルギーのみであると述べています。

そして、太陽光発電で60テラワットのエネルギーを得るためには、5大陸のサンベルト地帯にある6箇所(例えば米国南部、南アメリカ、アフリカ北部、サウジアラビア半島、中国中部、オーストラリア)の100km四方の土地に、変換効率30%の太陽電池を敷設すれば可能であるとの米国CaltechのNathan Lewis教授の試算を紹介しています。ちなみに、10%の変換効率の太陽電池を同様に土地にに敷設した場合は、現在の世界の消費エネルギーにほぼ等しい約20テラワットのエネルギーが供給できることになります。これは、現在の技術でも可能です。

しかし、得られるエネルギーはkWhあたり数セント程度の安価でないといけないとしています。奇しくも彼が発見したC60(フラーレン)は、安価な太陽電池になると期待される有機薄膜太陽電池の材料として使用され、世界中で実現に向けた研究開発が精力的になされています。Smally教授は、現在、我々は、これを可能にする技術は持ち合わせていないが、材料科学のテクノロジーなどの分野での革新技術によって、再生可能エネルギーを安価でクリーンな電力エネルギーに変換することは可能であろうと締めくくり、若い研究者や技術者を鼓舞しています。

無尽蔵な再生可能エネルギーから、安価でクリーンなエネルギーを生産できる技術が開発できれば、単にエネルギー問題の解決のみならず、飲料水、食料、環境、貧困、テロと戦争、病気、教育、民主主義、人口等、人類のあらゆる問題の解決が可能であり、人類の持続的発展につながるというSmalley教授の講演内容は、筆者のみならず多くの研究者や技術者に有機を与えるのではないでしょうか。

(東京理科大学教授)





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