冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

ラウンド針ノ木 - 7月の雪原を登り、高山植物と黒部の山々の絶景を楽しむ旅 (その3)

2015-08-29 18:22:20 | 旅行
さて、2日目はいよいよ稜線を縦走です。針ノ木岳からスバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳へと続く稜線は険しい岩場で簡単な道ではありません。風が強かったりすれば滑落の危険もある道。そのため、今回は大きなザックで煽られてバランスを崩すリスクを回避するために小屋泊装備で来ました。実際には、この日は無風に近い快晴で、条件がよかったのでリスクは小さかったです。その分、暑くて水分を大量に必要とするという別の困難に直面しましたが。

さて、まずは針ノ木岳までコースタイムで約1時間の登りです。山頂直下は結構厳しい岩場ですが、それまではハイマツ帯。夜明け前ですが既に辺りは明るくなってきています。
この日は前日は見えなかった槍ヶ岳もハッキリ見えました。


ちょっと引いて全景。


後立山連峰方面もクッキリ。やはり双耳峰の鹿島槍ヶ岳が目立ちます。


鹿島槍より右手にある爺ヶ岳のさらに右手から朝日が上がってきました。


槍ヶ岳など北アルプスの南部方面も明るく照らされます。


と、ここでライチョウさんの親子が登場。昨年の穂高連峰以来の遭遇です。相変わらず可愛いけど頑張って逃げていくので後姿しか撮れない。ウポウポ鳴く声も癒し系。


そうこうしているうちに、針ノ木岳に登頂です。標高は2,821メートル。200名山の一角です。


山頂は360度の大展望台で、槍ヶ岳や富士山などのメジャー級はもちろん、薬師岳から立山に至る立山連峰の稜線がよく見えます。平になっている緑豊かなところが五色ヶ原でしょう。いつかテントを担いで行ってみたいところです。


槍ヶ岳を含む南の方角を見ると、高瀬湖も見えています。


そして日の登る東側はこれから歩く稜線と、後立山の盟主鹿島槍ヶ岳。その向こうは雲海で、絶景が演出されています。


稜線からの風景の主役は立山と剣岳。後立山連峰の稜線を歩くと、眺める風景は立山連峰になります。その中でも圧倒的な存在感はさすが。


この快晴のコンディションに、山頂にいらした皆さんも満足そうでした。一眼レフで写真を撮るのも楽しそうだなと思う。星空も撮れるだろうし。今のところ重量を考慮して私はコンデジですが。まあこの時間は早朝で山の影が谷に長く、もう少し時間がたってからの方が綺麗な写真が取れるでしょうね。
20分くらい山頂で遊んでから、スバリ岳方面に縦走を開始します。この道、あまりメジャーではないのですが岩岩しく、かなり険しいです。登山道の写真は撮らなかったのですが、ストックを使うよりも手を自由にしている方が安全な道だと思います。
針ノ木を下ってスバリに登る途中から振り返った図。よく見ると針ノ木の下りの道の険しさが分かると思います。


でも花は素晴らしい。イワオウギ。


チシマギキョウとタカネシオガマ。


贔屓のミヤマオダマキも。


スバリ岳到着。ここからの黒部湖の眺めも良かったです。また、登山道を少し外れているので入れないために私のコンデジでは撮りにくかったですが、蓮華岳の頂上付近にもたくさんのコマクサが咲いていました。コマクサ、本当に過酷な砂礫の地を好みますね。




この縦走コース、雑誌などで紹介されていて興味を持ったのですが、登山者が少なくて静かな道です。高山植物も稜線からの風景も申し分ないのに、なぜここまでマイナーなのか。まあ、自分としてはラッキーな話で、お天気に恵まれたこともあって非常に充実した山歩きができました。

ここまらは赤沢岳を目指します。200~300メートルくらいの登り返しが続くので暑いなかでは汗とエネルギーが消耗します。まあ、風雨にさらされるよりましですが。


太陽がだんだん高くなるにしたがって気温が上がってきます。この日、日焼け止めを忘れていたために後日大変な目に会うことに。その予兆は歩いている時から感じられましたけど。首の回りとかジリジリするし。


時々振り返って、来た道を確認。結構険しい道です。絶景ですが。左側のたおやかな尾根は蓮華岳です。


薬師岳方面拡大。


剣岳。


また、鹿島槍ヶ岳など後立山連峰の主要な山も近づいてくるので、だんだん大きく見えるようになります。


これは白馬岳方面。


まあ、この日は快晴のおかげでどこを見ても絶景でした。赤沢岳山頂では30分くらい休憩しながら景色を楽しみました。
この後、鳴沢岳までの道は山頂直下の地味な登りがちょっときつく感じたくらいで、基本的に楽な道です。針ノ木岳から赤沢岳までは岩岩しくて厳しいですが、後半は徐々に楽になるので、縦走するならこの方向で行く方がお勧めです。逆回りのラウンドだと最後にスバリ、針ノ木で厳しさ100倍でしょう。

鳴沢岳山頂です。このころには気温のためにかなり体力が消費されており、早く途中の新越山荘でコーラを飲みたいという欲求が強くなっていました。


鹿島槍ヶ岳方面の見晴らしがいいです。徐々に東側から雲が上がってきています。9時頃だったでしょうか。後立山連峰は一日中晴れ渡ることがほとんどない山域らしいです。そんなところで昨年の9月と今年の7月のいずれの山行もお天気に恵まれたのは、本当に幸運。


ここからの道は途中で樹林帯に入ったりして、イワツメクサやチシマギキョウなど稜線の花とは違った花が多くなります。
ハクサンフクロ。他の花と一緒に大きな群落を作っていました。


黄色い花の中では、シナノキンバイが大きくて存在感あります。


30分ちょっとで新越山荘が見えてきました。持っていた水がほとんどなくなっていたので、山小屋に到着で一安心です。針ノ木小屋で買ったおにぎり弁当を食べるためもあって、ベンチを使わせてもらおうと思ったのですが、コーラを買ったら屋内のテーブルを使わせてくれました。屋外は直射日光がキツかったので、ありがたかったです。


新越山荘は、ラウンド針ノ木を1泊でやる時にはちょうどいいところにありますね。ただし、蓮華岳にも登るのであれば今回とは逆回りのコースを取ることになると思いますが。
小屋の経営はこの日泊まった種池山荘と同じで、スタッフは何かと親切でした。

暑さにやられていたのですが、30分ほどの休憩中に水分とエネルギー補給で復活し、先を目指します。
稜線にも雲が上がってきつつありましたが、コバイケイソウが咲き乱れていました。登山を始めた一昨年はどこの山にも咲いていましたが、昨年は一転してどこも咲かず。この大きな花は目立つし、いっぱい咲くと圧巻の風景を作り出します。縦走中にコバイケイソウの花畑に来ると気分が高揚すると思います。


コゴメグサは小さい割にちょっと複雑な形の花です。


見上げると、夏。


剣岳も、夏。


夏山のイワツメクサ。


大分疲れがきていましたが、縦走コース最後のピークである岩小屋沢岳に到着です。


ここからは、森林限界の上を行ったり樹林帯に入ったりしながら徐々に高度を下げ、標高2,460メートルの種池山荘を目指します。このコースの累積標高差ってどれくらいなんでしょ。体感的に1,000メートルは余裕で越えそうな感じでしたが。

稜線ではコケモモの花が綺麗。


ハイマツ帯のヨツバシオガマ。もっと赤紫が濃いものもありますが、これくらいの色のものが好みです。


これでもか、というくらい咲いているゴゼンタチバナ。


イワカガミ。


そしてミヤマキンバイ。


樹林帯は雪が所々で残っていて、道がぬかるんでいましたが、そんなところにこのキヌガサソウが咲いていました。


最後の方で見た花。スミレみたい。


で、13時少し前に種池山荘に到着。8時間半くらいかかりました。途中の休憩時間が1時間半以上あると思います。お天気がよかった割にコースタイムとあまり変わりませんが、花や景色を見ていた時間が長いんでしょうね。
なお、この種池山荘は下山で使った柏原新道から見た図で、翌日の写真です。小屋の周囲にはコバイケイソウが咲いていて、クリーム色の壁とオレンジ色の屋根がメルヘンチックな山荘が余計に可愛くなっています。


この日は地元の中学生が学校登山で来ていて、ちょうど小屋までたどり着いたところとあって、混雑していました。そのために到着時に写真撮るのを忘れたんですね。
チェックインしてからは、八峰キレットを越えてきた若い方や、福島県から鹿島槍に登りに来られた70歳以上の方々などと話して過ごしました。

小屋前の午後の風景。針ノ木岳、蓮華岳方面。


爺ヶ岳方面。翌日は下山するだけですが、せっかくのお天気なので爺ヶ岳からご来光を見る予定です。


小屋の近くにはチングルマが咲いていました。


夕暮れ時。立山連峰方面。


夕暮れ時の鹿島槍。


さて、2泊3日の山行の最終日、徹底的にお天気に恵まれた山行でした。この日はご来光を見て午前中に柏原新道を下山です。
日の出は4時40分頃ということで、中学生の大群に巻き込まれないようにするためにも3時半過ぎには小屋を出ました。この日は思ったより寒くなかったです。凄まじい星空でした。

爺ヶ岳は南峰と中峰がありますが、山荘から近い南峰からのご来光を拝みます。時間的には中峰まで歩いても間に合ったかもしれませんが、戻ってくるのも面倒だし。
夜明け直前の鹿島槍。圧倒的な存在感。


剣岳は西側にあるので、既に光を少し浴びて明るい。


そして、爺ヶ岳中峰のやや右側からご来光。


針ノ木岳がピンクに染まってきれいでした。


立山、剣岳方面。種池山荘が可愛い。


鹿島槍ヶ岳は威風堂々。


山頂は中学生だけでなく多くの登山者でごった返しているので、ある程度景色を楽しんだら下山します。途中も立山連峰を背景にした種池山荘が可愛い。昨年の9月にもこの景色には感動しました。


山荘についたら、朝食に最後のフリーズドライ山菜おこわを食べて、コーヒーを飲んでから下山です。
2度目の後立山でしたが、今回も最高の天気と暖かいサービスに感謝です。


下山中、今回の縦走コースを眺める。適度にハードで距離もまずます。そして、何より人が少なくて静かで絶景。このまま人気出ないことを望みます。


扇沢に下山夏山の空と木々の色ですね。


扇沢からはバスで信濃大町駅に出て高速バスに乗って帰宅します。その途中、大町温泉郷の薬師の湯で2泊3日の疲れを流す。露天風呂が気持ちよかったですね。


本当はここでお蕎麦でも食べられればいいのだけれど、付近に食堂が少ないのと時間的にまだまだ早かったのでそれは不可。代わりに、日本酒博物館なるものに寄ってお土産にお酒を購入。


その後は信濃大町に出て、高速バスの時間まで地元の食堂でランチを取ったりスーパーで地元のものを眺めたりして過ごしました。
ちなみに、午後から天気は崩れました。私の山行中に最高の天気を恵んでくれた後立山連峰の神様に感謝。

ラウンド針ノ木、マイナー度が鬼怒沼と同様に高く、人が少ない。そして、それに反比例して絶景で楽しい。雪渓あり、高山植物あり、絶景の稜線あり、岩場のスリルありということで、誰でも楽しめるのではないでしょうか。
この後、8月のお盆の頃に、ラウンド針ノ木で眺めて登りたくなった薬師岳を目指した山行を決行しました。そちらの方があらゆる意味で深みのある山行でしたが、ギュッと詰まった密度と成功度では、このラウンド針ノ木が今年の夏山シーズのベストでしょう。
日に焼けて恥ずかしい顔になったことを除けば、すべてが完璧でした。

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