冷たい風のような火

メモ書きですが、それにしても何で公開の場で書くんでしょうね。

北アルプス奥地への旅3

2016-04-09 12:33:07 | 旅行
やっとお天気が回復してきた3日目の後半。こうなると断然楽しい北アルプス。イワショウブなどの花々も綺麗です。












太郎平への最後の道は木道になっています。周囲の道がどんどん崩れていくのを防ぐ意味もあるのでしょう。その先に山小屋が見えると安堵感が出てきます。やっと晴れてきたとはいえ、ずっと視界の限られた環境を黙々と歩いてきたので。


太郎平に着きました。これは小屋前の道標。折立の登山口から登り、薬師岳や雲の平を目指すのがメジャーなようです。


取りあえずは重たいザックを軽くするためにテントを張りに行きます。テント場は太郎平から20分ほど歩いた薬師峠にあります。この時点では疲れがかなり足にきており、テント場への道も一苦労。


お天気の回復により、濡れる環境でのテント張りは避けられました。お盆は終わっているタイミングとはいえ、まだまだ登山客は多かったです。


テントを張ったらこの日は休むだけ。テント泊装備を背負って8時間ほど歩いた後なので、もう休むしかないでしょう。折角なので太郎平小屋のカレーライスを食べに行きました。


お天気はどんどん回復してきており、翌日早朝にアタックする予定の薬師岳は期待できる模様。これは赤牛岳、水晶岳方面。今回は行かなかったけれど、北アルプス最奥の山々ということで興味のある山域です。


テント場へ帰る道から見た薬師岳は既に巨大で堂々。しかし、これは本体ではなく、その手前のほんの一部だと知るのは翌朝。いやー、巨大な山です。薬師岳は私の中ではビッグマザー。大きなカールを抱えた女性的な山のイメージで、南アルプスの仙丈ケ岳と対比して考えています。


翌朝は暗いうちからヘッドランプを灯してスタート。山頂でご来光は狙っていませんでしたが、早朝の空気の中で山頂に立ちたかった。ゆっくり休むことができたのでかなり飛ばして行くことができました。まずは2時間ほどで薬師岳山頂に近い薬師岳小屋を目指します。途中には木道の敷かれた湿地帯などがあり、花も綺麗なはずなのですがまだ夜が明けていないので気を取られずに黙々と進みました。最初のうちは樹林帯、徐々に沢筋のようなガレた道になり、暗い中で迷わないようにペンキでつけられた印に注意して登りました。以前はこういうところでは明るくても道を見失って焦ることもあったのだけど、だんんだん慣れてきたのかルートを外れなくなってきましたね。これも経験なんでしょうか。なお、私のコンデジのフラッシュでは、暗い中で風景を撮影するのは無理なので写真なし。

途中からは薬師岳小屋の灯りが見えるようになり、それを目指して登ります。そして小屋に到着。既にご来光目当てで出発されている方々がいました。まだ夜が明けていないので、コンデジではオートフォーカスが利かずにブレています。


山頂方面。幾つかのピークを越えないと本当の山頂に着かないという苦しいパターン。


槍ヶ岳方面。空気が冷たく澄んでいて、山頂からの絶景を約束してくれている。


小屋からの急な登りを進み始めたところ、ここでライチョウさんの登場です。慌てて写真を撮ろうとするも、オートフォーカスが利かずに苦しみます。


いつ会ってもライチョウさんは和みますね。


徐々に夜が明けてきました。山頂かと期待させつつ違うというケルンに到着。ここから間違った方向に行くと東南稜に入ってしまい、遭難事故につながる模様。特に冬季は大きな遭難事故があったとのこと。まあ、私が真冬にこの辺りに来ることはないですね。究極すぎます。


既にここからも絶景が。


槍・穂高拡大。


前日霧雨の中登頂した黒部五郎岳、こちらからはカールは見えません。その奥に笠ヶ岳。笠ヶ岳は目立つし、抜戸岳方面の稜線が長くて迫力ありました。これまではあまり興味なかったのですが、見直しました(偉そう)。奥に見えるのは乗鞍、御嶽かなあ。かなり大きいですから焼岳ではないでしょう。


同じ方向をちょっと引いてみると、前日は霧の中で見られなかった黒部五郎岳からの稜線が見えます。緑豊かで晴れてさえいれば天空の花道といった感じなのでしょう。リベンジせねば。


登る方向の右手には後立山連峰の山々が見えます。針ノ木岳から鹿島槍ヶ岳までは2度の山行で分けて歩いているので、懐かしい感じ。何より雲海が格好いい。


カールが大きい。カールの背景には赤牛岳、水晶岳、鷲羽岳、そして槍・穂高連峰。


やっと山頂に到着です。


標高2,926メートル。今回の旅の最高地点に到着しました。


雲はあるものの空気が澄んでいて見晴らしがとてもよい。ここからは山頂からの展望をお伝えします。これは北薬師岳方面への厳しい稜線の先にある、立山と剣岳。黒いとがったのが剣ですね。


拡大するとよくわかる。立山まではまだまだ遠くて、私の能力だとここから2泊してやっとですね。


雲海の上に威風堂々そびえる鹿島槍ヶ岳と五竜岳。


鹿島槍ヶ岳から針ノ木岳まで、後立山連峰南部の山々。7月に縦走して高山植物と稜線からの景色を楽しんだところです。こうして見ると、凛として格好いい。やはりスバリ岳あたりの稜線がギザギザですね。


立山連峰が左側。後立山連峰が右側。雲海の下は黒部湖。この景色を一望できるのが薬師岳の凄いところ。それにしても、黒部川って本当にとんでもないところを流れてますな。


左から赤牛岳、水晶岳、鷲羽岳、そして槍ヶ岳へのパノラマ。


水晶岳。標高2,978メートルで、黒部の山々で一番高いのはこの水晶岳です。2日目が晴れていて、体調良く飛ばすことができればここもターゲットになり得ましたが、流石に今回は無理。いつか裏銀座縦走コースを歩くことがあれば挑戦したいです。まあ、最奥の秘境のイメージですね。


鷲羽岳。ここはちゃんとリベンジしたい。


そして槍ヶ岳。ここに行くのはいつになるやら。


槍ヶ岳の手前に見えるのが雲の平でしょう。


少し右にずらすと溶岩台地状なのがよくわかる。小さく見えているのが雲の平山荘でしょうね。


雲の平の手前に見える黒部川の流れが奥の廊下と言われるところでしょうか。雨が降ると鉄砲水になるという。秘境中の秘境。


さらに少しずらすと三俣蓮華岳。この辺りも緑が濃いですが、ハイマツ帯なのかな。双六岳方面に稜線が続きます。2,800メートル級ですが、その後ろにそびえる穂高連峰の3,000メートル級は迫力が違いますね。200メートルほどの差がこれほどまでとは。


日本海方面は雲海でした。


雲海を西南の方向にたどると、北陸の霊峰、白山。ハクサンチドリやハクサンイチゲ、ハクサンボウフウなどの高山植物の名前に登場する花の名山ですが、遠いので後回しになっている山域です。


雲の切れ間から太陽が。神秘的。


名残惜しいですが、山頂を後にして下山します。下山中もずっと黒部の山々を眺めていました。




そして、前日霧雨の中を歩いた稜線も。すると、三俣蓮華岳からの稜線であるものに気づく。分かりますかね、


拡大。


なんと、雨の中逃げ込むようにして泊まった黒部五郎小舎です。ご厚意がありがたかった。あれは2日前のこと。あんな鞍部に建っているんですね。


黒部五郎岳って上品な感じですね。岩岩しい感じではないけれど格好いい。甲斐駒ヶ岳とか鷲羽岳とは違った趣。これはこれでとてもよろしい。


そこから北ノ俣岳までの稜線。リベンジはいつになるかなあ。


そのまま稜線を注意して眺めれば、太郎平小屋も。


三俣蓮華岳からから北ノ俣岳まで、今回歩いた道のほぼ全景。この他に新穂高温泉からの1日目と薬師岳への登りがあるわけで、まあ頑張った。


薬師岳小屋が直下に見えるところまで下りて来ました。その先に太郎平小屋も見えているという。


振り返ると薬師岳。


ここからは高山植物の写真です。登っていた時は暗くて気づかなかったですが、花も多いですね。
























テント場に着いてからも比較的ゆっくり。時間に余裕があったので、撤収作業をしながら残った食料やコーヒーを消費しました。4日間の山旅を終え、あとは折立まで、コースタイム3時間程度の道を下るだけです。
テント場から太郎平へ向かう。


薬師岳を振り返る。


雲の平方面を眺める。


青空ですが、既に秋を感じる雰囲気だと思ったのは私だけでしょうか。北アルプスの夏は短いですね。


太郎平からの眺め。


最後に薬師岳と一緒に。


折立への道は最初は木道。それが滑りやすいザレた道に変わり、途中は開けた草原状の気持ちよい場所もあるものの、最後は相当急な樹林帯の坂という構成。最後の下りは結構膝にきました。ここを登るのはルートとしてはきつそうだな。太郎平と折立登山口の標高差は1,000メートル程度ですが、下山のコースタイム3時間に対して登りが5時間に設定されているところに道の厳しさを感じる。
途中タテヤマリンドウがちらほら。他にイワショウブも多かったです。




下山中に雲が出てきて、薬師岳は山頂付近が雲に覆われていきました。
2時間半ほどで折立に到着。バスを待つ人が少しいました。


この後は富山に出て、新幹線で帰京。お約束のマスの鮨が駅弁がわりです。


北アルプスの奥地への3泊4日の山行は、ある意味では山歩きを始めてから最初の「山旅」と言えるものだったと思います。若いころに2週間以上の期間で海外旅行に出ると、それより短い旅行とは全然違った経験をしたと感じていました。多分に感覚的な話ですが、そういう違うレベルの経験は後になって振り返ると学びが多く、自分の殻を破って世界を広げるものでした。単に外の世界を経験したということではなく、その経験からの学びがその後の意思決定やものの考え方に影響するのです。凄く。本当に。
冬山では、2014年の八ヶ岳の天狗岳、そして2016年の同じく八ヶ岳の硫黄岳への登山はそれぞれいい経験でした。夏山では圧倒的にこの北アルプス奥地です。


北アルプス奥地への旅2

2016-04-03 21:52:56 | 旅行
予想通り2日目は雨。早朝に出発して鷲羽岳、そして余裕があれば水晶岳まで登ってから黒部五郎小屋まで下ってテントを設営するというのが理想の行程でしたが、山頂に立っても何も見えないことが確実な状況では鷲羽、水晶という黒部の奥地にある百名山は諦め、単に黒部五郎小屋までの移動日とします。あー、三俣峠からの鷲羽岳とか、鷲羽岳から見る槍ヶ岳とか、絶景シーンが見たかったのに残念。

天気図を見て考えていたのは、雨が強いのは午前中で、午後になればましになるだろうということ。運が良ければ曇りにまで回復するかも。
下山していく方々が次々にテントを撤収して去っていくのを時々自分のテントから顔を出して確認しながら、文庫本読んだりして時間をつぶします。結局10時頃に少し小降りになったところで自分もテントを撤収し、双六小屋へ移動。昼ごはんを食べてゆっくりしながら11時頃に黒部五郎小屋に出発です。3時間半程度の道のりです。
ところで、双六小屋で超人的な青年に出会いました。90リットルザックを担いで日本海から太平洋までアルプスを縦断するということでした。北海道出身で、普段は日高山脈などを歩かれているようです。登山道や山小屋の整ったアルプスよりよほど厳しい条件に慣れているんでしょうけど、それにしてもタフな人がいるものです。

雨は結局降り続けていました。そして、登山道は多くのところで川になっていました。


比較的楽だとされる巻き道ルートを取りましたが、所々急な上り下りがあり、雨で思い切り濡れた岩は滑るので注意が必要でした。


雨の中でも健気に高山植物の花々が咲いています。一番の見ごろはやはり梅雨明けから2週間くらいなのでしょう。










一方、遠景の景色は絶望的。


雨に濡れながらも三俣峠に到着しました。晴れていれば、ここから三俣山荘越しに鷲羽岳の雄姿が眺められるはずですが、もちろんこの日は無理。雑誌などでも定番の絶景ポイントなんですけどね。やはりお天気は大事だ。


ここから20分ほど登ると三俣蓮華岳の山頂に着きます。写真を整理してみると、この辺りの登りや黒部五郎小屋までの下りは結構険しいところもあったようですが、よく覚えていません。自棄になって自撮り写真とかもありますが、本音では早くこの惨めな山歩きを終わらせて小屋にたどり着きたいと思っていたという記憶があります。


そんな時も花には目が行く。




そして三俣蓮華岳登頂。視界ゼロ。


三俣と言われるように、今でも富山県、岐阜県、長野県の3県の県境です。


黒部五郎小屋を目指します。何となく癒される標識。


ハイマツの間の道。そして視界はない。


道は小川である。


ゴアテックス性能の登山靴って凄いと思いましたよ。3年目になるテクニカというあまり有名でない(と思われる)メーカーの靴ですけどね。好日山荘でセールで買ったやつ。これまでも初心者の私を穂高岳、針ノ木や鹿島槍、甲斐駒ヶ岳や八ヶ岳でサポートしてくれた訳ですが、この日もほとんど濡れませんでした。自分のミスで水たまりに思い切りハマったので流石にちょっとは水が入りましたが、ほぼ完璧でした。

そして、ついに黒部五郎小屋が霧の中に現れました。まさに砂漠のオアシス状態。


さすがにこの日はテント場には一張もなかったです。私も小屋泊に切り替えました。
それにしても、黒部五郎小屋のスタッフはとても親切で、今でも思い出すとありがたさがこみ上げてきますね。乾燥室には靴まで持ち込んでよくて、皆さんもちろん泥は落として持ち込みますけど、それでも後日清掃はたいへんだったでしょう。雨に濡れて寒くて惨めな状況の登山者にはありがたい心遣いです。
ここではスイスからの旅行者5人組に出会いました。本場のスイスアルプスは道が整備されていていいけど、ちょっとツーリスティックらしい。日本では山頂まで普通に登りながら縦走できるし楽しいとのこと。ただ、持っていたガイドブックのコースタイムが短すぎて参考にならないと笑ってました。室堂から入って槍ヶ岳に登って上高地方面に下山する予定とのこと。日本の観光資源は、インターネットを通じて世界の人に相当知られていますね。熊野古道や鬼怒沼に行った時にも思いましたが。

この日は早湯でパスタと、前日の豚肉・茄子の残りで豪華に食事しました。コーヒーも飲んで一服。他の登山者の方々と情報交換しました。状況が状況なので、食事くらい楽しまないと。スイスの方々も騒々しくパスタを調理していました。グループも楽しそうですね。


雨のせいで2日目の行動は大幅に制限されましたが、結果的には体力温存につながったのかもしれません。山行前には4日間のガッツリ山旅に多少不安を覚えていましたが、実際には3日目以降も普通に行動できました。

さて、翌日はガスの中朝5時に出発。雨こそほとんど降っていないか霧雨程度でしたが、眺望はやはり期待できない感じ。黒部五郎岳のカールはとても楽しみにしていたので、残念。遅い時間の方が天気が回復するのは分かっていましたが、この日は太郎平小屋の先にある薬師峠のテント場まで8時間程度の道を行く予定なので、念のために早めに出ました。
しかし相変わらず小川である。


花は咲いているが。


黙々と歩くと、どうやらカールに突入した模様。しかし、眺望がないので状況が不明。




雷岩という大きな岩があるらしいので、注意していたのだが確認できず。これじゃないよね。

カール内部にも花は多かったですが、全体的に盛りは過ぎていました。




ちょっと日が差すとカールの一部とはいえども大きな景色が見え、思わず写真を撮る。しかし、後で見直すとやはりガスが目立つ。






まあ、全体的に残念な結果です。カールの登りはかなり斜度もあるエグい登りでした。テント泊装備だときつくて、小屋泊装備の方に抜かれていました。この登りも、カールの絶景があれば報われただろうに。

そして、山頂直下の方のところにザックをデポしていよいよ山頂へ。この旅で最初の100名山、黒部五郎岳2,840メートルです。


地図では大展望と書いてあります。確かに、薬師岳、雲の平、水晶岳に鷲羽岳、槍ヶ岳、笠ヶ岳などすべてを見渡して足元にはカールが広がるはず。
しかし、この日は御覧の通り無残。


山頂には何やら神様が祀られていました。展望はないですが、コンディションのよくない中で安全に旅できているので感謝。


トウヤクリンドウがお約束のように蕾状態で迎えてくれました。


さて、この後は4時間程度黙々と稜線歩きです。本来はこの稜線はアルプスらしい大絶景が期待できるのだと思いますが、この日は黙々と行く修行です。アップダウンが特にキツかったという記憶はないですが、それでも延々と展望のない道を行くのはつらいですね。ハイマツ帯の中を縫うように進みました。


忘れているだけで結構厳しい道もあった模様。


ハクサンボウフウはたくさん咲いていて、これが癒しになってくれました。


ミヤマリンドウも。


幾つかの小ピークを越えて約3時間歩き、北ノ俣岳に到着。相変わらず眺望は残念。


お天気に恵まれず辛い道のりが続いていましたが、北ノ俣岳を過ぎてしばらくすると様子が変わってきました。晴れ間も見え始め、なにより雲が取れてきて眺望が得られるようになってきました。すると、地図で赤木平とされているところだと思いますが、高原の牧場のように美しい風景が現れました。


急に天国を歩いているような風景になります。


さっきまでガスで見えなかったのに。お花畑も凄いんですね。




そして夏空。


あー、黒部五郎岳のカールから山頂の絶景、そしてここまでの稜線、晴れていれば大感動なんだろうなあ。これは絶対リベンジが必要だな。スイスの若者のように立山から歩くのもいいな。その時にも黒部五郎小屋に泊まって、お土産で何か持って行って少しでも恩返ししたいよ。

3日目の長い行程では最後の2時間程度、やっとお天気が回復して景色を楽しむことができました。次回の記事では、その時の風景と4日目の薬師岳でフィニッシュです。