７月13日のLPSA麹町サロンin DIS（後編）

第６図以下の指し手。△５九馬▲同飛△同竜▲４九金打△８九飛▲５九金△同飛成▲４二と（途中３図）

△１二玉▲３二と△同銀▲８二飛（第７図）

時刻は午後５時半をとうに過ぎている。指導時間が２時間ならちょうどいい按配だが、渡部愛女流初段の指導は１時間半。じっくり考えていると、指し掛けの恐れが出てくる。
第６図で渡部女流初段は△５九馬と入ったが、若干ありがたかった。
ここは△４七金が実戦的にイヤで、以下▲同銀△同桂成▲同金と薄くされてから△５九馬と入られると、下手は相当気持ちが悪い。
また△５九馬では△４九竜もあり、▲３八金△２九銀▲４八金打（疑問手）△３八銀成▲同金△２九金▲２七玉△４七竜▲同金△２八金打▲１七玉△１五歩▲同歩△１六歩▲同玉△１五香▲同玉△１九金寄（参考図）は、下手相当負けっぽい。

そんなわけで本譜、私はよろこんで▲同飛と取り、この飛車とあの馬が交換になったのは大きかった。
私の▲４九金打に、渡部女流初段も竜を逃げておられず、△８九飛。▲５九金△同飛成で、私の駒台に飛車が還ってきた。
▲４二とは待望の一手だが、対する△１二玉は、これまた１秒も考えなかった。渡部女流初段の指し手には、ハッとさせられることが多い。
ともあれ私は▲３二とと金を入手して、おもしろくなったと思った。
▲８二飛にはイヤな手があったのだが…。

第７図以下の指し手。△２二金▲３一成銀△４一金▲３二成銀△同金寄▲４九金打△６九竜▲５八銀△６五竜▲６二桂成△３五歩▲同歩△３六歩▲５一成桂△３一金寄（第８図）

渡部女流初段は△２二金と埋めたが、私は△５二金と、ここで飛車を遮断されるのがイヤだった。もっともそれは以下、▲４九金打△７九竜▲５一成銀ぐらいで下手がいいのだろう。
私は▲３一成銀。渡部女流初段が１枚使ってくれたので、ここで△４八竜は詰めろにならず、▲３二成銀で下手が勝つ。
よって渡部女流初段は△４一金の奇手で応じる。繰り返しになるが、この△４一金といい先の△５一歩といい△１二玉といい、渡部女流初段は私が考えもしない手筋を駆使してくる。さすがにプロは違うと思った。
私は▲３二成銀でこの駒を使い切り、▲４九金打と固めた。以下△６九竜にも▲５八銀。時間も切迫しているここにきて中盤へ逆行する手だが、とにかく負けない手を選んだ。

第８図以下の指し手。▲１五歩△２三玉▲１四歩△１五歩▲５三角△３七歩成▲同金△１六桂▲２七玉△５六竜▲３四香△２五歩▲３三香成△同桂▲３四銀△２四玉（第９図）

第８図で指し手がまったく分からず、私は格言に則って▲１五歩とした。
私は端を詰め▲５三角から▲３四香だが、寄せているのかどうか分からなかった。形勢は明らかに私がいいのに、震えている。
私の▲３四銀に渡部女流初段は△２四玉と逃げたのだが…。

第９図以下の指し手。▲２五歩△同桂▲３三角△１四玉▲２五銀△同玉▲２六歩△１四玉▲３一角成（投了図）
まで、139手で一公の勝ち。

△２四玉のところで右の白髪氏が投了し、感想戦が始まった。おかげで私は集中して考えることができたが、▲２五歩以下上手玉が寄っている。△２四玉で△１四玉なら▲２五歩がなかったわけで、これは渡部女流初段の失着に思えた。
が、これも時間が切迫しているのでやむを得ない。指導対局ではこういう場合、上手は負けにきてくれることがあり、前局もこんな感じだった。
渡部女流初段がこちらに向き直り、私は▲２五歩。△同桂にいったん▲３三角。これを△同金は▲同銀不成△同玉▲３四金まで詰み。よって渡部女流初段は△１四玉だが、▲３三角が入ったのは大きかった。
以下▲３一角成まで、渡部女流初段の投了となった。

感想戦。渡部女流初段は途中１図の△８八飛成を真っ先に悔やんだ。金をタダでくれてやったのだから、それはそうだろう。

「ワタシこういうのやっちゃうんですよー。でも△４二金右だと▲３二銀成△同金▲５三歩成があったしなー」
「いいんですよ渡部先生、指導対局でいくらやらかしても。公式戦で指さなければいいんです」
「でも公式戦でもやっちゃうんですよー」
「……」
渡部先生、人生でのおっちょこちょいは、道で転ぶ程度にしてほしい。
「大沢さんにこのところ勝ててない…」
と渡部女流初段がつぶやく。確かに６月の大野教室、麹町サロンの２勝で、私は対渡部戦３連勝である。中年の私の棋力が伸びるはずもなく、ましてや現在プーで将棋を指す精神状態ではないから、この成績は不思議である。
渡部女流初段は何となく話し足りないふうだったが、私の感覚では、もう指導時間は終了している。３コマ目の客がどうなっているのか知らないが、私はまだ対局中の２人を残し、そそくさと麹町サロンを後にした。
ビルを出てスマホを見ると、「18：28」である。３コマ目は18時30分からだから、休み時間を侵食してしまった（註：３コマ目は19時からです）。
ともあれ今回も濃密な１時間40分だった。こうしてLPSAのアイドルといっしょの空間を共有でき、勝ち星もいただける。4,000円が安いとは思わないが、払う価値は十分にあると思った。