冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

Jazz現代の名盤 その35

2011-08-28 18:06:30 | 息抜き
週末息抜きシリーズ。今回は久しぶりにピアノを離れてトランペット。

When the Heart Emerges Glistening。Ambrose Akinmusireというアメリカの若手ラッパ吹きの作品です。
アメリカJazzの奥深さを感じさせる、素晴らしい作品。ヨーロッパでリリカルなピアノや前衛的な演奏が出てきても、やはりJazzの本国はアメリカ。特にホーンは層が厚い。

抑制されたものであっても、極めて強い感情表現。
知的なメッセージを込めた、そして骨太で単純に格好いいメロディ。
それが小難しい演奏ではなく、自然なアンサンブルとなりながらJazzらしい即興性をもってダイナミックかつ力強く表される。
独特の雰囲気を維持しながら時には感情を抑え、時には爆発させる。
こうした解説をすべて体現する1曲目でおそらく多くのリスナーは引き込まれるはず。
2曲目も同様に計算された構成を持ちながら、遊びの部分を楽しませつつパワフルに盛り上げていく。

また、バンドとしてのまとまりが素晴らしい。
ピアノのGerald Claytonとの絡みはほぼ完璧。あまりにもこのアルバムでの貢献度が光るので、思わず彼のCDも直ぐに購入してしまいました。
テナーのWalter Smith も同様。

Jeremy Peltがクールで太陽のようなトランペットだとすると、Ambroseは知的な月のイメージでしょうか。
ゾクっとするような迫力があります。
私がこれまでに今年めぐり合ったアルバムの中では、年間ベストとなる可能性が高いです。

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Jazz現代の名盤 その34

2011-08-21 19:56:04 | 息抜き
Harry Connick Jr.というと、ちょっとミーハーなイメージになるのですかね。
有名どころですし、誰にでも聞きやすいメロディや歌を提供してくれるミュージシャンで、ルックスもよろしい。
逆に言うと、本格的にJazz を聞いている人の守備範囲からは外れている可能性がかなり高い。
そんなアーティストの作品ですが、そうした先入観とは無縁の気骨あるアルバムです。

Other Hours: Connick on Piano 1

セロニアス・モンクというJazzピアニスト、ご存知の方も多いと思います。
もう他界して30年近くになる人ですが、Jazzの歴史における巨人の一人ですね。
即興性とリズムをいかんなくピアノで表現した、クリエイティブでオリジナリティのかたまりの様な演奏で知られます。

そしてこのアルバム、モンク的です。
いつもは甘い曲や歌をやるだけのHarry Connick Jr.ですが、その実力は恐るべきものであったことが再認識されます。
商業主義を離れて作ったこの1枚は、ジャケットからして癖のあるイラスト。いつもの本人のイケメンアイドル風の写真とは異質。
曲は12曲全曲オリジナル。まさに、本当に自分でやりたい音楽をのびのびと作ったらこうなりました、という感じです。

1曲目からHarry Connick Jr.らしい耳障りの良さとは無縁の骨太な演奏。複雑なリズムと即興性の高いメロディ。そして緊張感の高い演奏。
アルバムを通して言えることは、テナーサックスとのコラボレーションが素晴らしいこと。ピアノとサックスがお互い内省的かつクリエイティブに絡みます。
もちろん、このレベルの演奏を支えるドラムとベースもかなりの存在感を見せるので、1発のプロジェクトながら相当まとまったカルテットだと感じます。
ただし、モンク的ということは、必ずしも聞きやすいとは限りません。
意外な転調、ちょっと聞いた感じではおかしなメロディ、それらが融合して楽しい音楽に聞こえてくるかどうか。聞き手を選ぶところがある1枚とも言えるでしょう。
それでもやはり、現代Jazz界(と言うより、アメリカ商業主義音楽界)のスターの本当の実力に触れてみたい向きには、絶対に外せない1枚でしょう。

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Jazz現代の名盤 その33

2011-08-14 19:21:17 | 息抜き
今回はちょっとずるいかもしれない1枚を。
自分が過去数週間書いてきたものを見ていたら、ここのところヨーロッパのピアノばかりだったので、ちょっと視点を変えようと思って棚を見たらこれが目に留まったので。

ポシビリティーズ。多くの人が名前くらいは聞いたことがあるであろう、大御所ハービー・ハンコックがロックを中心に多くのミュージシャンと競演したアルバムです。

クロスジャンルの音楽ということで"Possibilities" というタイトルになっているのだと思います。
しかし、実際にはそれほど実験的な作品ではありません。
マイルス・デイビスの奇跡の怪物作品、Bitches Brewのような、新しいJazzというものではないし、そういうものを生み出そうという意図もありません。
単に、ハービーと他のミュージシャンが競演しただけで、こんなアルバムは別に必然性がないという批判も多く聞かれました。

しかし、夏休みに楽しく音楽を聞くなら、これは悪くない選択です。
ハービーのピアノが安定していてすばらしいのは当たり前として、各参加者の気合の入り様が半端ではない。
この人たちこんなに歌えるんだと感心させられます。
これほど才能を引き出すのは、ハービーのプロデューサーとしての手腕の賜物でしょう。

2曲目のサンタナのギターとの掛け合いもいいですが、1曲目のJohn Mayer、3曲目のChristina Aguilera、5曲目のAnnie Lennoxは特にお勧め。Aguileraは嬉しい誤算というか驚きだったし、Lennoxは久しぶりに彼女の奇才ぶりを存分に楽しめました。私としては、Holly Cole / Peter Gabriel の"Hush Hush Hush"をここまで高められると涙ものです。

難しいこと考えずに純粋に楽しみたい方向けです。

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Jazz現代の名盤 その32

2011-08-06 20:41:49 | 息抜き
前にご紹介したHabaneraのSimple Acoustic Trioが、リーダーのピアニストMarcin Wasilewskiのトリオという風に名前を替えて出しているアルバムです。

Faithful。昨年レコーディング、今年発売の新しいアルバムです。

ポーランド出身のこのトリオ、やはり東欧らしい耽美的調べがこのトリオの命。
夜に美しい音楽を静かに楽しみたい向きには最適。
中央ヨーロッパの古い石作りの町並み(空は曇り)や、深い雪に覆われた平原、凍てついた河などをイメージできる。
私的には綺麗なJazzというジャンルを自分の中に持っていて、その手の一枚。

1曲目の"An den kleinen Radioapparat"は、80年代後半のスティングのアルバムを聴いた人には懐かしいメロディ。それも更に叙情性を増したピアノで聴かせます。
2曲目"Night Train to You"はリーダーの作曲で、このトリオの本領発揮というか、耽美的調べとそれをサポートする繊細なリズム陣の活躍が印象的。このアルバムで最もこのトリオらしい作品。
7曲目の"Song for Swirek"もWasilewskiらしいメロディで、一聴してこの人たちの演奏だと分かる作品。まあ、やはり綺麗系ですね。
こういう演奏が並ぶと、何となく女性が好みそうなアルバムかと思ってしまいますが、実際はどうなんでしょうね。
これまで、周りの人達でジャズを聴いてみたいという人達に、何枚かCD貸したことがありますが、経験的には女性にこの手の耽美的な演奏はあまり受けません。男のほうが繊細なものを好む傾向があるんですかね。

ところで、よく考えずに真夏のエントリとして書いてしまったけれど、本当は冬っぽいアルバムですね。
内容的にもジャケット的にも。冬の長い夜に聴きましょう。
ちょい反省。

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