地球族日記

ものかきサーファー浅倉彩の日記

半東京。農ライフ vol.20 無様な18兆8800億円の衝撃

2009年12月03日 | お仕事日記
日本は、原子力立国を目指している。

だから、原子力政策には、私たちの税金が使われている。

どのくらい使われているかというと、

毎年のエネルギー関連財政支出1兆円のうち、約4割にあたる4000億円だという。

これらは、一般会計のほか、エネルギー対策特別会計から支出されている。
エネルギー特別会計の財源は電源開発促進税という税金で、電力料金に上乗せされ、
所得税や法人税とは別に、電気料金という形でみんなが払っている。

それを加算すると、原子力発電は従来の火力発電と比べて、
決して安い訳ではない。
(ちなみに電力各社の有価証券報告書総覧を元に、
かかったお金を発電した電力で割った数字を出すと、
1kWh当たりの発電単価が火力で9.9円、原子力が10.68円)
つまり、
原子力発電に市場競争力を持たせるために税金が使われているということだ。


じゃあなぜ、原子力をかわいがるんだろう?

それは、日本には資源がなくて、石油だけに頼っているとみんなの生活が支えられないから。
それに、火力発電はCO2を排出してしまい、京都議定書の目標達成を邪魔しているから。
目標が達成できないと、大量の排出権を買わないといけなくなるから。
原子力発電はCO2を排出しないから、原子力がいい!

これが、原子力を推進する政府の大義名分。

でも、どうやらこれは、嘘のようです。

理由は、原料であるウランを輸入しなきゃいけなくて、しかも石油と同じようにいつかは枯渇するから。
そして、猛毒のゴミが出るから。

前者に関して言えば、ウランの可採年数は132年(石油は41年)と言われているけれど、
これは全エネルギー資源の6%という利用率の低さが前提であって、
利用率が石炭や石油レベルになれば、20年程度になる。
現在原子力政策をとっているアメリカやイギリス(ドイツは全廃宣言した)の政府も、
この発電方法は再生可能エネルギー社会までのつなぎに過ぎない、と言っている。

後者について。ここからが、この話の本題。さらに目ん玉が飛び出る数字が出てきます。

原子力発電をすると、放射性廃棄物が出る。(低レベル放射性廃棄物)
ところが、これを再処理してプルトニウムを取り出し、もう一度燃料として使える
すばらしいリサイクル技術があり、これを使えば半永久的にエネルギーを自給できるという。

でも、話はそう簡単じゃない。

再処理すると、もっと危険な放射性廃棄物が出る。(高レベル放射性廃棄物)

なんだ。結局出るんじゃん。ゴミ。

ゴミは出るけど、日本は2048年までの全量再処理方針を持っている。
つまり、税金を使って再処理工場とかをつくって稼働させますよ、ということが
決まっている。そのためには、出たゴミの処理にも税金を使いますよ。ということだ。

どのくらい使うんだろうか。

その答えが、ブログタイトルの、18兆8800億円。

細かい数字は
総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会が2004年に出した
「バックエンド事業全般にわたるコスト構造、原子力発電全体の収益性の分析・評価」
というレポートに出ている。
これは別に秘密裏に入手した陰謀暴露のための裏情報でもなんでもなくて、
完全にオープンになっている。

(それにしても、「猛毒ゴミ処理問題」を「バックエンド事業」と言い換えてるあたり、
さすがというかあきれるというか。。。)

結論から言うと、この18兆8800億円を使えば、
あっという間に日本の全部の家に太陽光発電パネルが乗り、
足りない分を補う蓄電システムやより大規模な
自然エネルギー発電所からの
送電網、不安定さを補う制御システムや
この前書いたスマートグリッドなどが整うでしょう。

なんでやらないの?

そして、
なんでマスメディアはこういうこと報道しないの?

ちなみに方針を決める立場実ある政治家は、
こういうこと知らない人がほとんどか、
知ってても原子力やりたい電力会社やメーカーとがっつり癒着してるようです。

民主主義だから、みんながいいと思う方がいい。
私は、原子力よりも、再生可能エネルギーの方がいいと思う。

だから、知らない政治家に教えてあげて、その人に偉くなってもらって、
「はい。原子力、やめます。そこに使ってた税金は全部、再生可能エネルギに投資します」って
宣言してもらいたいと思う。

そのためには、有権者が、こういう事実をちゃんと知っていて、
どんな政治家がどういう方針を持っているか知って、
その人に投票する世の中にしたいと思う。

だって、電気代がどんどん上がったら、困るじゃん。
ガソリンやが超高額になったら、サーフィンもサーフトリップも旅行も行けないし。
そんなのいや。

ちなみに私たち、すでに1世帯1カ月あたり240円、使用済み核燃料の再処理に払ってます。
これは、再処理工場の稼働率を実績値の倍、放射性廃棄物処理費用を実績値の1/4で
計算した結果を元に、下りてきている負担です。
つまり、実績値で計算したら、もっと増えるけど、今のところは本当の数字は脇に置いといてるということ。
でも、将来本当の数字を出して、「もっとお金が必要」ということになったら、
いくらでも電気料金に上乗せしていいしくみだけはできあがっているそうです。

また、
18兆8800億円のうちの12兆9000億円は、放射性廃棄物を再処理してMOX燃料を得るために
使う予定なんだけど、これで得られる燃料の経済価値は9000億円程度です。
この事業、12兆円の赤字です。
こんな事業計画、通らないでしょふつう(笑)

原子力政策、全体的にブザマですorz

最後に。
ここに書いた内容およびデータは、すべて
昨日出席した、RE50ビジョンづくり勉強会で
立命館大学国際関係学部の大島堅一先生という方が話したことです。